Vtuber機材厄介オタクが考える「切り抜き動画」制作

 ほぼ身内向けのメモ。
 Vtuber文化を下支えするもの、それは切り抜き動画。もともとはいわゆるまとめブログ→まとめ動画の文脈から発生した、要はお小遣い稼ぎのようなもの……と僕は理解している。切り抜く側は収益を、切り抜かれる側はバズによる知名度UPを狙えるwin-winの関係によって黙認されてきた、ちょっとグレーな転載風俗だ。今ではファンメイドコンテンツガイドラインという形で、そうしたグレーな部分は権利者側からも一定程度の承認を得ているものに変わり、時代の変化を感じるものである。
 昨今、切り抜き動画はただ切って抜き出せばいいものではなくなった。これはYoutubeの収益化ポリシーによるもので、要は単に切り抜いただけの動画は粗製乱造できちゃうから、何らかの独自性ある編集を加えてくださいね、ということ。他のSNS(Xとかtiktokとか)は本来関係ないが、今や切り抜き動画といえば手の込んだ二次創作ハイライト動画を指すものとなった。
 そんな切り抜き動画を制作するにあたり、心理的なハードルを下げよう!という目的で、僕のもつちょっとしたノウハウをまとめたのがこの記事である。なお、僕は収益化NGのコンテンツを取り扱う身なので、お小遣い稼ぎ狙いの人は他の記事へGOだ。


◇キャプチャについて

 僕がゲーム実況プレイ動画を制作していた十ウン年前、当時は「カハマルカの瞳」というフリーソフトを愛用していた。画面全体、または画面の一部を動画や静止画としてキャプチャし、保存できるものだ。こうした画面キャプチャのソフトは、今やPC・スマホに標準搭載されてはいるが、いくつかの選択肢を知っておきたい。

 ゲーム実況界隈だとBandicamが有名だろうか。古いところだとアマレココ。コーデックが有償なのでちょっとためらわれるが。

 僕はOBS Studioの録画機能を使うことが多い。配信や仮想WEBカメラとしても使えるので、キャプチャ専用にソフトを入れておくのはもったいない時代かもしれない。

 キャプチャするときのサイズは幅1280×高さ720px、いわゆるHDサイズにしている。元配信が4Kだろうが、切り抜きはあくまで元配信への誘導と割り切って、スマホで綺麗に見られる程度に画質は落としている。映像エンコーダはH.264(AVC)でレート制御はCBR、映像ビットレートは6000kbps(6Mbps)もあれば十分と思われる。普段CQP使ってんのでわかんないけど。
 (2024/12/31追記)制作者の環境が許すならば、フルHD制作のほうがいい。1920×1080px、映像ビットレート15Mbps(最低9Mbps)ぐらいが望ましい。僕はまだフルHDモニタで制作している機材弱者だが、そう遠くないうちにフルHD環境さえ最低ラインとなる時期がくる。(追記ここまで)
 ともあれ、画面キャプチャソフトというものは便利である。何とは言わないけど、便利である。

◇編集ソフトについて

 Adobe税が払えるならAdobe Premere Pro一択。高えだけあってプロ品質。ただ、初心者には難しすぎるソフトでもある。ある程度他のソフトで慣れて、Adobe税を払う覚悟ができてから使うべき。

 フリーの動画編集ソフトといえば、AviUtlが有名。だが、これはプラグインを自分で集めて使い方を自分で調べて使わないといけないのが難しい。良いソフトであることは確かだが、やはり初心者にはハードルが高い。

 切り抜き動画なんて切って並べればいいんだから、そこまで高価なソフトは必要ない。僕は高校放送部時代に出会ったCorelVideoStudioを使っている。慣れてくると物足りなさもあるが、ライン編集には十分である。安いし。

 別の記事で採り上げた、放送局向け機材ブランドBlackmagic Designが出しているDaVinci Resolveが気になる。ユーザー登録のみで使える無料版でも十分な機能がありそうながら、プロ水準のクオリティが出せそう。使用レビューお待ちしています。

 日本でプロ水準といえばGrass ValleyEDIUSである。高校放送部だと強豪校が使っていたイメージ。価格もハードの要求水準もそれなりに高いが、質は確か。

 中華系なのでその辺は留意してほしいが、よく見かけるのはWondershareFilmora開発企業名不詳Capcutあたりか。上述のソフトがしっくり来なければこちらのフリー版を試すのも手かもしれない。第一選択ではないが。

 ここで挙げていない有名製品があるが、個人的には推奨できない。初心者は無料版のDaVinci Resolveから入ってもらうのが良いと思う。物足りなさを感じて有償版にアップグレードしたいとなったら、Adobe Premere ProEDIUSVideoStudioを選択肢に加えてほしい。

◇フォントについて

 まずは自分が使うフォントの利用規約を確認してほしい。基本的に動画テロップでの使用はOKなことが多いが……。フォントの大手モリサワさんのnoteを貼っておく。

 フォントは1動画内で4種類程度に収めたい。僕の場合、「基本」「強い」「弱い」の3種類をベースに、切り抜きポイントに応じて1種類を足して4種類としている。

 「基本」のフォント。読みやすいゴシック体を選ぶ。ほとんどのセリフはこのフォントを使う。Windows標準搭載のBIZ UD ゴシックなど。僕はいろはまるとか自家製Rounded M+を選ぶ。

 「強い」のフォント。太くてカクカクしたもの、端がギザギザしているものなどを選ぶ。歓声や怒鳴り声、驚きなどに使う。また、特に際立たせたい部分だけ「基本」のフォントから置き換えて使うこともある。サムネイルなんかこのフォントばっかり。851チカラヅヨクとか源界明朝とかがよく使われる。

 「弱い」のフォント。太さがありつつもひょろひょろした手書き系を選ぶ。泣き声、適当さ、投げやりなセリフ、ボケなどに使う。851チカラヨワクが定番だが青柳隷書しもなんかも使える。

 上述の3種類をベースに、アクセントが欲しくなったら別のフォントを足す……というのが良いと思う。キラキラ感(お金を稼いだとか、セレブとか優雅さとか)を出すために黒薔薇シンデレラを使うとか、ホラー感のために怨霊フォントを使うとか。フォントの検索にはフォントフリーとかいいフォントとかのサイトが便利。皆さんの感性で選んでくれ。

 大事なのは読みやすさ。切り抜き元の配信者はテロップに十分な程の長尺で喋ってくれないので、表示時間が1秒とか2秒とかになりがち。その短さでも読みやすいフォントをチョイスすること。

◇テロップについて

 「切り抜きって喋ってるセリフ全部テロップにしなきゃいけないんでしょ?」と思うかも知れない。実際、そんなことはない。テロップは要所要所に入っていれば十分。自分が切り抜いた「ここは面白い!」というポイントが伝わる程度でいい。フィラー(「あー」とか「えー」とか)はバッサリ切っていいし、同じ内容を2回言ってたら2回目は無視してもいい。
 逆に、自分が「ここは面白い!」と思ったポイントはテロップで強調してあげるとよい。文字を「強い」のフォントにしたり、サイズを大きくしたりする。通常のセリフテロップは画面下中央に出すことが多いが、あえてそれ以外の場所に散らしたり、動かしたりしてもよい。
 テロップで面白さを強調するためのテクニックは、とにかくテレビのバラエティ番組のアイディアをパクることである。自分は「めちゃ×2イケてるッ!」とか「水曜どうでしょう」だったらどうするかな、とイメージしてテロップを仕込んでいる。

◇効果音について

 テロップと同様に重要なのが効果音である。面白いと思ったポイントには効果音を入れろ。テロップは雑にしてもいいが、効果音をサボると面白さが半減する。
 効果音は感情の強調に使う。「ひらめきのピコーン」「怒り・ツッコミのビシィ」「困惑・諦めのシューン」「喜びのシャラララン」など。セリフテロップを出すタイミングか、一拍おいてから入れるとよい。
 また、説明テロップを出すときは必ず効果音を入れること。いわゆる通知音系の、ピコッという音でよい。
 効果音は効果音ラボが便利。あとは魔王魂とか。規約を参照しやすいよう、サイト別にフォルダを分けておくとよい。

◇動画の長さについて

 あくまで持論だが、Xやtiktokに流すなら1分未満。Youtubeなら5分以上20分未満で、理想は8分前後。
 Xなどの1分未満というのは、要するに一発ネタ勝負ということ。ショートコントのタイトルのように、内容が1文で説明できる程度の情報量に絞る。複数のネタは入れない。その代わり、テロップやSEはくどいぐらい入れて良い。
 Youtubeなどの動画サイトの場合、動画を見たい人がアクセスしてくるので前者よりも長い尺のほうが良い。短すぎると関心がすぐ他に移ってしまうし、長すぎると見るのをためらってしまう。昔は動画容量の関係で10分未満が必須だったが、容量問題が解決された今でも名残か8分前後の動画が多いように思われる。

 8分ぐらいなら、3つ4つのネタを盛り込むことが可能。笑いどころを引き立たせるためにあえてテロップや効果音を抑えた場面も入れ、緩急をつけること。また、内輪ネタ(メンバーシップに入っているようなヘビー視聴者でないと面白さがわからないもの)になっていないかは注意してほしい。

◇切り抜き動画制作者の心構え

 切り抜きは元動画の面白い部分を強調する作業であって、面白いコンテンツを作っているわけではない。面白いのはあくまで元動画の配信者であって、切り抜き動画制作者ではない。この点を忘れないこと。
 笑いというのは本来残酷な行為である。普通じゃないもの、異常なもの、おろかでみじめなものに対してヒトは笑う。笑われるというのは本来とても傷つく行為であり、笑いをとるという行動は誰かを傷つける行為で、一歩間違えればただのイジメである。芸人同士ならば楽屋で謝ることもできるが、切り抜き動画制作者が配信者に対して同じようにはできない。
 切り抜き作業をするとき、そのツッコミは単なるDisりではないのか、勝手なキャラクターを押し付けてはいないか、一つ一つの演出時に確認してほしい。最後は結局、切り抜き動画制作者の良心とセンスにかかっている。