YouTuber・Vtuber機材厄介ファンの考える配信機材~画周り篇~
カメラからPCまでに噛ませる機材のお話って、Vtuberさんは基本Live2Dとか使うから関係薄くて、タイトル詐欺にならないようにYouTuberって足しときました。
先日、某イベント会場でLiveUを見かけたんですよ。LiveUの使用レビュー情報絶賛お待ちしています。
※実際この型番かはわかりません。
これ、ハズレ。LiveUでした。 https://t.co/qz2BKpCyyo
— 翠坂満月/藤 (@Fuji_Midoryzaka) December 15, 2024
正直、ガッカリしました。このチョイスは無いなって。実際、配信映像はしょっちゅうコマ落ちでカクついていて、アーカイブ公開に差し障るほどでした。
僕自身使ったことのない機材なのでLiveUの使用レビュー情報絶賛お待ちしていますなのですが、悪評のほうが先に目に付くような始末だったのでちょっと困惑。LiveUが良い機材だとしても、当該イベントは使うべき条件ではないだろって思いました。大丈夫?変な人に騙されてない?
そんなわけでちょっとお気持ち表明させてください。なお、今回はカメラからPCまでに噛ませる機材のお話(と、回線のお話もちょこっと)なので、カメラやPCの話はほとんどしません。また、紹介した機材や構成を採用したことに関する責任は取れませんのであしからず。
◇家庭向けビデオカメラ、虫の息。
過去の拙稿の書き出し「スマホ1台あればいい。」のあおりをもろに食らったのが、家庭向けビデオカメラ市場でしょう。スマホで十分な画質・音質の映像が撮影でき、記憶媒体の大容量化・低価格化に加え、SNSへの投稿の容易さも相まって、外部メディアを必要とする映像専用機の需要は壊滅的に激減したといって良いでしょう。ヨドバシ.comでデジタルビデオカメラのカテゴリみたら数台しか出てこなかったときの寂しさをわかってくれ。「ハンディカム」のソニーさんとパナソニックさんがほそぼそ置いているだけです。僕が愛用していたJVCさんはヒットせず。悲しいね。
そもそも、写真向けのカメラ(スチルカメラと便宜上呼びます)とビデオカメラが別々に製造されていたのは、アナログ時代からの記憶メディアの違いによるもの(と、僕は考えています)。今やSDカードで写真も動画もなんだって収録できますが、フイルムやテープをスチルカメラとビデオカメラで共通のものを使う、なんてできませんよね?
デジタル化が進み、イメージセンサー(CMOSとかね)を通じて画を撮ってメディアカード(SDカードとかね)にデータ保存、という部分がスチルカメラとビデオカメラで共通化出来るようになると、コンパクトながらレンズ交換可能で使い勝手が良く、大型のイメージセンサーを搭載しやすいレンズ交換型スチルカメラ(一眼レフとか、ミラーレスとか呼ばれるやつ)が家庭向けカメラとして注力されるようになり、レンズ交換の効かないコンデジとかビデオカメラとかは廃れていくこととなりました。栄枯盛衰、悲しいね。
これはYouTuberら動画配信界隈でもそうで、WEBカメラ以上の画質をとなれば、いわゆる家庭向けビデオカメラではなく、レンズ交換型スチルカメラを採用することが増えてきました。例えば、SONYのVLOGCAMシリーズとかね。
レンズの上あたりにもこもこが付いてるのわかりますか?マイクの風防です。内蔵マイクはもちろん、ミニプラグでマイクを外付けできるスチルカメラも今日び珍しくありません。レンズ交換型スチルカメラから音声ごと映像を吐き出して、PCで受けて使う。基本的な機材構成はこの形をとることになるでしょう。
◇ありがとうゲーム実況配信者
ゲーム機をテレビに繋ぐケーブルを思い出してください。今どき多くの人はHDMIケーブルを思い浮かべると思います。僕は赤白黄のケーブル(RCAケーブルと言います)を思い浮かべました。ファミコンのRFスイッチを思い浮かべた方、あなたの存在が重要です。
動画配信の映像出力に使うケーブルも同様で、今どきはHDMIが主流です。ほとんどのカメラはHDMI出力に対応しています。ケーブル1本で高画質・高音質・高速伝送。最高です。ほとんどのPCにはHDMI入力端子がないことを除けば。
PCに映像を取り込むには、ビデオキャプチャという機材が必要です。映像の入口、オーディオインターフェイスの映像版みたいなものですね。デジタル伝送のHDMIだと関係ない話ですが、もともとはアナログ信号で出力された映像を、PCで扱えるデジタルデータに変換して取り込むための機材でした。昔のビデオカメラと赤白黄のケーブルで繋いで、映像を取り込むとかね。需要もそう多くないものと言ってよかったでしょう。
ビデオキャプチャ需要を高めたのは、間違いなくゲーム実況のおかげです。今や、ビデオキャプチャといえばゲーム機とPCを繋ぐための機材、と思っている人がほとんどでしょう。アナログテープの映像のデジタル化とか、パソコンで地上波テレビを見るとか、そういった需要ではここまでビデオキャプチャ市場は広がらなかったことでしょう。参考に、2016年のAV Watchさんの記事を置いておきます。
僕が今は亡きustreamで週一で映像配信していたのがだいたいこの記事の前後で、当時使っていたビデオキャプチャはSK NETが2011年に発売したMonsterX LIVEでした。1080p入力に対応していながら出力は最大720pという不思議な子。
もう10年以上配信等でお世話になったキャプチャボードのMonster Xくん(右)がご勇退されます。後任はMonster X Lite2さん(左)が担当します。 pic.twitter.com/KIzDiOfaXd
— 翠坂満月/藤 (@Fuji_Midoryzaka) May 24, 2022
当時の機器って本っ当に扱いが大変で。しょっちゅうヘソ曲げて映らなくなるんですね。この子はまだマシな(最悪雑にUSBケーブル抜き差しすれば治ってくれる)んですけど、先輩が使っていたBlackmagic DesignのIntensity Shuttleとか高機能なのにPCとの相性がめっちゃシビアで……大変だったんです。ええ。しかも高かったし。
今や、様々なメーカーから安価で高機能なビデオキャプチャが多数発売されています。天国かな?SK NETのMonsterX 4Ksは4K入力4K出力できるようになったし、アイ・オー・データやサンワサプライといった皆さんにも馴染みのあるメーカーもビデオキャプチャを出しています。今アツいのはAVerMedia(アバーメディア)のLIVE GAMER ULTRA GC553でしょうか。4K・プログレッシブ・60fpsをパススルー対応で3万切るって神かよって。
本題に戻ります。動画配信でレンズ交換型スチルカメラを使う場合、HDMIケーブルでこのビデオキャプチャに接続し、そこからUSB接続でPCに取り込むことになります。上述したVLOGCAMはUSB接続対応らしいけど、そうしたカメラはまだ少数派でしょう。ゲームならいざ知らず、実写映像の生配信ならFullHD(1920×1080ピクセル)の30fpsまで画質を落としてもそこまで違和感はないでしょうから、もっと小型で安価なビデオキャプチャでも十分です。サンワサプライのUSB-CVHDUVC2とか実売1万切るようですし。
◇「イベント」を考えたとき、この構成頼りでいいのか
あなたがカメラ1台体制で配信をするだけで、配信場所も自宅やスタジオなど1か所の固定拠点だけだというなら、ここから先の文章を読む必要はありません。黙ってレンズ交換型スチルカメラとビデオキャプチャをHDMIケーブルで繋げろ。
カメラ2台以上を使いたい、あるいは、イベントステージなど屋外で配信をしたい。そうしたときにこの構成では十分対応ができません。僕はやってたけど、過酷だしクオリティは低かったです。おすすめしません。
◇カメラ複数台運用はビデオスイッチャー必須
カメラを複数台使いたいという段になって初めてビデオスイッチャーを検討することとなります。ビデオスイッチャーは複数のビデオソース(カメラだったり、ゲーム画面やPCのスライドを含みます)を取り込んでまとめ、必要なタイミングで切り替えて出力するための機材です。ビデオスイッチャーにはビデオキャプチャの機能が備わっているので、カメラとPCにそれぞれ直接繋ぐことが可能です。YouTuberさんはビデオスイッチャーと(音声の)ミキサーをごっちゃにしがちですが、そもそも目的が違います。音は音でミキサー繋いで作るんだよ。
ビデオスイッチャーで最近良く見かけるのはBlackmagic DesignのATEM Mini Pro。もともと放送局向けの業務用スイッチャーATEMを出しているメーカーで、その民生用入門機って感じ。品質はお墨付きで、4入力で5万を切るような価格ならさもありなん。
ホントはRolandのV-8HDとかオススメしたいんだけど、10万から20万を下回るぐらいの価格帯なので、個人で買うもんか?レンタルを検討してもいいのでは?ってなる。ATEM Miniのパクリみたいな製品も安価に出つつあるけど、基本的にそういうのはおもちゃと割り切って遊ぶモノだからここでは紹介しない。つーか個人でカメラ複数体制とれる機材揃える人って僕側の人間、要はオタクですよ。こんな記事読んでないでお前の推し機材を書いてくれ。
こんなこと書いておきつつ僕はビデオスイッチャー無しでカメラ複数台運用してました。ビデオキャプチャを複数種類使うって荒業で。同じ種類だと別のカメラとして認識してくれない可能性が高いので、Intensity ShuttleとMonsterXを併用する、みたいな。結局配信端末に負荷をかけることになるのでオススメはできません。やめたほうがいいです。
◇物理的な距離を考慮して機材を選ぶ
イベントの配信などのときはまず会場の図面を確認してから機材構成を組むと思いますが、大事なのは物理的な距離に応じた接続方法を採用することです。カタログスペックでもUSB接続はUSB3.0で3m・USB2.0で5m、HDMI接続は10mが最大とされています。実際はもっと短い範囲内で収める必要があります。小規模なイベント会場でも、この長さでは足りない事例はしばしば発生し、その時どう対応するかがポイントです。
考え方はいくつかあるでしょうが、まずは配信端末(PCなど)の周りになるべく機材を集約することを考えます。ビデオキャプチャやビデオスイッチャー、音声用のミキサーを配信端末の周囲に配置し、そこから各カメラやマイクへの配線を長く取る方法です。
単に長いケーブルでカバーしたいなら、SDI接続で対応する手があります。ファミコンのRFスイッチを思い浮かべた方、お待たせしました。出番です。SDI接続というのはテレビの配線でおなじみの同軸ケーブルを使う接続方法で、コネクタはBNC端子というものを使います。カタログスペックで100mは接続可能なので、HDMIケーブルよりはるかに長い距離を取り回すことができます。カメラ側がSDI接続に対応しているものであれば、ビデオキャプチャ・ビデオスイッチャー側にSDIからHDMIへの変換を噛ませれば済むので、これが選択肢に挙がります。SDI接続できるカメラなんて業務用ビデオカメラになっちゃいますけど。予算が許せば、SONYのPXW-Z200とか使いたいですよね。変換はBlackmagic DesignのMicro Converter BiDirectionalあたりなら買って持ってても良いかも。
現実的にはHDMIリピーターを噛ませてHDMIケーブルで配線することになるでしょう。これでも40mぐらいまでは対応できそうです。映像が映らないってなったときにケーブルの問題かリピーターの問題か切り分けないといけないのはネックです。カメラ側でリピーターを噛ませて、10mぐらいのHDMIケーブルをコネクタでひたすら繋いで養生テープ巻いて……って運用になるでしょうか。面倒だなぁ。
◇5Gをどこまで信じて良いのか
Rolandもそう思ったのか、AeroCasterという4台のスマホ・タブレットをカメラとして繋いで使えるビデオミキサー機能付き配信端末を出しています。実売4万前後。個人で買えるじゃん!なんでPCに繋ぐとただのオーディオインターフェイスになっちゃうんですか!?どうしてカメラと有線接続できない仕様なんですか!?スマホ・タブレット専用デバイスばっかり。Rolandっていっつもそうですよね!!
確かに、個人で構成するならこっちのほうがよほど賢い選択です。適当なスマホをカメラとして扱う。小さくて軽くて高画質。接続もWi-Fiで楽だしケーブル取り回しの心配も不要。そのままWi-Fi経由の光回線か、屋外でも5G回線で送出するならそこまで回線を気にする必要も無さそう。もうこれでいいんじゃね?そう思えたらどんなによかったか。
まずWi-Fiは屋外で500m程、屋内で100m程飛ぶとされています。これを数字どおり信じてはいけない。Wi-Fiが使う電波は周波数帯が2.4GHz帯と5GHz帯で、前者は家電やBluetoothと電波干渉しやすく、後者は壁などの障害物に弱く、数字ほどの飛距離や安定性を期待できません。
次、5G回線。理論上、上り最大100Mbps(Sub6)~481Mbps(ミリ波)という凄まじい太さを持ち、実効速度でも最低限上り10Mbps前後は確保できる心強いやつです。周波数帯がSub6とかミリ波ならね。Sub6は人工衛星との電波干渉対策が必要で基地局作るのがめんどくさく、ミリ波は距離が短いうえ建物などの障害物に弱いため沢山の基地局が必要となり、これらの周波数帯の対応エリアってまだ少ないんですよ。それ以外は4Gと同じ周波数帯を転用して5Gを称していて、4GLTE程度の速度しか出ません。人が密集していないところを選んでの実測調査で上り10Mbpsだと、ちょーっと心もとない。4Kは無理で、1080pでもカクつきが怖いなって数値。イベント会場みたいに人が密集するところだともっとガッツリ下がりますからね。
このへんってものすごい速度で情勢も変わるので、そのうちSub6・ミリ波の5G回線も人口カバー率が7割とか8割とか超えるようになれば、心配もしなくていいかなというところです。これ書いてる時点だと2割とか4割って数字しかないのでまだダメです。ここで冒頭のLiveUの話に戻ります。こいつも5G回線前提の機材なんだよ。
こいつが何かというと、業務用ビデオカメラの映像を携帯電話回線経由でインターネットに送出する中継機なんです。テレビ局の選挙特番なんかで大活躍していて、中継先でカメラからSDI接続で映像吐かせて、テレビ局側ではインターネット経由で映像を受信して放送に乗せるという運用をしているようです。確かに、投票締切後の選挙事務所周辺だったら回線が混み合う懸念とかも低いですし、なにより衛星回線の中継使うより遥かに安上がりですし。
ただ、同じことを人がたくさん集まり回線の混雑が見込まれるイベント会場のYouTubeLive配信でやれるかは別。少なくとも今の5G環境ではちょっとしんどい。イベント会場が屋外で移動基地局でも来てるならともかく、コンクリ打った屋内だと確実に4G並の速度まで落ちる。普通テザリング頼りで配信やりますかって話で、やはり配信回線は固定の光回線を確保したい。LiveUからの中継映像が止まってもスタジオに戻せばなんとかなるテレビ局と違い、YouTubeLiveでこれ使うとなると、LiveUが止まると配信が止まることになるので、ちょっとリスキー。僕なら選ばない。選ぶとしても、映像を別端末で受けてから配信に乗せる構成にする。
スマホ自撮り以上に凝った外ロケ生配信をやりたいのであれば、まず配信端末を安定した回線で繋いだうえで、その端末までワイヤレスビデオトランスミッターで映像を飛ばすことを考えたほうがいい。TeradekのBoltシリーズとか。
有線か無線かを選べるなら有線を選べ、は鉄則。できるだけ不安要素は排除したい。YouTubeLiveのサーバへの送出はなるべく太くて安定した回線を確保し、無線で繋ぐ距離は最小にしたい。楽だからでLiveUを選んでいい状況とは思えない。
インターネットでの生配信におけるLiveUの使用レビュー情報絶賛お待ちしています。これってホントにこれ1台でOKな状況ですか?僕にはそうは思えません。大丈夫?変な人に騙されてない?って思いました。