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逃げ出せない幸福

子供を持つというのは、最初から約束された失恋に向かって、それでも一生懸命祈るように進んでいくようなものだなと思う。

子供の頃からずっと、子供を産んでみたい育ててみたいと切望していた私だけど

いざ実際に子を産んだ時、いや本当はお腹の中に子が宿った時から、これは大変なことになったと思った。

失いたくないものができてしまった、これはもう絶対に逃げ出せない、と分かったからだ。

恋人だったら、まだどうにか気持ちの整理がつくだろう。どんなに愛した挙句離れていっても、しばらくは辛いけれどきっと忘れられる。

だけどこの、今は同じ体を共有しているこの人を、何があってもいつか忘れるなんてことは決してできないだろうと、すぐに分かった。

とても怖かった。

怒涛の、それでも相思相愛の乳幼児期を過ぎ、分かっちゃいたけどババアとか平気で言われる思春期を迎え、いずれ独り立ちしていく未来を考えると、

ほんと世界中のあらゆる親たちがこの過酷な片思いに「それでも」挑んだ結果、人類が存続してることを思って涙が出る。

地球ってなんて切ない場所!

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樹音
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