白服の
潔癖に立つ
歌人(うたびと)は
歌人の塚本邦雄を初めて見たのは、『季刊銀花』を刊行していた文化出版局の主催する『筆趣展」だった。何回目かは思い出せない。
白い麻の上下のスーツに身を包まれていた。後ろに、暗い背広姿の政田岑生が、ぴったりと影のように控えていた。大番頭のような貫禄だった。
「SF小説では何がお好きですか?」
唐突な質問に対して、『結晶世界』と即座に答えて下さった。J.G.バラードの破滅物の長編である。意外な顔をしたのかもしれない。エピグラフの部分を暗誦してくださった。やや鼻に響く声の関西弁だった。
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