特権集団が社会的公正を学ぶ教育論(本の抜粋)
ダイアン・J・グッドマン著(出口真紀子監訳)「真のダイバーシティを目指して 特権に無自覚なマジョリティのための社会的公正教育」上智大学出版
本書のなかでも、特に特権集団が社会的公正を学ぶ教育論についての箇所(第7章から第9章)についての簡単な内容紹介
第7章 特権や抑圧について学び直す喜び
特権集団の人々が挙げた特権や抑圧について学び直すことで得られる恩恵として次の5点をあげている。
① 知識と開眼:これまでとは別の見方ができる新たなレンジを手に入れることができ
② 精神的に豊かな生活:生き方に意味や目的が見いだせ、自身の生き方に深みと方向性が生じる
③ より真正な人間性:人間関係において誠実であるという真正性を感じることができる。
④ エンパワメント・自信・コンピテンス(適性):①~③により、自分に対する自分に対する信頼感を得ることになり、それは社会的公正な環境をつくろうというエンパワメントにつながる。
⑤ 解放感と回復:抑圧制度のもとで生きることの負の影響から解き放され、人間性を取り戻す。
第8章 どんな理由があれば、特権集団は社会的公正を支持するのか
本書では以下の3点をあげている。
① 共感型
被抑圧集団の人と個人的関係がある
② 道徳的原則型・宗教的価値型
道徳的に行動することの必要性や自分の信念と身近な状況が矛盾していることへの不快感
③ 自己利益
従属集団への抑圧が特権集団への一員である自分たちへの悪影響を心得ていて、社会的公正が進むことによる潜在的利益を認識している
第9章 社会的公正活動に人々を巻き込むために
社会的変革を起こす活動において、動機づけの要因をどう育成できるかに焦点が当てられている。
① 共感力の育成:知性と感情の両方を巻き込む。感情と物理的距離を縮め、想像力を最大化できるように働きかける
<促進要因>
・他者視点能力を育てる
・他人の現実に触れさせる
・自分の経験を語ってもらう
<阻害要因>
・認知能力の欠如
・情緒的柔軟性の欠如
・精神的・情緒的余裕の欠如
・被害者を非難する
・共感的バイアス
・共感に頼ることの限界
② 道徳的・宗教的価値観:自身の価値観への気づき、正確な資料や統計、個々の体験や理論、直接調べたもの、体験したことが気づきを促す
<阻害要因>
・道徳的・宗教的価値に訴えかけることの限界
③ 自己利益:「私にとっての利益」について常に答えを用意する必要がある
戦略的アプローチ:学習者の関心を明らかにし、関心を社会的行動計画に入れる
理論的・意識覚醒的アプローチ:自己利益の戦略的利用によって、意識覚醒へと発展させることができる。
自己利益に訴えかけることへの賛否両論もある。否定的見方としては、狭い意味での自己利益に訴えてしまうと、被抑圧集団からの信頼を得ることが難しくなること。また、自己利益がみいだしずらくなった場合、支援を撤回する可能性も生じる。
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