[読書記録 vol.10]実践 スタンフォード式 デザイン思考 世界一クリエイティブな問題解決
友達にどんな本か簡単に伝えるとしたら
ここ数年よく聞く「デザイン思考」というものがなかなうまく理解できなくてさ。
色々調べてもメソッドは書いてあるけど、そもそも「デザイン思考」とはなんぞや?ということにわかりやすく言っているものがない。
自分もデザイナーの端くれなのでちゃんと理解したいと思って読んでみたんだ。
読み終わっての結論としては「顧客が何を望んでいて、それをどう体験させるとより満足度が高まるのか、ステップを踏んで答えに近付いていく考え方」のことで、これを元々よくデザイナーがプロセスとして踏んでいたことで「デザイン思考」という言葉がついた、ということだと理解した。
でもこのプロセスはデザイナーだけがやっているものでもないだろうから、この「デザイン思考」という言葉はちょっと誤解を与える印象がするかもね。今のマーケターの皆さんも普通にやってる人たくさんいるよね。
この本も、基本的には「どう課題と向き合い、解決へ導くか」ということに対するメソッドがまとめられているものになる。
みんな忙しい日々の中、ここまで丹念にこの手法をできる人が実際どれだけいるのか、なかなか難しく感じる部分はあるけど、袋小路に入り込んでしまった時とか、トライしてみる価値は十分にあると思う。
書籍概要
実践 スタンフォード式 デザイン思考 世界一クリエイティブな問題解決
著者:ジャスパー・ウ
初版発行日:2019/9/6
出版社:インプレス
kindle unlimited:あり(投稿時)
kindle:880円(投稿時)
マーカー引いた箇所、メモ、気付き
[デザイン思考の得意・不得意]
得意 = 明確な答えの存在しないもの、例えば「誰かの体験を改善したい」など
不得意 = 明確な答えが存在しているもの、例えば「数学の定理」など
流行っているからといってデザイン思考が万能なわけではなく、ケースバイケースで使い分けていこうということ。
[デザイン思考のプロセス]
step1. インタビュー
step2. ブレストでアイデアを出す
step3. プロトタイプ制作
step4. テスト
場合によっては2〜4のサイクルを数回まわす。
[インタビュー]
・課題を理解し、ユーザーを観察し、仮定する
・実際に自分でも体験する
・導き出された仮定があっているか確認するために、対象者にインタビューする
・今日あなたにインタビューする目的、聞きたい内容を相手にちゃんと伝える
・こちらから答えを提示しない、沈黙があってもじっと待つ
・できるだけ初心者のスタンスでインタビューする
・極端なユーザーを含める
[ブレストでアイデアを出す]
・できるだけ多様性のあるメンバーでブレストを行う
・そもそも解決できる問題には適切なサイズがある。
大きすぎると解決策がぼんやりとするし、小さすぎると解決策が狭く限定的になりがち。ちょっと大きいかなくらいのサイズ感が面白いアイデアが出る可能性がある
・リフレーミングする、別の視点でさらに探してみる
できるだけバイアスを持たないようにする
・着眼点をつくる
◯◯(ユーザー)は▲▲を(ユーザーのニーズ)をする必要があった。
なぜなら◻︎◻︎(驚くようなインサイト)のためだ
・ブレスト時の即興性、スピーディーにアイデアをだしまくる
・ジャッジしない、大胆にいこう、ポストイットなどで可視化しよう、質より量
・どんな意見でも「いいね!」→「さらにこうしたほうがいいと思うけどどうかな?」
・たくさん出たアイデアを以下の3つにまとめる
①もっとも成功する可能性が高そう
②最もユーザーを喜ばせる可能性が高そう
③最も画期的である
[プロトタイプ]
・できるだけ少ないリソース、できるだけ短時間で作る、テストに耐えうる試作品
・できるだけ早く、安く失敗しよう!
・段ボールや紙、ボールペンで高速につくる
・プロトタイプがうまく行っているか確かめる基準
①ユーザーがプロトタイプがからどんなことを感じるのか
②どうやって使うのか?
③ユーザーのニーズを満たしているか
アンケートでそれぞれを0~10で評価してもらう
[テスト]
・テストの前に判断基準をチーム内で決めておく
1.どんな評価をしてもらうか
2.何を成功の基準とするか
3.どのくらいの評価を得られれば成功とするのか
・せっかくのタイミングなので複数のアイデア、プロトタイプを体験してもらおう
・魅力をあえて言葉で伝えない(ユーザーに0から感じてもらう)
・作った本人が聞くと答えにくい(同僚が作ったんだけど…とか)
・使い方を説明しない、どのように使うか観察する
・あなたが投資家として1000万円持っていたら、この3つのプロジェクトにどう使うか、または使わないか
・評価を可視化してチームと共有する
自分なりの結論、感想
自分の性格上「○○って何?」という疑問が湧いたときに、「○○は△△だ」というシンプルな答えが欲しい。
ただ、冒頭でも書いた通り、「デザイン思考って何?」という問いに対する腹落ちする明確な答えになかなか辿り着かなく、今まで理解が漠然としていた。
結局この本も、メソッドばかりを紹介して、そもそも何やねん?という問いに端的に答えられているようには感じなかった。
まぁ、そこをここまで重要視している読者もいないかもだけど。
僕の本業はデザイナーなので、自分なりに答えを出してみたいと思う。
デザイン思考とは、
「顧客の観察からスタートし、アイデア出しからテストまでをできるだけ高速で回していくなかで、顧客のインサイトを発見するという、デザイナーが元々よくやっていたことを、デザイナー以外の人でもできるよう体系化した考え方・アプローチのこと」
ん? 端的ではない? ではこれでどうでしょう。
「デザイナーがデザインをするときに取るアプローチ「聞き込み→アイデア出し→制作→ブラッシュアップ」をビジネス全般に適応できるよう、まとめたもの。ポイントは常に顧客目線であるということ」
ん〜、どうしても長くなるけど、ひとまず僕の現状での結論はここまでかな。
かつての企業は「自社でできることを証明し、さらにその精度を高めていく」こと、すなわち「自分」に焦点が置かれていた。
今は「顧客の課題・体験をどう改善するか」ということ、すなわち「他人」が基準である。このことにデザイン思考はとてもマッチしている。
デザイナーは(アーティストとは違い)、「第三者の課題を(デザインの力で)解決する」という職業である。
確かにデザインをするとき、自分のしたいデザインを勝手にするということはあり得なく、まず依頼者のインタビューから始め、少しずつ答えに近づいていく。
これが我々デザイナーが昔から自然に行ってきた仕事のやり方なのは確か。
なるほど、これを体系的にまとめたものが「デザイン思考」というものなのだろう。