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認知症の人へ「人間作業モデル」という理論を用いる

引用・参考文献:
・竹原敦2017「読んでいただきたい文献」MEDICAL REHABILITATION (206)88
・竹原敦2017「【認知症予防とリハビリテーション 最前線】 作業療法モデルに基づく認知症の人がうまく生活するためのアプローチ 」MEDICAL REHABILITATION (206)1-8

○人間作業モデル(MOHO)とは
 作業療法の臨床モデルの1つであるが、model of human occupationを略してMOHOと呼ばれる。「人が生活する環境のなかで、ある程度の心身機能を維持し、動機づけられて習慣化された役割を担うことにより、日常生活が保たれ、健康になるという人間の行動をモデル化した理論」である。

○認知症の行動特性を理解する
 米国精神医学会の診断基準第5版(DSM-Ⅴ)によると、認知症は神経認知障害に含まれ、複雑性注意、実行機能、学習・記憶、言語、知覚-運動、社会的認知の6つの認知領域のなかで1つ以上障害されていることが条件となっている。つまり、必ずしも記憶障害があるとは限らない。さらに手段的日常生活自立が重視されているため、認知症の人と家族のQOLの保持のためにも作業療法の役割は重要である。 
 認知症は類型により行動特性が異なる。以下のようし整理できる。
 
 脳血管性認知症:複雑性注意、実行機能に問題が生じやすい
 アルツハイマー型認知症:他の類型と比べ、記憶障害が必須条件
 前頭側頭葉型認知症:行動の脱抑制、無気力、思いやりや共感の欠如、常道・時刻表的行為、口唇傾向、言語能力の顕著な低下
 レビー小体型認知症:具体的でありありとした内容の幻視の訴え、パーキンソンニズム、注意や覚醒度に日内変動、レム睡眠行動障害

 
作業療法では、こうした行動特性を理解し、生活上の課題を予測し、背景因子を特定しつつ、QOLを高める働きかけをする。地域に在住する認知症の可能性がある人を支援機関につなげることも重要である。

○認知症の人に対する心理社会的アプローチ
 心理社会的アプローチとは、非薬物療法であるが、認知症の人に対する作業療法では心理社会的アプローチを用いることが多い。そのなかでの作業療法の目的は「その人ができるようになりたい重要な作業で満たすことである。作業療法実施時の短いスパンで完結するような作業よりはむしろ、その人の人生に関連した長いスパンで作業をとられる必要がある

○人間作業モデルによる認知症予防の可能性
 人間作業モデルでは、「人間のシステムを意志、習慣化、遂行能力が相互に関連し合いながら、環境のなかで作業が動機づけられて日常生活へと結びつけられるパターン、作業機能障害および作業の意味と満足感に着目している」
 認知症の人がどのような活動に対して意欲を持ち、その逆かは家族や他職種にとっても重要な情報となる。MOHOではそれを評価する方法(VQ)がある。下記に認知症の人に有効なMOHOの評価法をまとめて紹介する。意欲には内発的動機づけが重要であり、それには能力と難易度が最適である特に生じると言われる「フロー」の状態となることも1つの指標となり、作業療法ではフローが得られるように対象者の能力を評価し、活動の難易度を段階づける
 MOHOの観点でいうと、人は「役割を担うことで生活満足感が得られ、QOLが高まると言われる。」「特に高齢者になると、急激に役割の減少や喪失が起こり、喪失感、孤独、抑うつ、自殺企図、認知症等が誘発される可能性がある。外傷や疾病から生じる作業行動上の役割障害を防止することがっ作業療法の実践で、人に役割に焦点を当て、その人自身の健康を作ることが介入の中心」になる。

○MOHOに基づく評価
自己報告評価
 ・作業に関する自己評価(OSAⅡ)
 ・興味チェックリスト
  ・役割チェックリスト
  ・作業質問紙(OQ)
観察の評価
  ・意志質問紙(VQ)
  ・運動および処理技能評価(AMPS)
     ・コミュニケーションと交流技能評価(ACIS)
面接による評価
 ・作業遂行歴面接第2版(OPHIⅡ)
情報収集評価
  ・作業機能状態評価・協業版(AOF-CV)
  ・人間作業モデルスクリーニングツール(MOHOST)



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