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旧司法試験 民法 平成2年度 第1問


問 題

 Aは、夫であるBの事業が不振で家計にも窮するようになったため、Bに無断で、Bから預かっていたBの実印等を利用し、Bの代理人としてB所有の土地をCに売り渡した。

1(1)Cは、Bに対し、その土地の所有権移転登記手続きをするよう請求することができるか。
(2)Cは、Aに対し、どのような請求をすることができるか。Cの請求に対するAの反論についても含めて説明せよ。
2 Cが請求をしないでいる間にBが死亡した。A、B間には子Dがいたが、Dは、相続を放棄した。この場合に、Cは、Aに対し、どのような請求をすることができるか。Dが相続を放棄しなかった場合には、どうか。

関連条文

民法
1条2項(第1編 総則 第1章 通則):信義則(禁反言)
109条(第1編 総則 第5章 法律行為 第3節 代理):
 代理権授与の表示による表見代理等
110条(第1編 総則 第5章 法律行為 第3節 代理):権限外の行為の表見代理
113条(第1編 総則 第5章 法律行為 第3節 代理):無権代理
117条(第1編 総則 第5章 法律行為 第3節 代理):無権代理人の責任
761条(第4編 親族 第2章 婚姻 第2節 夫婦財産制):
 日常の家事に関する債務の連帯責任
762条(第4編 親族 第2章 婚姻 第2節 夫婦財産制):
 夫婦間における財産の帰属

一言で何の問題か

家事代理権と表見法理、無権代理人の責任、地位併存説、共有物の行為制限

答案の筋

1(1) 正当な理由があれば家事代理権も基本代理権となり、表見代理が認められて、Bに対し所有権に基づく所有権移転登記手続請求ができる。
1(2) 上記請求と併行して、相手方保護に資するため、Aに対し無権代理人の責任としての損害賠償請求をすることができる。
2前 無権代理人に本人の地位をもって追認拒絶させることは、禁反言の観点から認めるべきでなく、信義則上追認が強制させられて売買契約が有効となる結果、所有権に基づく所有権移転登記手続請求をすることができる。
2後 追認権はその性質上共同相続人全員に不可分に帰属しているため、Dが追認している場合を除き、CはAの持分について共有持分移転登記請求をすることはできない。

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