認知症予防ー作業療法の観点からー
四條畷学園大学 令和元年6月の認知症施策推進大綱によると、国は、認知症の人に対して「共生」と「予防」を両輪として対策を進めるとしています。具体的には下記のとおり。
認知症はだれもがなりうるものであり、家族や身近な人が認知症になることなどを含め、多くの人にとって身近なものとなっている 。 認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指し、 認知症の人や家族の視点を重視しながら、「 共生 」と「 予防 」 を車の両輪として施策を推進していく。
本大綱において、
・「共生」とは 、 認知症の人が、尊厳と希望を持って認知症とともに生きる、 また 、 認知症があっても なくても 同じ社会でともに生きる、という意味である。引き続き、生活上の困難が生じた場合でも、重症化を予防しつつ、周囲や地域の理解と協力の下、本人が希望を持って前を向き、力を活かしていくことで極力それを減らし、住み慣れた地域の中で尊厳が守られ、自分らしく暮 ら し続け ることができる 社会 を目指す 。
・「予防」とは、「認知症にならない 」という意味ではなく、「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味である。運動不足の改善、糖尿病や高血圧 症 等の生活習慣病の予防 、 社会参加による社会的孤立の解消や 役割 の保持 等 が、 認知症の発症を遅らせることができる可能性が示唆されていることを踏まえ、予防に関するエビデンスの収集・普及とともに、 通いの場 における活動の推進 など 、正しい知識と理解に基づいた予防を含めた認知症への「 備え 」としての取組に重点を置く。
つまり、「予防」も重要な柱の1つになっています。そこで、作業療法の観点からの認知症予防についてご紹介します。
参考・引用文献は、松下太2010「認知症予防―作業療法からの提案―」四條畷学園大学リハビリテーション学部紀要6:57-63
○「物忘れ」と認知症の違い
「物忘れ」は、生理的老化により生じるものであり、認知症の症状とは違います。物忘れと認知症の症状との違いは以下のように示されています。
加齢
・体験の一部を忘れる
・のちに思い出すことが多い
・進行しない
・失見当なし
・自覚している
・生活に支障なし
認知症
・体験全体を忘れる
・のちに思い出せない
・進行する
・失見当・判断力低下
・自覚しない
・幻覚・妄想・徘徊など
○ナンスタディ
ナンは修道女ということだが、修道女を対象にした調査研究によって、認知症の予防に重要な生活習慣が明らかになっている。この研究によると、読書や日記を書く習慣、喫煙や飲酒をせず規則正しい生活を送る、食生活は贅沢にならず栄養のバランスも良く日々の生活中で歩くことが多く適度な運動をしている、他の修道女との共同生活での暮らしなどは、脳のアルツハイマー病変に打ち勝って認知機能を維持することにつながっていると考えられています。
つまり、脳にアルツハイマー病変あっても、必ずしも認知症を発症せず、認知症予防のためのライフスタイルによって、認知症の発症年齢を遅くできる可能性を示している。
○認知症予防になること
認知症を予防するということは、認知症の発症の危険因子を減らすことです。脳血管性認知症については、運動不足、肥満、飲酒、喫煙、高血圧症、高脂血症、心疾患などの生活習慣病の予防が重要である。
アルツハイマー病の影響因子は、遺伝的と環境的に分けられる。環境因子として以下4つについて紹介する。
【食生活】
・魚などに多く含まれる不飽和脂肪酸を多くとる。
・ビタミンB、C、βカロチンに抗酸化作用があるため、多く含まれてい る野菜や果物もよい。
・赤ワインに含まれるポリフェノールもよい。
【運動習慣】
・有酸素運動の強度と頻度が影響しているため、1週間に3回以上、 ウォーキングをするのもよい。
【知的活動】
・文章を読むやゲームをするなどの知的な生活習慣があると予防になる と言われている。
【社会生活】
・人との繋がりを絶やさない