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映画「ノルウェイの森」

村上春樹の同名小説を映画化した「ノルウェイの森」。よくできてたと思うけど、物足りない面もなくはない。

観終わったあと、パンフレットを熟読すると、世界観を取り違えてるわけじゃなさそうなんだけどね。
すなわち、映画評論家の黒田邦雄は、
「苦しみを描かずして、美しさは描けない」
という信念が、トラン・アン・ユン監督と村上に共通していて、このコラボが成功した、と見ている。僕もそれは認めるし、主演の松山ケンイチをはじめ、役者もスタッフもよくやってると思うのだけど。
ヒロイン・直子を演じる菊地凛子が、やや力不足、もしくは、役柄との相性が今イチだったかな、と。
直子は、恋人の自殺というトラウマにさいなまれ、心を病む女性。作家で脚本家の狗飼恭子は、
「声を大きくする必要がないのよ。相手を説得する必要もないし、誰かの注目をひく必要もないし」
という原作の一節を引用して「誰かを説得する必要のない世界。それが直子の望んだものだったんじゃなかろうか」と、想像する。そのため、菊地は、囁くような声で演じるように心がけた、というのだが、それが徹底できてない気がして。現実が怖くて怖くて、囁くようにしか話せないヒロインの、「危うくて儚い美しさ」(菊地本人の言葉)
を表現するには、この人の演技は大味すぎたのかもしれない。
ちなみに、一緒に観た妻も「原作のイメージと違ってた」とのこと。とはいえ、他の人のブログを見てたら、「イメージ通りだった」と書いてる人もいたから、感じ方はそれぞれ、ってことかな。

画像は、パンフレット。カバー付きで、昔のレコードみたいな体裁になっていて、なかなかオシャレです。


(初出「痩せ姫の光と影」2010年12月)

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