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旧司法試験 民事訴訟法 平成17年度 第2問


問 題

甲は、A土地を所有していると主張して、A土地を占有している乙に対し、所有権に基づきA土地の明渡しを求める訴えを提起し、この訴訟(以下「前訴」という。)の判決は、次のとおり、甲の請求認容又は甲の請求棄却で確定した。その後、次のような訴えが提起された場合(以下、この訴訟を「後訴」という。)、後訴において審理判断の対象となる事項は何か、各場合について答えよ。
1 甲の請求を認容した前訴の判決が確定したが、その後も乙がA土地を明け渡さないため、甲は、再度、乙に対し、所有権に基づきA土地の明渡しを求める訴えを提起した。
2 甲の請求を認容した前訴の判決が確定し、その執行がされた後、乙は、自分こそがA土地の所有者であると主張して、甲に対し、所有権に基づきA土地の明渡しを求める訴えを提起した。
3 甲の請求を棄却した前訴の判決が確定した。その後、丙が乙からA土地の占有を譲り受けたため、甲は、丙に対し、所有権に基づきA土地の明渡しを求める訴えを提起した。

関連条文

民訴法
2条(1編 総則 1章 通則):裁判所及び当事者の責務
114条1項(1編 総則 5章 訴訟手続 5節 裁判):既判力の範囲
115条1項1,3号(1編 総則 5章 訴訟手続 5節 裁判):
 確定判決等の効力が及ぶ者の範囲(当事者、承継人)

一言で何の問題か

1 訴訟物の同一、訴えの利益
2 既判力作用の有無(矛盾関係)
3 既判力の主観的範囲(承継人)

つまづき、見落としポイント

審理判断の対象って?

答案の筋

1 勝訴者甲が同一の判決主文を求める場合であり、既判力の生じた判断と矛盾する主張をしようとする場合ではなく、訴え提起が認められるとも思える。しかし、訴訟物が同一であり、また、甲は債務名義をもって強制執行を行えばよく、あえて同一の後訴を提起する必要性がないため、原則として訴えの利益を欠き、訴え却下となる。
2 確かに両者の訴訟物は異なるも、一物一権主義より、所有権が双方に帰属することはなく矛盾関係にあるため、既判力が作用する。よって、後訴では、審理判断の対象たる基準時後の新事由がなければ請求棄却判決がなされ、存在する場合は、乙の甲に対するA土地の所有権に基づく明渡請求権の存否が審理判断の対象となる。
3 丙は乙から紛争の主体たる地位を承継した「承継人」にあたり、後訴では前訴判決の既判力が及ぶ。よって、設問2と同様に、審理判断の対象たる基準時後の新事由がなければ請求棄却判決がなされ、存在する場合は、甲の丙に対するA土地の所有権に基づく明渡請求権の存否が審理判断の対象となる。

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