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シュッツに学ぶ、時間をかけたインプット術

昨晩は、サントリーホールのブルーローズ(小ホール)で開催された公開マスタークラスの聴講へ行って参りました。

講師は、ウィーン・フィルのカール=ハインツ・シュッツ氏。
受講生は3名、「音大卒業または同等の実力をもつ25歳以下の方」という条件で事前に公募があり、録音または録画による審査があった模様。

ビックリなのは、募集要項を見ると受講料無料、ピアニストは自分でどなたかに依頼しなければならないものの「謝礼のご用意がございます」
更には聴講生もたったの1,000円!!

なんでもかんでも値上がりの時代に、たったの1,000円でシュッツ氏のレッスンが聴けるなんて、これを逃すわけにはいかないと音速でチケットをポチったのでした。


ホールは扇形に座席が配置されていたので、おそらく380席ほどあったと思います。(サントリーホールホームページ調べ)
こんなに安いのに20-30席ほどは空席がみられたのではないかしら…なんともったいない。


当日配布されたプログラム。
受講生のプロフィールや受講曲目などが記載。


あまり音楽に詳しくない方のために簡単に説明すると、「マスタークラス」というのは一般的に、第一線で活躍する演奏家から直接指導を受けることができる公開レッスンのことです。

受講生は今回のように公募で選抜される方式だったり、お金を払って申し込む式だったり色々です。
レッスンを受ける曲目は事前に告知されることが多いので、熱心な方は楽譜を準備したり事前に曲を勉強してから聴講に来て、持ってきた楽譜に書き込みながらレッスンを聴いたりします。


今回はドイツ語でのレッスンだったので通訳さんもいらっしゃいました。
また、今回の受講曲目は受講生の公募時から「オーケストラスタディ」と指定されていました。


オーケストラスタディ、通称オケスタは、オーケストラの中の重要な旋律(ソロ)を抜粋したもののことで、

例えばフルートなら、
ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」冒頭
ラヴェル「ダフニスとクロエ」第2組曲のパントマイム
ブラームスの交響曲第4番の4楽章

ピッコロなら、
ベートーヴェンの交響曲第9番の4楽章
チャイコフスキーの交響曲第4番の3楽章
ラヴェルのピアノ協奏曲の1楽章
などがあります。


オケスタは、オーケストラのオーディションで課題として出されるものなのですが、
実際のオーディションではこれらのソロをたった1人で演奏し、
リズム感、イントネーション(音程)、発音やニュアンス、音の美しさ、音色の種類、音楽性や個性、あとオーケストラの曲についてどれだけ分かっているか、
などということを総合的に判断されます。



今回のマスタークラスは、これらのオケスタをピアノ付きでやるという点においても新鮮でした!


お手本でサラッと吹いてくれるシュッツ氏の音のなんと美しいこと…!!
それだけで1,000円以上の価値がありまくりでした。


このマスタークラスにおいて、
具体的なオケスタのアドバイスについて以上に心に刻まれた言葉がありました。

それは、1人の受講生に対して「もっと色んな音楽を聴いてください」というアドバイスをした所から派生したお言葉だったのですが、

現在はSpotifyとかで簡単に音楽を聴けてしまう。
だけど、私たちは昔の人たちがどうやって音楽を聴いていたか、どのような習慣の中に音楽があったかということにもっと思いを馳せるべき。
じっくりと時間をかけて音楽を吸収・吸引することをやるべき。

といったことを仰っていました。
(通訳の方のお言葉に、自分で聞き取れたニュアンスを足しているため言葉が少々異なると思います)

音楽の都ウィーンを拠点とし、クラシックを第一線で演奏される方として、大変重みのあるお言葉だったと感じます。


レコードに針を落としてじっくりと音楽を吸い込むような昔の聴き方から、
スマホ一つでカジュアルになんでも聴けるようになった現代。
私自身も長い動画は倍速で視聴したり、タイムパフォーマンスを重視しがちだったりする日々なので、このシュッツ氏の言葉はずしーーーんと響きました。


もちろん現代の音楽の聞き方を否定するわけではありませんが、特にクラシックを勉強し演奏するのであれば、インプットの仕方も大事に決まっていますよね。

じっくりたっぷり、丁寧に、時間をかけて、
全身で音楽を吸い込む。



あえて効率を無視したインプット。
音楽以外の分野でも大事にしたいことかもしれないです。

心に刻んで過ごしたいなと思います。

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