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わらじ荘、おおいに走る。「おうちが図書室」

コロナ禍によって訪れた「おうち時間」

私がわらじ荘へ初めて遊びに行ってから、さらに3週間ほどが経った3月中旬。新型コロナウイルスの影響がじわりじわりと日常生活に現れ、北海道では他の地域よりもはやく外出自粛の呼びかけが行われた。「不要不急の外出を控えてください」と自宅で過ごす週末。いわゆる「おうち時間」の到来だ。私も、テイクアウトで営業を続けている知人の飲食店へ時折買いに行くぐらいで、外出自粛をまじめにがんばっていた。

 そんな時、わらじメンとまた交流するきっかけになったのは「コロナウイルス吹き飛ばセール」で購入した熊本の金柑だった。3㎏大人買い。

ごうくんは、わらじ荘初期からのメンバーのひとり(私が彼女たちを知った時、わらじ荘住人はあんなちゃんとごうくんとすみえちゃんしかいなかった。出入りする人は、老若男女問わずたくさんいらっしゃったようですが)。

食べてみたいと言ってもらいすっかり気を良くした私は、いそいそとわらじ荘へ。ちょうどいただきもののイカがたくさんあるということで、物々交換になった。

この時の訪問で、私にとってわらじ荘が「リアルでの地域のお付き合い」に変化した気がする。

子どもたちへの本の貸し出し活動に奔走「おうちが図書室」

その時、ちょうどわらじ荘では外出制限に伴って急きょ休校となってしまった子どもたちを案じて、わらじ荘の図書室の蔵書から本の貸し出し・配達・回収を行う「おうちが図書室」のプロジェクトをスタートしたところだった。

休校で自宅にいる子どもたち向けに、と様々なデジタルコンテンツが無料開放され、それはそれですばらしい取り組みだったと思うけれど。

あんなちゃんは「こういう時だからこそ、アナログな『本』に触れて感じることがあると思う」と言っていた。活動の告知が地域メディア各社から発信され、私もわらじ荘のFacebookページのほか、ローカルTVの放送で目にしていた。

TVでは、わらじ荘の住人だけではなく学生や地域住民の方が協力して、本の分別や消毒にあたっている様子が流れていた(後に警戒レベルが上がり荘に人が集まれなくなったので、分担しながら少数精鋭でがんばっているようだった)。

私が金柑を持っていった時はちょうどプロジェクトが走り出して少し経った頃。「ガソリン代の支援をお願いします!」とあんなちゃんたちがnoteを通じて呼びかけた直後だった。

あんなちゃんは「思っていた以上にnoteでたくさんの方たちが支援してくださった」と驚きと喜び半々の心境だったように見えた。

ガソリン代を出して、それでも余ったお金はどうしたらいいだろうと言っていたので「本の活動に近い用途に使った方がいいと思う。そして、『こういう目的に使います』と明らかにした方がいい、サポートしてくれた方たちが納得できるから」と私なりにアドバイスをした。

後日支援してくれた企業や個人名をきちんと明記したお礼のnoteの投稿を読んで、「きれいに着地できたなぁ」と思った。

皆様のおかげで
ガソリン代、除菌用ふきん、クイズぬりえの印刷代、スタッフの交通費などに当てさせていただきました。本当にありがとうございました。

活動中はFacebookで配達の様子などを毎日配信し、「どんなことをどんな風に行っているのか?」オープンにする努力をしていたようだ。宣伝になるのはもちろんのこと、利用する方々への安心にもつながる。大変そうではあったけれど、細やかに気を配ってほんとうにがんばっているなと感じていた。

大変そう、ではあったけれど。毎日あんなちゃんたちは感動していた。喜んでいた。「本の回収に行ったら、その子からお礼の手紙が入っていた」「自分で作った工作をプレゼントしてくれた」「うれしい」「うれしい」

喜びで胸をいっぱいにしている様子が伝わってきて、みんながしあわせになる良いプロジェクトだった、という印象が強い。

「おうちが図書室」が成功したのは…?

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わらじメンが本の貸し出し活動をするにあたって、まず一番の成功ポイントは無事に、安全にプロジェクトを終えられたこと。そのために細心の注意を払ったこと。それを踏まえた上で、私が見ていて思ったポイントをいくつか挙げてみたい。

①アイディアが出たら、広く人の意見を聞いてみる

わらじメンの中で「やりたい、やろう!」という気持ちが湧いて始まったプロジェクトではあったけれど、まずあんなちゃんはFacebookで大人たちに意見を求めていた。

「こういうことをやろうと思うのですが、どういう風にやれば良いと思いますか?」

気をつけるべきポイント、安全安心にプロジェクトを進めるためのアドバイスなどが数件コメントされていたように思う。きっと、あんなちゃんたちは実際に会う人にも意見を聞いていたのではないだろうか。

そうして、プロジェクトを進めるための「より良い方法」を見出したら、最終的には自分たちで意思決定をして実行。「思う」から「やる」までのスピードが驚くほど早かった。おそらく、やりながら改善していったこともあるだろう。人の意見を広く聞いて参考にするけれど、決めるのは自分たちだからブレなくてすむ。その進め方はすごく良いな、と見ていて思った。

②サポーターが多い。人の巻き込みがうまい!

私が金柑を物々交換した時のやり取りもそう。人は、意見したこと=関わったことと捉えて、応援したくなる。その後の成り行きが気になるはずだ。

noteでの投げ銭支援も同様で、投げ銭をした方たちはみな「自分が支援したプロジェクト」という存在に変わったと思う。わらじ荘=自分が支援しているコミュニティ。そうやって、どんどんいろんな人たちを巻き込んでいく

先ほど「おうちが図書室」のプロジェクトがTV放送された時に「地域の人」も手伝っていた、と書いた。わらじ荘の動きが可視化されたできごとが「おうちが図書室」だったとして、「わらじ荘」というものがスタートしたのはこの時ではない

後から知ったことで、多分まだまだ私も知らないことがあると思うが、あんなちゃんはじめわらじメンたちは大学内外のいろいろな活動に関わってきている。道南杉を活用しようという「木づかいプロジェクト」、Earth Day、学生で作るフリーマガジンSPOT、それから……。「わらじ荘」はある日突然ぽっ、と生まれたものではなく、その活動は脈々とつながってきていたもののようだ。

③結果を出す。可視化する。

「『やります!』と始まったはずのあの団体はどうなったんだろう」「クラウドファンディングで支援したのはいいけれど、余ったお金は??」……そんな風に、モヤモヤした経験はないだろうか。以前よりもクラウドファンディングの利用が浸透してきたとはいえ、まだまだプロジェクトを打ち出す方も支援する方も、不完全燃焼に終わるケースがあるように思う。

途中経過を伝えること。

最終結果を見せること。

この2つはすごく重要。それで得られるものは、社会的信用だ。メンバーが学生たちであるということは、「がんばっている若い子を応援したい」大人からのサポートが受けやすい反面、「自分たちがやりたいことを楽しくやって終わったのでは?」という誤解を招くリスクがある。

わらじ荘は、ローカルメディアの協力を得、自分たちでも丁寧に発信をしながらプロジェクトの透明性をキープした。そして、きれいに終えることができた。

これによって、「ひとつのプロジェクトが成功した」ということにとどまらず、「わらじ荘」というコミュニティが地域で信頼を得る結果になったはずだ。その意義はとても大きいものだったと思う。


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