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百合樹 第一章いつだっていつだって始まりは ⑤ 非日常

第一章
いつだっていつだって始まりは

気づけば目に止まる、性分のせいだろうか。
いや、もうすでに鳴り始めているのだが、当人が気づいていないだけのこと。
それは、往々にして、日常の中に起こりうるのである。


非日常

私と友人は島根にいる間、2週間ほどをホテルで過ごす。普段ではありえない生活である。(起床時に、いくつもの叫び声を片手で止めるのは、日常と変わらないのだが。)

何より朝飯が美味い。なにも、自宅で出てくる朝飯に不満がある訳ではない。
ただ、知らない地でしか味わえない幾種類もの料理、食べたいものを好きなだけ食べる、時間に追われず優雅に時を過ごす。至福である。

加えて、夕飯には食券が支給され、ホテル周辺の食事処を自由に利用することができる。
和洋中に地の料理、なんでも選び放題のこのシステムは、本旅の醍醐味である。
行き先をこの島根にしたのも、この食事システムが最大の理由だと言っても過言ではない。私たち2人は食事という行為が大好きなのだ。自他ともに認める大食らいである。

2人が過ごす部屋では、常に音楽が鳴っている。互いに、今1番聴きたい曲を部屋に流し、その音楽について語り合って過ごす。
もちろん、勉強も怠らない。
何の気なしにテレビも付いている。
テレビでは冬季五輪が放送されており、実のところ私は、彼の鳴らす音楽よりも、ホッケーをする女性たちに魅了され、生返事をしていることは彼には言わない。(まあ彼は気づいていただろう、何度も彼の方を見るようドヤされていたし。)

そんなこんなで、私たちは二週間ほどの非日常をとても充実した環境下で過ごすのである。

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