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中森明菜の表現力
伝説のコンサートとして語り継がれる中森明菜のEAST LIVE。
以前、その歌声とバックバンドの演奏の素晴らしさについて書いたが、同様に一曲一曲の振り付けも素晴らしい。それも振付師に頼むのではなく、すべて自分の創作だと聞いたが、もしそうなら驚愕だ。幼い頃にバレエを習っていたそうだが、身体の柔らかさはそこからきているのだろう。
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まさに、心技体が最も充実していた時のライブだ。なぜ、このコンサートが伝説と言われるのか、その要素は全部で4つあると思う。振り付けが3つ目となるが、最後の要素として“表情”があると思う。たとえば同時期のアイドルは自分と同年代の女性が歌の主人公となっている。松田聖子の曲は歌が全部同じに聞こえてしまうのはそのためだろう。
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しかし、中森明菜は違う。コンサートでも歌っているTANGO NOIR(タンゴ・ノワール)などは、30代、いや40代の女性がテーマなのかもしれない。年齢、場面、性格、一つとして同じものが無い曲の構成だ。当時23歳の彼女が、その心情に乗り移れるのは、尋常ではない感性と想像力の持ち主だったからに他ならない。
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※画像は、中森明菜イーストライブ・インデックス23(DVD)より撮影