足音

この家では、よく足音があちこちから聞こえる。
天井の方だったり、家の裏やキッチンのすぐ横で。

日中に聞こえる足音は、隣の家を訪ねてくる人だ。夜に聞こえるのは、確かめてないけども、動物だと思っている。

夜、布団に横になっていた時、足音が近づいてきた。それは、家の中をこちらに近づいてきているように思えて、なんだか無性に怖くなって、慌てて、携帯で動画を流して、音をかき消した。

高野山に住んでいた時も、そんなことが一度あった。洗面台に向かって、歯を磨いていた時、後ろに何かがあるというか、いるというか、そんな気配を急に強く感じて、怖くて動けないでいたら、突然、窓もドアも開いていないのに、風がびゅーっと吹き抜けた。思い切って、後ろを振り返ったけども、もう気配は消えていた。

そういう目に見えないものを感じる感覚は、あまり持ってないから、そういうものに対する恐怖も強いと思っていた。でも実際に近くで起こると意外にもすんなり受け入れられる自分がいた。

それは、高野山という神秘的な所で起こったからかもしれない。自然ととても近い美山の暮らしも人の力が及ばない何かが溢れていそうだ。