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好きこそ…ものを噛み砕け

さてと…。

ラジオ論も一発、書いておきますか。

■2つの人種

802にADで入った当時、暫くして気付いた事が有りました。
ラジオ業界には人種が2つある。と。
1つは、ラジオ・放送が好きな人たち。
もう1つは、音楽が好き・以前バンドをやってた人たち。
FM局なので余計目立ったんですね。
今よりも”モア・ミュージック、レス・トーク”が謳われてた時代でしたから、FM局=音楽というカラーが端的でした。
なので、そういうところにやってくる人は音楽に敏感、それが必要条件だったんです。なので、学生時代バンドをやってたという人が結構居ました。

自分の場合、いわゆるエイティーズ全盛期に十代を過ごしたので音楽、特に洋楽をラジオやテレビ(MTVなど)でチェックしていましたが、それ以前、小中学校時代は、専らテレビやラジオで歌謡曲を聞く程度。アイドルにハマる事も無かったし、どちらかというと父親の影響でジャズが心地よく感じるような具合でした。ので、ラジオの現場に憧れるというのも、ヤンタン、ヤンリク、ANNからハマって、遠距離受信までして遠くのラジオ番組を聞くような感じで”ラジオ大好き”人間でした。たまたま「DJ&ディレクターセミナー」を見つけて応募して”ご縁”が出来たので802に加わる事になったんです。

そうすると、音楽畑出身のDの皆さんは、とても専門的な知識が豊富で、あそこのソロはどうのこうの、あれはあの曲のあの部分をパクッテるな…とかコードがどーの、楽器がどーの…なかなか話に入っていけませんでした。

それでも、素人ながら聞くのは好きでしたから、何小節目のあそこでなんたら…とか言えなくても、1234123ポン!とか、身体で、感覚で覚える…みたいな事は出来ていました。
先輩のように専門学校も行ってないので、何デシベル上げるとか、何ヘルツがどーのとか…というのもダメで、耳で聞いた感覚で覚える方が先でした。

■好きだけど

マニアックに好きな人というのは、凄い専門性を持って、凄い番組を作ります。クオリティは高いです。でも、ある意味、好きな人しか集まりません。例えばビートルズ。あのアルバムのバージョンはこうだけど、ベストの方はこうだよね。とか、この当時、プロデューサーがこうだったから、ちょっとね。という拘りが出てきます。
ファンならそれは納得します。でも、一般の人は…ついてゆけません。
つまり好きな人は、どんどん深みにハマって面白くなりますが、会員制のお店ようなもの。祇園の一見さんお断りの店みたいで、店の名前は知っていても店内は謎だらけ。
本来、聴取率を上げて、スポンサーを付けて売り上げを伸ばすべき企業としての活動の足を引っ張る事になるわけです。
好きな人を納得させつつ、すそ野を広げる工夫を加えないと、企業活動としては成り立たない訳です。

■好きこそ、物を噛み砕け

今回のタイトルに繋がりました。
ディープに好きな人は、好きだからこそ、知らない人への説明を怠らない事が大事になります。アホに物言うように説明するのも1つの手では有りますが、人は馬鹿にされると拒否反応を示します。人はちょっと背伸びをしたがる生き物なので、その壁の高さを上手く計算して、すれすれのところで、知らない人のプライドをキープしつつ、じっくり時間を取って説明する…結構難しいテクニックではありますが…それを丁寧に作り込めば、すそ野を広げられると思います。

ハードロックの巨匠で伊藤政則さんという方がいらっしゃいますね。
802開局当時、既に第一線のDJさんで音楽評論家さんでしたが、今もご活躍です。もともと、ラジオのADから世界に入った方なので、ラジオの特性もよくご存知です。現場は常にピリピリしてました(苦笑)。巨匠なので。基本は体育会系でしたよ。でも、DやPのレベルでは厳しくてもADには優しかったり、軽く声を掛けても気さくにお話し頂けたりしました。それは別として…ハードロックの世界を深く愛してきた人ですが、ラジオもお好きでしたから、そのバランスを上手くとる事にも秀でた技をお持ちでした。

音楽評論家という仕事自体が、掘り下げつつ、すそ野を広げる役目があるからでしょうか。矢口清治さんも、そういう術を身に付けた方でしたね。
マニアにはマニアに向けて刺激する情報を提供しつつ、あまり知らない人には分かりやすく基礎情報を伝える…そこを丁寧にしていた印象です。

たとえば、今、ポッドキャスト等、個人でネットを使って発信している人が急激に増えています。自分の好きな事、得意な事に絞り込んで語っている人も多いと思います。好きな事なので、無意識に内容はディープな方向へハマり込みがちです。Youtubedeで発信するユーチューバーもそう。
好きな人は寄ってきますが、深みにハマると、今度は一見さんが敬遠します。アクセス数を稼いで収入とするのが目的なら、そこの「噛み砕き」の技を身に付ける事、意識する事が大事になりますから覚えておいて下さい。

■知ったかぶり

発信力、影響力を持ってしまうと…怖いのが変なプライド。
えー?それは知らなかった…と言えなくなるのが一番怖い事です。
ディープな物の掘り下げ方をする人は、別の分野になると、とんと疎くなる場合が少なく有りません。で、1つ知らない事を振られると、あーあれね♪と頷いてスルーします。下手な人は、知ってるフリして乗っかってしまい、間違った事をポロリしてしまって、リスナーから総ツッコミを受けるとか。
立派な人ほど、知らない事は知らないと正直に言って、教えてもらい、そのあと自身で調べて、次の回にそれを語ります。
その姿というのは、知識を吸収する基本姿勢です。
深掘りする番組をやるからこそ、他のジャンルについても知的好奇心を働かせる癖を付けるというのが、リスナーからの信頼を勝ち取る基本になる…と思います。

初心忘るべからず…というのは、そういうことなんでしょうね。

なんだかラジオに限らないですね。

人のあるべき姿と言えそう。

自分にも言い聞かせて…。

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