あと一歩、足りない何かを追い求めて 徳島ヴォルティス戦レビュー(2022年J2第18節)
こんヴァンフォーレ!
今回は5月25日(水)に行われた
2022年J2第18節
ヴァンフォーレ甲府vs徳島ヴォルティスのレビューをお届け!
1.概要
前節琉球戦から中3日、天皇杯を含む5連戦の第2戦となる今節。
対戦相手はJ2降格組の1チームである徳島ヴォルティスをホームに迎える。
徳島はルヴァンカップの影響で今節が4連戦目、消耗度も気になるがJ1での厳しい戦いも過ごしてきたチームなだけに全くもって侮れない相手。
今季はここまで僅か10失点と鉄壁の守備陣を崩すのは容易ではないが、4勝9分4敗と圧倒的な引き分け数、それが意味するものは勝利を掴み取るまでのあと少しの決定力。
一方の甲府も2-0で勝利した東京戦以降、複数得点の試合はなく、3試合連続のドロー中となっている。
両チームともに、勝ち切ることができない試合を積み重ねている中、しっかりと勝ち切るための1ゴールを手にすることができるかが試合を分ける大きなポイントになる。
甲府と徳島が最後に戦ったのはリーグ戦ではなく、2019年のプレーオフ。
試合結果は1-1のドロー決着となったが、レギュレーションの関係でリーグ順位が上位である徳島がプレーオフを進むこととなり、そこで昇格の夢が潰えた因縁の相手。
J1で過ごした2年とJ2で戦った2年、チームとして成長したのはどちらか証明するための水曜ナイトゲームとなる。
2.選手紹介
ヴァンフォーレ甲府
3-6-1のフォーメーション。
連戦の中、前節からのメンバー変更は4人。
ボランチ、石川選手に代わり林田選手。
左ウイングバックは小林選手に代えて荒木選手。
右シャドーに三平選手、1トップはパライバ選手が入る布陣。
右シャドーに入る三平選手が周囲の選手を活かしつつ、経験を活かしたゴール前での働きに期待したい。
また、荒木選手には小林選手とは異なり、左ウイングバックからのゲームの組み立てられる選手なので注目したい。
徳島ヴォルティス
4-3-3のフォーメーション。
スアレス選手やカカ選手が構えている守備陣は大きな壁。
3トップとマッチアップした時の2列目の攻撃参加にはしっかりとボランチの選手や状況によってはシャドーがしっかりとついてくることも必要になる。
3.試合結果
前半にセットプレーからの流れで失点するが、後半の立ち上がりにリラ選手のPKで同点に追いつく。後半は甲府ペースで試合が進むも、今節も決定力不足が響き、追加点は奪えずに4試合連続のドローとなった。
ハイライトを中心に試合を振り返る。
前半6分 先制点へ絶好のチャンス到来
最終ラインの位置へ下がった林田選手が山田選手とパスの出し入れをしたのち、中へ絞っていた関口選手へ鋭い縦パスを供給。
関口選手はボールをフリックして、三平選手の元へ。
その間に右サイドを駆け上がっていた須貝選手へ三平選手が絶妙なスルーパスを送り込むと、ダイレクトでグラウンダーのクロスを中央へ送る。
そのボールに反応したのはパライバ選手、フリーで合わせると鉄壁の徳島守備陣を打ち破ったかに見えたが、シュートはポストを叩き先制点を奪うことは出来なかった。
前半22分 CKから打点の高いヘッドでゴールを脅かされる
徳島の右CK、アウトスイングのボールを中央で阿部選手が打点の高いヘディングシュート。こぼれたボールにカカ選手が反応したが須貝選手が身体を張った守備で自由にプレーをさせなかった。
しかし、このCKを受け今後の流れ的にはセットプレーの守備は修正しなければならなかった。
前半29分 徳島の縦に速い攻撃に翻弄される甲府
徳島DFがハーフライン付近から縦に鋭いパスを入れるとワンタッチで右サイドへパスが通る。パスを受けた杉森選手が中央へカットインすると最後は冷静にニアサイドを狙ってシュートを放つが、ゴールの僅か右に外れた。
前半36分 危険なセットプレーから先制点を献上
徳島右サイドからのFK。キッカーの白井選手からのクロスをゴール前でDFの内田選手が打点の高いヘッドをゴール左に決めて徳島が先制に成功する。
正確なキックに完璧なヘッドという敵ながら素晴らしいゴールであったが、ここまでにセットプレーで何回かやられているシーンが目立ち、その中でセットプレーの守備は修正していかなければならなかった。セットプレーを簡単に与えないという意識を持つべきだったといえる失点だった。
前半45+3分 前半終了間際にもセットプレーからピンチ
徳島の左サイドからのFK。ファーサイドへ送り込んだボールを中央に折り返すと浦上選手が跳ね返したが、こぼれ球を児玉選手が合わせるが枠を捉えることができなかった。
前半終了
立ち上がりに数回の決定機を迎えるが、なかなか決めきることができないでいると流れはセットプレーを中心にフィニッシュまで持ち込む徳島に徐々にペースを握られ、先制点を許した。パライバ選手の負傷もあり、反撃に出たいがうまく歯車がかみ合わないまま前半を終えた。
後半開始
後半から甲府はボランチ林田選手に代えて石川選手、三平選手に代えてリラ選手を投入し、おそらくもう少し温存しておきたかったと思われる選手たちを同点、そして逆転への切り札としてピッチに送り出した。
後半1分 前線からのプレスでシュートまで完結
後半立ち上がり、前線からハードにプレスをかけるとボール奪取に成功。
長谷川選手が中央に切り込むと見せて、左サイドの荒木選手へ展開。
左足でクロスを上げると見せかけ、グラウンダーでややマイナス気味にパスを送ると長谷川選手がスルー、そのボールを山田選手が受けるとミドルシュートを放つ。シュートは枠を捉えるがキーパーの好セーブに遭ってしまう。
後半9分 鳥海選手のキープからPK獲得!
野澤選手から左サイドの荒木選手へパスが通るとワンタッチで長谷川選手にパスを送る。長谷川選手は数回タッチすると再び左サイドを駆け上がる荒木選手へ戻す。荒木選手がドリブルで運び、右サイドから流れてきた鳥海選手にパス、PA内でキープをすると背後から徳島の新井選手に倒されてPKを獲得する。
後半11分 冷静にリラ選手がPKを沈めて同点
同点のチャンス、PKのキッカーは途中出場のリラ選手。
キーパーの動きをよく見て冷静にゴール右へ決めて、試合を振り出しに戻した。
後半25分 逆転へ最大の決定機を迎える!
河田選手からのロングフィードに関口選手が抜け出す。
自陣から一気に相手ゴール前でチャンスを迎えると、中央に全力で走り込んだリラ選手へグラウンダーのパスを送ると決定機を迎えたがわずかにミートできず、ボールはファーサイドに流れていってしまった。
後半39分 宮崎選手が背後を取るも徳島のファールで一触即発の事態に
味方からのパスをリラ選手が後ろへそらすとそのボールにいち早く反応したのは宮崎選手。
スピードで徳島ディフェンスラインを抜くが、エウシーニョ選手のファール覚悟のスライディングを受けて倒される。
その後、カカ選手らが詰め寄り一触即発のムードが漂った。
後半42分 逆転へ追い上げムードの最中起きた出来事
徳島に選手に対し、甲府の選手がファールを取られるとそのボールを持って、野澤選手が自陣に歩いていくとその行為が遅延行為とみなされ、野澤選手にこの試合2枚目のイエローカードが提示される。
宮崎選手、小林選手を投入し逆転に向けてより攻勢に出た勢いに水を差すプレーとなってしまった。
数的不利となった甲府は最終盤は押し込まれる時間が増えたがしっかり守り切り、失点を許さなかった。
しかし、逆転へのあと1点を奪うことができずに4戦連続のドローという決着となった。
4.今節のポイント
①左サイドの2人
今季の甲府は基本的に左シャドーには不動のレギュラーである長谷川選手が入るが、左WBにはそれぞれ持ち味が異なるタイプの選手達の熾烈なポジション争いがある。
今季ここまで左のWBで主にプレーしているのは、須貝選手、荒木選手、小林選手。
現在の甲府は右肩上がりの可変システムを採用しているため、須貝選手が右ストッパーでレギュラーに定着。そのため、左WBには荒木選手と小林選手のどちらかが入る形が多い。
小林選手の場合は左足から繰り出される鋭いクロスが持ち味、第8節仙台戦や第11節町田戦でそれぞれ三平選手のゴールを演出している。
荒木選手の場合、小林選手と同様に左足からのクロスも持ち味の1つだが、それ以外にもインサイドでプレー出来ることや周囲の選手を活かす黒子のような働きができる特徴がある。
今節は荒木選手が左サイドで長谷川選手と組む形となった。
ここ数試合は小林選手の左サイドからのクロスを活かす形や中盤に落ちてゲームメイクに加わるシーンが多かった長谷川選手だが、今節では荒木選手のサポートもあり、より前線で前を向いてボールを持つ場面も多かったように感じた。
また、荒木選手自身も豊富な運動量で長谷川選手を活かしつつ、長谷川選手にマークが集中すれば果敢にサイドを駆け上がってチャンスを創出していた。
同点ゴールを生むPK獲得シーンについては荒木選手が中央を向いたことがきっかけとなって生まれたものでもあった。
荒木選手と小林選手、それぞれが特徴ある選手なので対戦相手やコンディションで使い分けができるのも大きい。荒木選手に関してはWBだけでなくボランチやシャドーでの起用も見られるので、小林選手と左サイドで組む形も楽しみにしたい。
②野澤選手の退場
前半こそ失点を許し、甲府らしい攻撃ができないでいたが、後半から投入されたリラ選手、石川選手を中心に反撃開始。
PKで同点に追いつくと、その後は主導権を握り度々徳島ゴールへ向かうも逆転までは至らず。
そして、最後の2枚の交代カードで荒木選手、宮崎選手を投入し左サイドを活性化、ラスト約10分というところでもう一段階ギアを上げた。
宮崎選手を中心にアグレッシブに攻め込み続けていたところ、とあるプレーで野澤選手にこの試合2枚目のイエローカードが提示され、退場となってしまった。
悪質な反則をしたわけではなく、徳島がセットプレーでリスタートしようとするボールを持ったまま、自陣に帰っていく行為を遅延行為と取られたためのイエローカード。不必要なカードだったと言わざるを得ない。
ある程度サッカー経験がある人はわかると思うが、サッカーゲームと異なり実際の試合はファールなどでプレーが止まってもゴール前などでなければ簡単に試合が再開されることも多い。
そのためにクイックリスタートをさせない動きというのはチームにとっても重要である。
今回のシーンも甲府が反則を取られたあと、甲府の選手たちの帰陣が十分だったかといえばそうではなかったと思う。クイックリスタートをさせない動き方は必要であったと思う。しかし、逆転に向けて良いムードの中、既にイエローカードを1枚もらっている選手がする行為ではなかった。
せいぜい、ボールはすぐに離して、ボールの前に立つことで相手の前へ蹴ろうとする動作を躊躇させる程度で問題なかったはずだ。
結果、この後甲府はホームゲームで2試合連続で10人で戦うこととなり、押され気味だった徳島も最後の力を振り絞る勇気を与えてしまった。
負傷者やコンディションがなかなか上がらない選手が多く、高さという武器を持ち、ロングフィードの正確性を持つ野澤選手。
昨年はほとんど出場機会には恵まれず、今シーズンは試合を重ねるごとに試行錯誤し、経験を積み重ねてきている。やっとプレースピードにも慣れてきて序盤戦に少し目立っていたイージーなミスも減ってきたところで、今回の退場はとても残念であるが、きっと野澤選手自身もいろんなことを感じたはず。
プレー以外にも判断という部分でまだまだ成長できる伸びしろがあるということでもある。それは野澤選手に限らず、今の若い選手が多い甲府においては多くの選手にそれはあてはまると思う。
特に守備的な選手においては、甲府というチームでは今や欠かすことができない山本選手や新井選手も20代の時はいろいろあった(と長く甲府の試合を見続けてきた方ならわかってくれるはず)が、経験を重ねたことで大きく成長してきた。
きっと、野澤選手も同じようにこれから大きく成長していってくれるに違いない。だから、反省しきったらまた甲府のために自分のためにまた熱く戦う姿に期待したい。
③勝つために必要なあと1点をどう奪うのか
今節で4試合連続のドローゲーム。
1-1というスコアに関しては、山口戦、琉球戦に続いて3試合連続。
「失点していなければ1-0で勝てた」という見方もできるが、おそらく多くの人が感じているのは「追加点を奪えていれば勝てた」という思いだと思う。
それはどの試合に関しても「決まった!」と思うシーンがゴールシーン以外にもあったから。しかし、実際に入ったゴールはどの試合も1点のみ。
「惜しかった!」と「決まった!」のほんの少しの差が手にする勝点2差となってスコアと順位に表れている。
決定力に関する技術的な要素はあると思うが、相手がいる勝負の世界。
こちらの攻撃の技術に「決める」という想いを乗せる攻撃に、相手は守備の技術に「守る」という想いを乗せて守ってくる。
あと少し走り切れていれば、あと一歩前に出れていれば、その積み重ねも関わってくる。
そこを上回ることができるのかどうか、精神論みたいになってしまうがそれもまた1つの要素でもあると思う。
次節の熊本戦(この記事を投稿するのは試合後になってしまいましたが)、率いるのはヴァンフォーレ甲府というクラブがJ1で戦えるということ示してくれた大木武監督。
もう16年も前のことにはなるが、限られた戦力の中でJ1の強豪と渡り合ったあの戦いを率いたチームはもちろん、現在進行形で熊本の選手達にも落とし込んでいる。
甲府というクラブにとって、恩師と呼べるような人物が率いるチームと戦うことで、次節は結果も当然ながら、多くのことを収穫することができるゲームとなってほしい。
5.まとめ
なかなか勝ちきれない試合が続く。
それでも次の試合はやってくるので、特に今は連戦の真っ只中。
さらに徳島戦から熊本戦までは山梨県から熊本県に移動する時間も含めて中2日。
今節の修正も十分にできぬまま、この時期にミスマッチなデイゲームの次節に挑むが、まずは過密日程を乗り切れるように心と身体をリフレッシュして熊本戦に挑んでほしい。