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百合樹 第一章いつだっていつだって始まりは ③ 日常

第一章
いつだっていつだって始まりは

気づけば目に止まる、性分のせいだろうか。
いや、もうすでに鳴り始めているのだが、当人が気づいていないだけのこと。
それは、往々にして、日常の中に起こりうるのである。


日常

暮らしといえば、特になんの代わり映えはしない。大学の授業を受けるばかりの日々だが、その時間が退屈だと思うことはあまりない。
授業中は、先生の話なんてそっちのけ、友人の動向や先生の所作を見て
『あの人は何を考えているのか』
『次に何をするのか』
『なぜあんなことをしているのか』
と思いを巡らせるのが常である。

私は、昔から他人を観察するのが好きなのだ。
人に言わせれば、紙一重で変態の域にいたかもしれない。
それを友人に問い詰められれば、認めざるを得ないぐらいには他人のことを見ていたと思う。
その甲斐あってか(甲斐と呼ぶべきかどうかは変態と問い詰めた友人には聞かないでおくが)、初対面の人の顔や名前を覚えるのは得意だったし、人の変化にも敏感に気付くことができた。

ある日の英語の授業中、何気なく見ていた黒いティーシャツが妙に記憶から抜け出ていかなかったのを、未だに不思議なものだと思っている。

それはさておき、よくよく考えれば、人間観察以外に授業の楽しみがある訳ではないと思うと、日々受ける授業自体は、実のところ味気のないものだったのかも知れない。

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