旧司法試験 商法 平成21年度 第2問
問題
⾐料品の販売を営むA株式会社は、平成21年4⽉30⽇、⾐料品の製造を営むB株式会社から、⾐料品(以下「本件⾐料品」という。)を購⼊し、同⽇、B社から、本件⾐料品の納⼊を受けた。
A社は、同⽇、その代⾦の⽀払のために、満期を同年6⽉30⽇、受取⼈をB社とする約束⼿形(以下「本件⼿形」という。)を振り出した。
以上の事実を前提に、次の問いに答えよ。なお、各問いは独⽴した問いである。
1 A社は、平成21年6⽉下旬ころ、本件⾐料品を購⼊した消費者からの苦情により、本件⾐料品が染⾊ムラや裁縫不良により販売に適さない商品であることを知った。A社は、直ちに、B社にその旨を通知するとともに、本件⾐料品の販売を中⽌して、購⼊者から本件⾐料品を回収した。A社は、B社との本件⾐料品の売買契約を解除することができるか。
2 A社とB社とは、本件⾐料品の売買契約を合意解除した。B社は、A社に本件⼿形の返還を約束したにもかかわらず、Cに本件⼿形の割引を依頼して、本件⼿形を裏書譲渡した。なお、(1)と(2)は独⽴した問いである。
(1) Cが割引代⾦を⽀払って本件⼿形の裏書譲渡を受けた場合、Cから満期に本件⼿形の⽀払請求を受けたA社は、その⽀払を拒むことができるか。
(2) Cが本件⼿形の裏書譲渡の翌⽇に割引代⾦を⽀払うことを約して本件⼿形の裏書譲渡を受けたが、割引代⾦を⽀払わなかったため、B社は、Cとの本件⼿形の割引契約を解除して、Cに本件⼿形の返還を請求した。本件⼿形の返還を拒んだCから満期に本件⼿形の⽀払請求を受けたA社は、その⽀払を拒むことができるか。
関連条文
商法
526条(第2編 商行為 第2章 売買):買主による目的物の検査及び通知
手形法
17条(第1編 為替手形 第2章 裏書):人的抗弁の制限
77条(第2編 約束手形 第4章 商号):為替手形に関する規定の準用
民法
541条(第3編 債権 第2章 契約 第1節 総則):催告による解除
564条(第3編 債権 第2章 契約 第3節 売買):
買主の損害賠償請求及び解除権の行使
一言で何の問題か
買主による検査等義務、河本フォーミュラ、後者の抗弁
つまづき、見落としポイント
買主による目的物の検査及び通知義務(商526ⅠⅡ)
答案の筋
1 買主であるA社は、「遅滞なく」⾐料品を検査しているとは言い難く、「直ちに発見することのできない場合」にも当たらず、また、その旨をB社に通知もしていないため、契約不適合を理由として売買契約を解除できない。
2(1) ⼿形債務者Aが所持⼈の直接の前者Bに対して抗弁を主張し、⽀払いを拒むことが確実という認識をCが有していた場合に限り、Aは⽀払を拒むことができる。
2(2) ⼿形法17条の趣旨が⼿形取引の安全にあることから、原因関係の消滅により⼿形を返還しなければならない所持人Cは、抗弁の切断という利益を享受するに値しないため、債務者Aは支払を拒むことができる。
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