『会いたい人 A面』
彼女はある人に会おうか会わまいか悩んでいた。
カフェで一人、ホットミルクのマグカップに両手を合わせて暖を取るように窓の外で深々と降り続く雪をテレビを見るような気持ちで眺めていた
「今日に限って東京で雪が降るなんて」
北海道出身の彼女にとって雪なんて当たり前のものだけど、東京でここまで降る雪は東京に上京して初めてだった。
東京でも雪が降れば賑やかな街並みも風情あるものに少しだけ感じることに安堵を覚える。
「どうしよっかなー」
携帯画面には毎週月曜日に更新される人気占いサイトの画面。
水瓶座のページには「今週のあなたは勇気を出して会いたい人に会いに行きましょう」の文字
また、もう一つのページには別の有名な占い師のサイト
こちらの水瓶座のページでは「今、積極的に行動するのはやめましょう」の文字
ホットミルクで暖を取るのも難しくなってきた頃、彼女はポーチから口紅を取り出し、唇に丁寧に塗り直した
「結局、自分次第ってことだよね」
何かを決意したように彼女は席を立つ。
椅子にかけていたダウンコートを羽織り、降り頻る雪の街に飛び出していった。
◆
「国立里美さん、こんにちは。雪大変でしたね。さて、前回から少し経ちましたが今の気持ちを教えてください」
とても物腰の柔らかい声で目の前にいる女性の先生が私に問いかける。
「あのー やっぱり、私会いたいです、私の赤ちゃんに」
自分では普通に声に出したつもりだったのに、想像以上に弱々しい声になっていた。
すると先生は「分かりました。ではこれからのことを説明していきますね。」
とニッコリ笑った。