
地位を買ったはなし
この記事はEMC Healthcare Advent Calendar 2024 12/16の記事です。弊社では「ヘルステックで社会課題を解決する」を掲げています。タイトルからして弊社事業とは全く関係のないお話なのですが気にせず続けます。
きっかけ
数年前のある日、有名な漫画家が勲章*を授与された、というニュースを目にした私はこう思いました。
「漫画家って天皇陛下から勲章もらえるんだ…!」
「いいな… 勲章いいなぁ… 地位とか名誉とかでもいいなぁ…」
「これから先、自分が国から表彰を受けるような事があるだろうか?」
「何者にもなれなかったからこうして地味に暮らしてるんだよなぁ…」
別に派手な暮らしがしたい訳ではないですが、世の九割九分は同じ一般人で、誰も何者にもなれないという事はわかっていても「自分は国に感謝されない存在なのか…」と、うっすらと負けたような気持ちにさせられて。
ふつう小一時間もすればすっかり忘れていつも通り生きているはずなんですが、この時は何故かずーっと引きずって、何故かフリマアプリで勲章を探してみたりして悶々としていました。
そしてふと、十年くらい前でしょうか、テレビで「地位を金で買う事は出来るのか」みたいな番組をやっていたのを思い出したのです。
あーそうだ!勲章じゃないけど手に入るな、地位。
*ちなみにニュースで授与されたのは勲章ではなく「褒章」だったらしい、というのはこれを書いていて知った事ですが、説明できるほど違いがわかっていません。
どこの何の地位?
もうそのテレビ番組で見た内容なんて、お笑い芸人がお金出して海外の何かの称号を貰ってたぐらいの記憶しか無かったんですが、グーグル先生がすぐ教えてくれました。
シーランドという国が海外向けに爵位を販売している、という情報です。
はて、シーランドとは…?
シーランド公国は、イギリス南東部の10km沖合いに浮かぶ構造物を領土とする自称国家(ミクロネーション)。創設以降、シーランド公国の国家承認を明示的に行った国は存在しない。
シーランドとは


あっ…と、一目見てもうお察しですね。大変アレなお国です。買えるのはそういうキワモノの爵位だ、みなまで言うなという事です。
ここでシーランドがどういった国なのかを詳しく語るのはちょっと違うと思うものの、こんな構造物が国であるがゆえのお話なのでちょっと続けます。
第二次大戦中に海上に建てられた要塞を元軍人が奪取して独立宣言をしたとか、立ち退かせようとイギリス軍が派遣される(つまり武力侵攻)とか、首相として招いた西ドイツ人に占拠されてしまう(つまりクーデター)とか、狭い国土なりの面白エピソードが色々あるんですが、特に気に入ったのが

老朽化した発電機から火災が発生し、国土の半分が焼けて壊滅状態に陥ったというエピソード。発電機で国土が半焼!?面白すぎる…!
この後、国家再建に繋がったのが売りに出した爵位などの売上だと言われ、それ以来貴族制度が国の重要な経済政策になっているんだとか。
この話にはかなり揺さぶられました。ちょっと、いや結構応援したい。爵位を手にすることがシーランドの安寧に繋がるのです。
しかしなかなかそこから踏ん切りがつきません。だって無駄に(失礼)お高いんですもの。そんな簡単には紳士になれないのです。
おいくらざます?
男性の爵位は位が低い方から順に(現在の価格で)、
君主・卿 (Lord) ¥3,078〜
男爵 (Baron) ¥6,158〜
伯爵 (Count) ¥30,999〜
公爵 (Duke) ¥76,999〜
となっており、デューク呼びには一番胸がときめきますがいかんせん高すぎる。伯爵のカウント呼びって全然ピンとこないし、男爵って真っ先にジャガイモが浮かぶのでイマイチ。ロードが卿ならベイダー卿はそそるけど、「爵」って付かないじゃん…爵位とは…?
他にナイト(Sir) ¥15,398 もあるものの、公国の騎士団に所属する事になるらしく、何か式典とか(あるわけないだろうけど)招集がかかったりしたら面倒だなぁと。ああ悩む。
そんなこんなで長い悩みが約2年続きました。長すぎて忘れてた。
ついに(面白いからお金捨ててもいいかと)決心し、爵位を金で買うことにしました。
そして届く
注文から更に待つこと半月ほど。
姓名欄で入力ミスがあったのか「これは公文書だから名前を間違えないように」みたいなメールが届いて「公文書……フフフフ笑」みたいな微笑ましいやりとりもありつつ、イギリス発の国際郵便が届きました。
シーランド、生活は色々とイギリスに乗っかってそう。


これが通常価格だとデータ形式のみだって事で、環境に優しいって言えばそういう時代なんだろうけど、PDFで貰っても嬉しくないじゃないですか。オプションで紙形式にすると金箔押しの紋章が入った羊皮紙で届くという話だったのでそっちを選択。元々の¥6,158がオプション込みで¥10,999になりました。ちょっと…たけーな…?

未承認国家だけど請求とか為替とかどうなってんの?という疑問もありましたが、普通にMasterCardで円払いできました。どういう仕組みなんだろう。
何はともあれ、私もとうとう爵位を授かったのです。スーツを着てヒゲをたくわえたくなりますね。英国紳士(偽物)ですので。
正直、家庭持ちで給料を巻き上げられてお小遣いで暮らしている自分には、紙っぺら数枚と形だけの爵位で1万円超えはなかなか痛い出費でしたが、まぁ笑わせてもらえて長く楽しめたので良しとします。
シーランド公国の紹介や購入は日本語版公式ページからどうぞ。
その後は?
シーランドからはこれといった追加イベントは無いんですが、何よりも「勲章が欲しい!地位や名誉が欲しい!」と思う事がなくなったのが大きいです。効果ありましたね。だって俺、もうバロンだし。

「俺、爵位を授かったんだ」って嫁さんに一通り話したら、何かゴミでも見るような目で「へぇ〜」とだけ言われました。そうだよね。それが普通の人の反応だよね。でもいいんだ。俺、バロンだし。
おしまい。
※出典元のない画像は全て購入した書類を撮影したものです。