見出し画像

旧司法試験 民事訴訟法 平成14年度 第2問


問 題

甲は、A土地の所有者乙を被告と表示して、所有権移転登記を求める訴えを提起した。なお、この訴訟には、訴訟代理人はいないものとする。
1 甲と通じた丙は、乙と称して訴状等を受領して、第1回口頭弁論期日に出頭し、請求原因事実をすべて自白した。
(1) 丙が自白した後、第1回口頭弁論期日において、出頭したのは乙ではなく、丙であることが判明した。この場合、裁判所は、どのような措置を採るべきか。
(2) 第1回口頭弁論期日において弁論が終結し、乙に対する請求認容の判決が言い渡されて、控訴期間が徒過した。その後、甲は、A土地について所有権移転登記を経由した。この場合、乙は、訴訟法上どのような手段を採ることができるか。
2 乙が訴状等を受領したが、甲と通じた丙が、「口頭弁論期日には出頭しなくてもよい」と乙をだました上、自ら乙と称して、第1回口頭弁論期日に出頭し、請求原因事実をすべて自白した。同期日の後、乙は死亡したが、裁判所が乙の死亡を知らなかったため、乙に対する請求認容の判決が言い渡されて、控訴期間が徒過した。この場合、乙の相続人丁は、訴訟法上どのような手段を採ることができるか。

関連条文

民訴法
97条(1編 総則 5章 訴訟手続 3節 期日及び期間):訴訟行為の追完
115条1項1号(1編 総則 5章 訴訟手続 5節 裁判):
 確定判決等の効力が及ぶ者の範囲
124条1項1号(1編 総則 5章 訴訟手続 6節 訴訟手続の中断及び中止):
 訴訟手続の中断及び受継
338条1項3号(4編 再審):再審の事由

一言で何の問題か

設問1(1):当事者確定基準
設問1(2):請求認容判決後の救済
設問2:訴訟手続の中断・受継

つまづき、見落としポイント

いったん判決が確定したら、既判力は当事者に及んでしまう。

答案の筋

1(1) 当事者については、一切の訴状の記載を合理的に判断して確定すべきであり、訴訟係属は二当事者対立構造として被告に訴状が送達された時点で訴訟係属が生じるところ、被告でない丙が受領したにすぎない本件では、乙への訴状送達から訴訟手続きをやり直すべきである。
1(2) 外形上判決が存在する以上、訴訟当事者たる乙には既判力が及ぶも、丙が乙と称して訴状等を受領したことは全く関知しないところであり、「責めに帰することができない事由」として、控訴の追完の方法を採ることができる。また、法定代理人等が必要な授権を欠いていた場合と同様の重大な瑕疵があるため、再審の方法を採ることもできる。
2 手続保障の見地から受継の申立てを行うことにより、判決確定後であっても自己が受継したことを主張して控訴の追完(97条1項)や、再審請求(338条1項3号、5号、6号)等により判決の確定を争うことができる。

ここから先は

1,845字

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?