Fichronicle #46『ドライブ』
2021年3月21日(日)
春休みのただ中にある日曜。バイトも休みだと暇になる。
せっかくの春の日曜日だし外出したいな。
というわけで、近所のレンタカー店で車を借りてドライブへ行く事にした。
最近はネットで予約も出来るそうで、既に申し込みを済ませておいた。お話があまり得意ではない僕にとってインターネットでの手続きはありがたい。
午前10時。朝ごはんも食べて着替えも済ませると、いつものように「出掛けてくると」と親に言って、レンタカー店へ向かう。
春らしい心地のよい空気が道を歩いていて気分が良い。
店には15分くらいで到着した。前から通りかかる事はたまにあったけど、店へ入るのは初だ。
(初めてだから少し緊張するな。)
お約束というか、なんというか僕は初めての場所だと、いつもこんな感じである。
店内へ入ると受付の方に
「すいません。レンタカーの予約をネットでしたのですが。」
と声をかけると
「ネット予約のお客様ですと、アプリに表示されているQRコードをこちらの機械にかざして頂けますよう、お願いします。」
と言われたのでその通りにした。
機械はQRコードを2秒くらいで読み込み、予約内容が店員さんのタブレットに届く。
「乗用車のこの車種をご予約ですね。こちらです。」
と言われ、駐車場に案内してもらった。
5台ある車のうち、右から2番目のものを店員さんが開けると、自動車特有の香りと共にこの場所では見慣れないサイズのディスプレイが目に入る。
「車はインターネットに接続されており、こちらの画面を操作するとカーナビだけでなく音楽配信のサービスもご利用頂けます」
と紹介された。
(えっっ、車って今はネットに繋がるの。)
心の中は驚きでいっぱいだ。どこにアンテナが、、、それはスマホも一緒か。
操作方法を一通り教わり、鍵を受け取ると車を発進させた。
僕が自動車の免許を取ったのは大学一年の夏休み。入学して、少し学校にも慣れた頃に免許を取った。マイカーを持たない僕個人にとって、これの使い方は身分証。学生証はいつも手元にあるけど、こっちの方が何かとね。
(それにしても最近の車はネットに繋がるってすごいな。しかもディスプレイは有機ELだ。カーナビ用の画面でテレビとかDVDが観られる以来の衝撃かも。)
車の便利さは進化を続けている。
(自動運転車早く来ないかな、僕が景色を眺めるのに専念出来るし)
ドライブのだいご味をより堪能出来るよう、自動運転車の登場が待ちどおしい。
信号待ちが長い場所に来ると早速、音楽アプリを起動。ほぼ一瞬で開いた。
(僕のスマホより速い!)
車はスピード感がスマホ以上に求められるからね。
アプリに搭載されたAIがチョイスする「おまかせプレイリスト」を選択して、車は再び走り出す。
一曲目はテクノ・ミュージックだ。どこの国の曲なんだろ。聴いた感じ最近なのは分かるけど。テンポの速い曲調がいいね。
二曲目はギターだ。僕の好み。少し聞いてると、なんだか覚えのあるメロディーなのに気づいた。でも運転に集中しないと。
三曲目は、、、これはネオシティポップかな。ゆったりとしたメロディーが地方都市の緑が多い道にも意外に合う。
(ネオシティポップの定義ってなんだろ)
信号待ちにふと思う。分からない。
それと、なんだかドライブに適した曲が多い。ひょっとしてAIは自分が車に乗っている事を知っている?
その後、20分くらい運転して目的地へ着いた。
場所は蕎麦屋。たまには外食もして気分を上げよう。お昼時という事もあり、店はお客さんが多く、カウンター席に案内された。
(これ、ここにもあるんだ。)
注文はタブレットで。
自営業のお店でもこうした方法になり、近未来を感じる。
店員さんにメニューを伝えるのも少し緊張してあわあわするから、こっちの方が嬉しい。
注文を送信してから少しすると運ばれてきた。
今回頼んだのはこちら。月見そばatえび天。
僕の好きが詰まってるね。
店長さんこだわりの出汁が染み込んだ蕎麦とえび天、そして卵のまろやかさのミックスした、この味わいがたまらない。
10分ほどすると完食し、これまた最新な電子決済で会計をすると家路に着くことにした。
車を発進させる少し前、2曲目に流れた聞き覚えのある作品の確認をした。
タイトルは『G線上のアリア』でアコースティックギターによるカバーVer。
大好きな女優さんが主演のドラマでテーマになった曲だ。嬉しくて笑みが溢れる。だって嬉しいだもん。
帰り道は動画アプリが入っていたことを知り、好きなゲーム実況者の雑談の再生リストをかけながらレンタカー店へ向かった。
起点である店に着いて受付の店員さんに鍵を渡すと共に「ありがとうございます」と言うと、家へ帰った。
ドライブって楽しいね。またしようかな。
機材代に使います