一問一答!建築のキホン⑦
このnoteでは、『月刊不動産流通』の過去の記事を紹介しています。
今回は、「一問一答!建築のキホン」。
建物の構造、関連法規の基礎知識を、(株)ユニ総合計画の秋山英樹氏がQ&A方式で分かりやすく解説するコーナーです。
『月刊不動産流通2019年8月号』より、「既存住宅の仲介の際、お客さまからシックハウス対策がされているか聞かれました。どのように説明すれば?」を紹介します。
Q 既存住宅の仲介の際、お客さまからシックハウス対策がされているか聞かれました。どのように説明すれば?
A 築後5年以上経過した物件であれば、ホルムアルデヒドなどの揮発性の有害物質はほとんど残留していません。また、現在使われている建材の多くは対策がなされています。
化学物質を発散する建材などの使用を規制
シックハウスとは、建材、家具などから発せられる有害な化学物質によって、住む人の健康に害を与える住居のことをいいます。ホルムアルデヒドや、VOCと呼ばれる揮発性の有機化合物は、いずれも人体がアレルギー反応を引き起こしすい物質といわれています。昔の建物は気密性が低いものも多く、自然に発散されていましたが、住宅の高気密・高断熱化が進み、併せて新建材と呼ばれる化学物質を含有した建材が多く用いられるようになると、そこから発散される化学物質で室内の空気が汚染され、居住者の健康に悪影響を与えるようになりました。
そこで2003年に建築基準法が改正され、ホルムアルデヒドを中心とした化学物質を発散する建材・接着剤などの使用規制と、24時間稼働の換気設備の設置が義務付けられました。建材は、ホルムアルデヒドの発散量に応じて等級を明らかにすることが必須となり、最も発散量が少ないものは「F☆☆☆☆(エフフォースター)」と示されています。
建材問題がない場合家具に注意
現在では、ほとんどの建材・接着剤が同規格に適合しているので、ホルムアルデヒドの含有量は非常に少なくなっています。また、法制化される以前に建った建物であっても、揮発性の化学物質は5年前後でほとんど揮発し、残留濃度はきわめて低くなるため、基本的には人体に害がないと答えてよいでしょう。しかし、前述した24時間稼働の換気設備が導入されていない場合が多いので、次のような注意が必要です。
法制化後では、建物の内装そのものには問題が少なくなったのですが、新規で購入する家具などには注意しましょう。なぜなら、家具などには化学物質の使用規制がないからです。子供が生まれると、おむつや小物の整理のため、価格が手頃なカラーボックスを購入することが多いですが、廉価なカラーボックスには大量のホルムアルデヒドが使用されていることもあります。
少しの間だからとりあえず手頃なものを、と考えがちですが、おもちゃなどと共に注意された方がよいでしょう。下の図表で、住宅の中に存在する主な化学物質の発生源について記しておきます。
化学物質過敏症には別途対応を
しかし、建材などに同法が定める規制が適用されているからといって、住む人にまったく害がないとは限りません。
一般的にシックハウス症候群の人は、化学物質などで汚染された部屋に入ると、めまい、吐き気などを発症しますが、原因となる部屋を出ると症状が治まるようです。
一方、似たような症状で、「化学物質過敏症」というものがあります。化学物質過敏症は、環境中に存在するごく微量の化学物質に反応して、発汗異常や手足のしびれ、不眠、うつといった精神障害など、さまざまな症状を訴える病態とされていますが、その原因については未解明な部分が多くあります。シックハウス症候群と同一だと誤解されがちですが、「F☆☆☆☆」の建材や、自然素材の建材を使用しただけでは対処しきれない重度の症状であるため、別の対応が必要となります。
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今日、さまざまな健康建材が市場に出回っています。木炭、珪藻土、漆喰などの壁面塗料のほか、熱処理によって木炭の微細な孔を発達させた活性炭や、粘土鉱物を焼成して作った内壁素材などは、化学物質の吸着効果だけでなく、調湿・脱臭作用もあるのが特長です。24時間換気が付いていない物件では、こうした健康建材を使用したリフォームを提案するのもよいでしょう。
しかし、その効果は材料の質より使用量に比例すると言われており、わずかな量では十分な効果を得られません。リフォーム提案の際は、その点に留意しましょう。
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