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旧司法試験 民法 平成21年度 第2問__
問題
被相続人Aは、A名義の財産として、甲土地建物(時価9000万円)、乙マンション(時価6000万円)及び銀行預金(3000万円)があり、負債として、Bから借り受けた3000万円の債務があった。
Aが死亡し、Aの相続人は嫡出子であるC、D及びEだけであった。C、D及びEの間で遺産分割の協議をした結果、甲土地建物およびBに対する負債全部はCが、乙マンションはDが、銀行預金全部はEが、それぞれ相続するということになり、甲土地建物はC名義、乙マンションはD名義の各登記がされ、Eが預金全額の払い戻しを受け、Bに遺産分割協議書の写しが郵送された。
ところが、Cは、Bに対する債務のうち1000万円のみを返済し、相続した甲土地建物をFに売却した。
この事案について、特別受益と寄与分はないものとして、以下の問いに答えよ。なお、各問いは、独立した問いである。
1Bに対する債務に関するB、C、D及びE間の法律関係について論ぜよ。
2乙マンションは、Aが、死亡する前にGに対して売却して代金も受領していたものの、登記はA名義のままになっていた。この場合、Dは、誰に対し、どのような請求をすることができるか。
関連条文
民法
177条(第2編 物権 第1章 総則):不動産に関する物権の変動の対抗要件
415条(第3編 債権 第1章 総則 第2節 債権の効力):債務不履行による損害賠償
427条(第3編 債権 第1章 総則 第3節 多数当事者の債権及び債務):
分割債権及び分割債務
472条(第3編 債権 第1章 総則 第5節 債権の引受け):
免責的債務引受の要件及び効果
541条(第3編 債権 第2章 契約 第1節 総則):催告による解除
561条(第3編 債権 第2章 契約 第3節 売買) :
他人の権利の売買における売主の義務
907条(第5編 相続 第1章 総則 第3節 遺産の分割) : 遺産の分割の協議又は審判
911条(第5編 相続 第1章 総則 第3節 遺産の分割) : 共同相続人間の担保責任
一言で何の問題か
遺産分割の不履行、免責的債務引受、担保責任
答案の筋
1 債権者の承諾の無い免責的債務引受は、債権者に対抗することができないのと同様に、相続債権者の承諾の無い遺産分割を対抗することもできない。このため、共同相続人D及びEが遺産分割の結果を対抗できない結果、Bはそれぞれの相続分に応じて1000万円ずつの請求をすることができる。
2 遺産分割はそれ自体が目的であり、その後の義務の不履行は問題とならない一方、合意の解消により再分割の問題及び遡及効の観点から法的安定性は著しく害されるため、遺産分割の解除は認められない。このため、Dは他の共同相続人たるC及びEに、他人物売買の売主の担保責任に準じた責任を追及する。具体的には、乙マンションの自己への移転又は債務不履行による損害賠償請求としてそれぞれの相続分に応じて2000万円ずつの請求をすることができる。