牛乳
木曜の朝7時30分、起きてそのままキッチンへ向かう。日曜に買った花柄の陶器のカップを取り出し、牛乳を注ぐ。そのまんまレジに入れようとした。
「鍋であっためたことある?」
と、彼が言った。
ないよ、面倒じゃない、と呟く私。
「一度、期限切れの牛乳をね、そのままじゃ気がひけるからって鍋で煮て飲んでみたんだ。そしたら、びっくりだよ、なめらかでさ、ほんのりあま〜くて。のんでみなよ」
そこまで言うなら、と一度レンジにかけかけた牛乳を取り出し、赤縁の小鍋へ静かに流し込む。
「ゆっくりね、時間かけてね」
じっくり、じっくり、弱火で温め膜がかかってきたところで火を止める。
スプーンでひと飲み、うん、たしかに絶品だ。
もう一つすくい、はい、あげる。
「うん、美味いね」
そんな顔がみられるなら、私は急ぎの朝のこの時間、少しも惜しくないわ。