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旧司法試験 民法 平成6年度 第2問


問題

Aは、債権者からの差押えを免れるため、Bと通謀の上、売買を仮装して、その所有する建物及びその敷地(以下、これらを総称するときは「本件不動産」という。)の登記名義をBに移転するとともに、本件不動産を引き渡した。その後、Aは、右の事情を知っているCとの間で、本件不動産につき売買契約を締結し、代金の支払を受けたが、その直前に、Bが、Dに本件不動産を売却し、引き渡していた。Dは、AB間の右事情を知らず、かつ、知らないことにつき過失がなかった。ところが、右建物は、Cの買受け後に、第三者の放火により焼失してしまった。なお、その敷地についての登記名義は、いまだBにある。
以上の事案において、本件不動産をめぐるCD間の法律関係について論じた上、CがA及びBに対してどのような請求をすることができるか説明せよ。

関連条文

民法
94条(第1編 総則 第5章 法律行為 第1節 総則):虚偽表示
177条(第2編 物権 第1章 総則):不動産に関する物権の変動の対抗要件
536条1項(第3編 債権 第2章 契約 第1節 総則):債務者の危険負担等
703条(第3編 債権 第4章 不当利得):不当利得の返還義務

一言で何の問題か

二重譲渡と虚偽表示の第三者

答案の筋

CD間の法律関係について、二重譲渡類似の関係にあり、いずれも登記を具備していない以上、互いに所有権取得を対抗することができない。
CからAに対する請求について、建物が第三者の放火というAに帰責性がない事由により滅失していることから、損害賠償債務に転化することなく消滅するが、既に支払った建物代金に関して債権者保護に欠けるため、不当利得返還請求できる。
CからBに対する請求について、無権利者であるもののBは敷地の登記を有しており、直接自己への移転登記を請求できる一方、建物については何らの請求をすることもできない。

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