NASA清掃員からマルチスポーツ研究の目的に立ち返る
「大学では、何しているの?」
「“マルチスポーツ研究”をしています!」、「なぜ、日本では”マルチスポーツ的価値”が認められ、推奨されないのか?単一種目および複数種目の経験値の違いがもたらすマルチスポーツ的価値の特徴を明らかにしています。」
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2019年春に大学でゼミ活動が始まってから「マルチスポーツ研究」というコトバを使うようになりました。「マルチスポーツ研究」というコトバを使っていながら、自分のコトバで説明ができるようになったのは最近のことです。
先行研究を調べたり、ニュースを深掘りしたり、関連記事を読んだりする、自発的な勉強が不足していたためコトバにすることができませんでした。何が分からないのかが分からないと思考が停止してしまっている時期もあり、気が付くと担当教員の指示を待つだけになっていました。短期的な成果ばかりに気を取られ、「マルチスポーツ研究」が目的になっていたのです。次第に視野が狭くなり、活動に対する意欲を自ら下げていることに気づいていませんでした。
そんな私が「マルチスポーツ研究」と真剣に向き合うようになったのは、あるエピソードに出会ったことがきっかけです。
アメリカのケネディ大統領が、NASAに訪れたとき、オフィスを掃除している清掃員に話しかけた。「君たちは何をしているんだ?」と。
ある男は「掃除をしているんだと」答えた。
もう1人の男は、「人類を月に送るプロジェクトを手伝っています」と答えた。
このエピソードに出会って、ゼミ活動が始まった時に担当教員が、「世の中でまだ誰も気づいていない価値を明らかにすることで日本を変えること、そのためにマルチスポーツ研究をするんだ。」と話していたことを思い出しました。アンケート内容の吟味やパフォーマンス分析プログラムの作成は、前例がない事へのチャレンジだったため困難を極めました。難しい内容だけに目的が理解できていないと、すぐ楽な道に方向転換してしまいます。大きなミッションでもどれだけ小さな作業でも、組織の目的が自分事化されてくると社会に貢献しているような感覚が大きくなっていくことを実感できました。時間はかかっていますが、少しずつ前進している感覚があります。いい感覚を忘れないようにここに足跡を残しておきたいと思います。
マルチスポーツ研究は、「ひとつのスポーツを経験している子と複数のスポーツを経験している子を比較し、経験値の違いが運動習慣や普段の生活、学力にどんな影響を与えるのかを明らかしていくこと」です。AmericanDevelopmentModel(ADM) とCanadianSportforLife (CS4L)を参考に小学生と中学生を対象に調査を実施していきます。調査内容は、「アンケート」と「パフォーマンステスト」です。アンケートは、「全国学力学習状況調査」と「全国運動習慣調査」をもとに、パフォーマンステストは、「コーディネーション能力」と「全国体力運動能力調査」をもとに独自で作成しました。調査項目は、以下のキーワードを軸に選ばれています。
運動能力・運動経験
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運動習慣(ケガ、バーンアウト)
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認知能力(学力、学習習慣)
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非認知能力(学校生活、家庭環境)
文科省やスポーツ庁が実施している調査では、子ども1人1人のスポーツ経験を見た分析が行われていません。そのため、マルチスポーツ研究では「どのようなスポーツをその子が経験してきたか、しているか」が特に重要になります。この研究が少年少女を取り巻くスポーツ環境の向上や日本スポーツ界におけるスポーツ観の多様化に繋がっていくことを望んでいます。