マスク越しでいいからキスをしたい。「私の身におきた ” ほんとうにあった 怖い話” 」
私は経験したことがある。目の前で起きたほんとうにあった怖い話。
あれは目黒区に住んでいた頃。
その夜、私は彼氏といつも通りの楽しい夜を過ごしていた。
お酒が好きな彼はアサヒスーパードライを何本も空け、いつになく酔っ払っていた。
午前3時を過ぎ、二人で話しているにも関わらず彼が携帯電話ばかりを眺めているのが気になった。
Twitterでも見ているのかなと思ったが、手の動きからラインを打っているような感じがした。
「携帯で何見てんの?」と軽く聞くと、「ゲームしてるだけだよ。」と。
その不気味な携帯の触り方は午前4時になっても続いていた。
酔っ払って機嫌良さそうな笑顔で携帯を触っているけど、どう見ても誰かとラインをしているようにしか見えなかった。
こんな時間にラインをするってよっぽどじゃない?
何度も浮気の前科があった彼だったので、そもそも私は彼のそういった違和感に敏感だった。
彼が飲み過ぎて潰れてそのままベッドで寝てしまった後、彼の携帯を恐る恐る覗いた。
携帯なんて見るもんじゃない。そんなことを言われなくても分かっている。
でもどうしてもさっき携帯で何をしていたのかが気になる。
彼の暗証番号はなんとなく把握していた。
すやすやと眠る彼を横目に携帯の暗証番号をさくさくと解き、ラインを覗いた。
するとそこにはさっきまで女の子と何度もラインをしたやりとりが残っていた。
その女の子とは、以前にも浮気していた前科持ちの子だった。
私と二人でお酒を飲み出した時間帯からずっとその女の子とラインをしていた。
「今日は終電をなくしたからネカフェに泊まってるんだ。」とその女の子に嘘を言っていた。
「早く会いたいよ。でもそっちは彼氏と一緒に住んでるもんな。会えなくて辛い。」
うちの彼氏は独り身の設定で、その女の子とラインをしていた。
でも女の子には一緒に住んでる彼氏がいるらしかった。
女の子も女の子で「この前、キスマークつけたでしょ?バレないようにするの大変だった。」とか言ってる。
客観的に見ても、このやりとりってなんなんだよとしか思えなかった。
この文章はどう考えても浮気以外の何者でもない。
キスマークつけてて浮気してないとか言えないだろ。
ラインの文章を睨みつけるように見ていたら、頭に血がどんどんのぼっていくのが分かった。
私の隣でよくこんなラインをしていたものだ。
浮気はバレないようにやってくれ。
せめて私といないときにラインしてくれ。
こんな分かりやすく浮気してますよサインを出されても、気づかないふりをしろとでも言うのか。
以前も浮気された女の子に「お代わり浮気」をされてしまった私はありえない域の怒りのマグマが沸沸と煮えたぎり、彼と女の子のラインページからそのまま女の子にラインを送った。
「あんたたち、まだ続いてたんだね。」
そう送ると、そのまま何もなかったかのように彼の隣で私は眠りについた。
これがほんとうにあった怖い話。
それから私は人の携帯を覗くことはなくなった。