見出し画像

百合樹 第一章いつだっていつだって始まりは ② 通学

第一章
いつだっていつだって始まりは

気づけば目に止まる、性分のせいだろうか。
いや、もうすでに鳴り始めているのだが、当人が気づいていないだけのこと。
それは、往々にして、日常の中に起こりうるのである。


通学

その日は、蝉の声が鳴り響き、空がどこまでも青い夏の日だったかもしれないし、心地よい風の中、お気に入りの柄シャツを羽織って歩く秋の日だったかもしれない。
とにかく、どんな日のどんな朝だったか、覚えていないくらいには、なんの変哲もない。
普通の1日。

私は、近頃、日々繰り返される長い小旅行の間(旅行先はいつも同じ山奥の校舎だが)、車校の合宿先を決めるため、友人と連絡を取り合っていた。
『近場では面白みもない。』
『どうせなら、行ったことのない地で、観光しながら免許が取れたら楽しいだろう。』
『じゃあ、もう中国地方でいいじゃないか。』
こんな流れで、特にこだわりなく島根行きが決まったのである。

このとき、日常の中に、非日常が訪れることが決まった。

いいなと思ったら応援しよう!