
邪魔する男はスワイプで消すよ?私たち、大冒険で忙しいの@中東ヒッチハイク
「人生初のヒッチハイク。よりによって、なんで中東で」の後編。
前編のおさらい:ヒッチハイクに苦戦していた私たちは、行き先「砂漠」を書いた紙を作り、それを掲げる作戦をとってみた。
ーーーここからは後編です。ーーー

●紙の効果は絶大。座り込んでるだけなのに..

ヒッチハイクに苦戦していた私とラウラ。最初はひたすら歩き回って車に声をかけていたが、「これでは非効率だから、行き先を書いた紙を持って、目立つ位置に座り込もう」と、作戦を変更した。
そうしたら、効果はもうすごかった。私たちは「遺跡と駐車場を結ぶ階段」の脇に座り込んだのだが、階段を上がってくる客の「見事に全員」が、一瞬チラッとコチラを見た。まったく、こちらから話しかけてもいないのにあちらから見てもらえるなんて、なんていい方法なのかと2人で感動した。
その中で、一秒以上見つめてくれた人には「あの…」と話しかけた。それでもほとんどの人は気まずそうに「あっ、ちが、そういうつもりじゃ…!ごめんなさいね」と早足で去っていく。そりゃあ向こうだって、せっかく仲の良いメンバーで旅行に来ているのに、「知らん外国人2人」を突然混ぜるメリットなどあるはずもないわけで、逃げるような反応にも納得である。
でも、「私たちがヒッチハイクをしようとしている」ことは伝わっているんだなと実感できて、どんな反応であれ絶大な効果を感じられた。
●次なる厄介な「原因」
しかし、何かがおかしい。しっかりと通行人の注目も集めているし、乗せてほしいという意図もしっかりと伝わっている。のに、なぜか成功しない。
私は、ここまで改良を重ねた作戦が、なぜうまく行かないかに気づいていた。
それは、、、。
私とラウラの間に、なぜなのか「もうひとり知らんおじさん」が座り込んでいたからだ。
我々が「3人組」に見えてしまうのは、至極当然であった。

この男、い、いつの間に!?!?!
人数的に「2人」を乗せられる車にすら出会うのが非常に難しいのに、この状況では私たちは無謀にも、いや、不服にも「3人」を乗せられる車に出会おうとしていることになり、それは無理以外での何でもなかった。
この謎の男がそばにいることで、あたかも「私たち3人を砂漠まで乗せてくれませんか?」という"メッセージ"になってしまっている…。一刻も早く打破せねばならない問題だった。
その男は、さっき「君たち〜さっきからヒッチハイク頑張ってるね〜。俺も手伝うよ!」と突然声をかけてきた男だった。私たちの間に勝手に座ると、頼んでもないのに、階段を登ってくる人に「誰か乗せてくれよ〜!?」と声をかけ始めた。
どうだろう、"声量強化"の意味ではこれをありがたいと思う人もいるのかもしれないが、、大体この状況で、紙は確実に視界に入るのだから声など必要もない。
「これ以上の『余計なお世話』って、この世にあるのかな?」と思って「地球の歩き方」で調べてみたが、答えはなかった。

ラウラに小声で私の考えていることを伝えたら、「やっぱりそうだよね…?でも、手伝おうとしてくれてる人に『あなたのせいで…』とは言えないわ…」とのこと。やはりラウラも、同じ気持ちだったかあ。
でも…。優しい性格のラウラは絶対に彼に何も言わないだろうと思った私は使命感を感じ、心を鬼にした。
「あの〜、謎の男さん?すみません。申し訳ないけれど、離れてもらえませんか?私たちが"3人"だと誤解されているから、席数的に無理だと思われて、成功の機会を損失しているような気がします。なので、あなたの助けは必要ありません」
結構、強く言った。
謎の男は「は?くそ!手伝ってあげてんのに!ふざけんな!」と怒りだして、「いいからいいから。手伝ってあげるから!」と聞く耳を持たず、また「誰か〜乗せてくれ〜!砂漠まで!頼む!」と通行人に声をかけ始めた。
「あの!!!私たち、手伝ってって頼んでないんです。2人でやりたいんです!離れてください、あなたの助けは本当に本当〜〜〜〜に、いらないんです!!」
何度も強く言った。こっちも必死というか、命がけなのだ。日が暮れる前になんとかして車に乗らなければ、遺跡で野宿することになる…。ラウラは何も言わず、ただ固唾を飲んでいた。
男は「はあ、お前たち本気で言ってんのか、女ども!俺が助けてあげるって言ってんのに、どういうつもりだよ!?!」と怒りだした。
「おいおいおい、どういうつもりって、こっちのセリフよ!」「こっちは善意なんだぞ!ふざけるな!」「はああああ!?あんた何言ってんの!?」と揉めていると…。この騒ぎ(?)をチラッと横目にしたカップルが、私たちの横を通り過ぎた。
私はそれを見逃さなかった。
「あ!あの〜!…お二人さま、もし砂漠に行くなら、車に乗せていただけませんか…!(懇願)」
カップルは「ごめんなさいね、3人は難しくて..」と言って肩をすくめ、去ろうとする。
「違うんです!私とこの女の子だけ!この男は、関係ないんです!2人!私たち、2人組なんです〜〜〜〜!!!!!!!」
するとカップルは顔をしばらく見合わせ、「まあ..2人なら….いいですよ?」と言ってくれた。
な、なんと、なんと〜〜〜!?
謎の男は「ほら見ろ、俺のおかげだろう」という顔をしていたようだが、私たちは彼を親指でスワイプして視界から削除し、ただそのカップルと、遥か彼方の砂漠のことしか見えていなかった。
●恋バナはアドレナリンを放出する

私たちを乗せてくれたのは、チェコ人のカップルだった。車まで案内してくれて「これが私たちの車よ。後ろの席にどうぞ」と言ってもらった時、「ああ本当にヒッチハイクできたんだなあ…」と初めて実感が湧き、私とラウラは冬季オリンピックで得点が発表されて暫定一位になったスケート選手とコーチのように、抱き合った。
車の中では、乗せてくれたカップルといろいろ話し…たかったのだが、私たちはもう早朝から続く大冒険に疲れ果てて、後部座席で爆睡してしまった。
普通、ヒッチハイクとは、「乗せてもらった人は"楽しいトーク"をして車内に賑わいを提供することで、ギブアンドテイクが成立する」と聞いたことがある。だが私たちの場合は「テイクアンドスリープ」だった。ギブなど皆無。圧倒的サイレントだった。
しかしこのカップルも、車内でゆっくり砂漠でのプランを話したかったかもしれないから、気を遣わせなかったということで、後部座席の静寂をお許しいただきたい。。

カップルとの唯一の会話は、序盤で「あなたたちはカップルですか?」と聞いたら「ははっ、ただの友達だよ」と答えられたことだ。
「えっ?お友達なんですか?」
「そう。僕がfacebookで『誰か一緒にヨルダン行かない?』って投稿したら、この彼女が手を上げてくれたのさ」
「「へ、へえ〜」」
しばらく走るとチェコ人カップルは道中で車を止め、「スーパーに買い出しに行ってくるね」と私たちに声をかけた。その声で私たちはむにゃむにゃと目を覚まし、車内は私とラウラだけ…というその瞬間。「ねえ、さっきの聞いた!?」と途端に起き上がる女子2人。
「あの二人、ただの友達って。んなわけないよね!?」「だよねだよねだよね!?私もめっちゃ思ってた」「ただの友達2人が、チェコからはるばるヨルダンに来るか?」「これぜったい砂漠でカップルになるやつだよ」と散々盛り上がった。
そうしていると「未来のカップル」が帰ってきたので、動いていたことがバレないように振る舞うトイストーリーのおもちゃのようにいい子にして座っていると、カップルが「2人にもお土産があるよ」と、スーパーで買ったスナック菓子を渡してくれた。「ええええそんなそんな、乗せていただいているだけでありがたいのに…お気遣いなく、本当にありがとうございます!!」
受け取った瞬間、私たちは「この二人に幸あれ、アブラカタブラ」とアラブの恋の呪文を唱えて、また車内で熟睡したのであった。
●次回、砂漠到着!
「ヨルダンの本屋に住んでみた」の女子旅シリーズ一覧。どこからでも読めます。
1・旅行の準備
2・遺跡 (探検編)
3・ヒッチハイク (苦戦編)
4・ヒッチハイク (成功編)←今ここ
5・砂漠 (星空編)
6・砂漠 (青空編)
7・帰宅と後日談
[[[ ヨルダンの本屋に住んでみた 他の話 ]]]
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