完全自殺マニュアルとしての「プロアナ」

理解されにくいタイトル、というより、誤解されやすそうなタイトルだけど。

「プロアナ」というのは「プロ(支持)アノレキシア(拒食症)」の略で、拒食を病気ではなく、ライフスタイルとして肯定していこうとする考え方。米国で生まれ、賛否両論があるらしい。

この考え方、もしかすると「完全自殺マニュアル」(鶴見済)の思想と通じるのでは。あの本は、自殺を助長するとして批判もされたけど、自殺抑止としての効果もなくはない。「いざとなれば、死ねばいい」と思うことで、自殺を先延ばすような読者も生んだようだ。

それと同じで、プロアナに出会うことにより、拒食が悪化するような人もいる一方で、逆に「拒食のままでいいんだ」と思うことで、悪化せずに済む人だっているような気がする。

要は、毒のない薬も、薬にならない毒もない、ということか。

自殺と拒食。この二つは似てると思う。どちらも、生きることの怖さをなんとかしようとして、退行もしくは、自らを消滅させようとする行為、なのかなと。人間以外の動物は、ほとんどしないという共通点もある。

こんなことを言っても、気休めにすらならないだろうけど、自殺を想い、拒食を志向してしまう人は、人一倍、じつは人間らしい時間を生きている、のではないだろうか。


(初出「痩せ姫の光と影」2010年5月)


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