Fichronicle #37『中継地』
1月第2週の月曜日。今日は祝日で成人の日と呼ばれる。昨年までこの日は祝日嬉しいと家でゆったりとしている日だった。
しかし、今日の僕にとっては違う。2021年の成人の日は僕にとってのイベントの日なのだ。同級生たちが集まるからなんだか緊張する。
背広を着て、ネクタイもしっかりと結んで、綺麗にした靴を履いてと。普段学校へ向かうのとは違う気合の入りようだ。
着る機会がほとんどなかったから、こういうのちゃんと様になってるか気になるな。親は大丈夫だと言ってくれたけど。
会場は市内の大きなホールらしい。ここって確か現代音楽の作曲家がコンサートした場所だっけ、と記憶を辿ったりしながらそこへ行くために駅へ向かう。
駅に着いてホームへ行くと、僕のように成人式へ向かうと思われる人たちがいた。電車に乗るとさらにいた。
目的の駅に到着して、改札を ピ とすると3人が待っていた。もう1人もすぐに来て、早足でホールへ向かう。
ホールにはもう人がたくさんいた。こんなに多くの人を見るのいつ以来だっけ。夏にフェスに行って以来かな。
僕たちを含めた、たくさんの人の声が会場を包み込んでいた。かしゃ かしゃとスマホのカメラの音も聞こえてくる。
少しして、式が始まった。
市長さんが演壇で話してる。テレビで見る人だ。有名人だって思いながら聴いていた。
ああ、もう20歳なのか。長い20年だったと思う。
式が結ばれて、僕たちを包み込む大人の空気が落ち着いて和やかになった。
大人の空気から出たらお腹が空いてきてしまった。ご飯食べに行かない?て訊くとみんなも同じようにお腹が空いていたようで行くことになった。
道中は、今シーズンの気温がどうとか、この前アップデートがあったゲームの話をしていた。新アイテムはゲット出来たかって。一人だけ手に入れてた。強い。
ホールの近所にあるから15分くらいで到着した。和食系のファミレス。成人式ってなんだか和風な感じだからって事でここになった。
店に入ると店員さんに人数を伝え、窓際の席へ案内して頂いた。
何にしようかってタブレットを回し見をしようと思ったら、画面に映し出されているQRコードをスマホのカメラで読み込むと、メニューの確認と注文が出来るらしく、そうすることにした。便利だね。
注文を早くする事が出来るからお腹空いてる中だと嬉しい。
注文をすると僕も含めてみんなドリンクの方へ向かった。ドリンクバーを頼んでいたようだ。考える事はみんな同じ。僕はメロンソーダにした。せっかくだからね。
注文をして8分くらいするとテーブルへメニューが運ばれてきた。
すき焼きやお寿司、海鮮丼、ステーキセットとみんなにとってのごちそうな品が届いた。僕はすき焼きを頼んだ。みんなで食べるようにと唐揚げとポテトもある。ファミレスらしい。
すき焼きだから牛肉やねぎといった食べ物を箸を使ってアルミのような素材の鍋へ入れている。すき焼き用の出汁を入れて調理?を開始。最近はこれもIHピーターで行われるようで、たぶん初めて触れるであろう、IHのスイッチを起動する。
初めて触れる機械をちゃんと使いこなせて、心の中で少し躍っていた。
みんなはもう食べ始めてる。僕もお腹空いたから唐揚げを口に入れる。ジューシー。
卵をとぐのって結構楽しい。箸から伝わるとかれた卵の感触が良い。他にはない感じ。
鍋の中身も煮えてきた。電気の力ってすごい。出汁の香りがさっきよりも漂ってくる。みんなも美味しそうって話してる。だろ〜?てちょっとノリ良く返す。
そろそろ良いかなって思って牛肉を器へよそう。生卵でくぐった牛肉は美味しい。出汁と牛肉の旨味、そして生卵の他にはないまろやかさが合わさってとても美味しい。
美味しすぎてひょいひょいとすき焼きは僕の口へと行く。ご飯も進む。気がつくと完食していた。みんなはもう完食していて山盛りのポテトをゆったりと食べていた。
それからは、ポテトを食べつつ思い出話をしながら1時間くらいゆっくりしていた。お互いそういうのあったなあ、ていう話がいくつかあった。
ポテトも完食し、お腹が満たされるといつの間にか空は惹き込まれるほどに美しい茜色の景色が広がっていた。色々な景色が頭に浮かぶ。
僕もう大人なんだよな。しっかりしないと。就活もあるわけだし。就職を希望する会社はあったりする。確定かは今のところ分からないけれど、ある。
友達と綺麗な空だねと駅へ向かう道の中で歩きながら話す。
このくらいの時期、空が茜色からアメジストのような色、そして星の時間へ行くのにそんなに長い時間はかからない。
でも、茜色の空は必ずまたこの世界へ顔を出してくれる。これからもずっとそう。美しい景色を届けてくれる。1年365日の中で必ず届けてくれる。
駅へ着き、改札を通ると「じゃあまた明日!!」とあいさつして、お互いの家へ向かうためのホームへ向かった。僕と同じ路線の友達もいるから話しながらホームへ向かった。
機材代に使います