振袖がない腕~「秘密」の志田未来
昨日から始まったドラマ版の「秘密」。バス事故で母が死に、娘が生き残るものの、じつは娘の体には、母の心が宿ってしまっていて…という、幻想的なミステリーだ。
志田未来扮するヒロインの女子高生が、母の心を宿してから初めて登校する朝、夏の制服からのぞく自分の腕を見て「振袖がない」と喜ぶ場面があった。
父(というより、彼女の感覚的には夫)に向かって、
「ここ。触って、ほら。こんなに細いの!」
と。志田未来は、若手女優としてそこまで細いほうじゃないから、この場面が始まったとき、リアリティが成立するか、一瞬心配になって、腕を注視しちゃったけど、振袖っぽさはなくて、安心した。
(もしかして、ちょっと痩せたかな?)
男である僕にとって、この作品の最大の魅力とは……母の性と娘の性という、本来不可逆的なふたつのエロスが、可逆的に描かれ、それが刺激をもたらすところ。この場面はまさに、40代の成熟した女性が、10代の未成熟な少女に変わったことを、肉体的に表現していて、その象徴が「振袖の有無」であることは、興味深い。
結婚したら着られなくなる、という本物の「振袖」とは反対に、この「振袖」は、成熟とともに誰もが身につけることになるのだから。
(身につけたくなければ、摂食障害にでもなるしかない…!?)
映画版で、広末涼子が言った、濡れ場でのきわどい台詞が、ドラマ版でも使われるかどうかが、話題になってるみたいだけど、僕にはこの「振袖がない」みたいなシーンのほうが、よっぽどドキドキさせられる。
(初出「痩せ姫の光と影」2010年10月)
今日の昼「ぽかぽか」に志田未来が出ていた。これを書いたときから14年がたち、それこそ彼女も母となってるわけだけど、可愛さは健在。あと、十代までの彼女はかなりの偏食で、ブロッコリーやアスパラガスについて「あれは木だから食べられない」とか言ってたっけ。僕は偏食萌えなので、けっこうツボだった。欲をいえば、野菜好きの肉嫌いなら、なお萌えるのだけど。