【最新号試し読み】月刊不動産流通 24年6月号
「月刊不動産流通2024年6月号」が発売となりました。
その中から、
・特集「官民連携で進む 空き家対策Ⅳ特措法改正でどう変わる 」
・流通フラッシュ「地域の再生、課題解決。キーワードは『共創』」
の試し読みを掲載します。
試し読み①(一部掲載)
特集「官民連携で進む 空き家対策Ⅳ特措法改正でどう変わる 」
深刻化する空き家問題の解消につなげるため、2023年12月13日に「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」(改正空き家特措法)が施行された。「特定空家」としないための空き家の適正な管理や有効活用の拡大を目的とした改正で、新たに「管理不全空家」を定義したほか、官民が連携して取り組むための「空家等管理活用支援法人」の指定制度が創設された。本特集では、自治体と支援法人が連携した空き家への取り組みと、法改正により現れた新たな動きなどを紹介していく。
行政担当者に聞く
空き家活用で「まちづくり」。
支援法人は活用・流通の担い手に
◆「特定空家」化を防ぐため
管理しやすい環境づくり
2014年に成立した空き家特措法は、倒壊等の危険がある「特定空家」への対策を念頭に、指導や勧告、行政代執行ができるよう法律が整備された。改正法では、空き家の増加に歯止めがかからない中、特定空家化を防ぐ観点から、そのまま放置されると特定空家となるであろう空き家を「管理不全空家」と定義し、特定空家にならないよう管理や利活用がしやすい環境を整えることを目的に法律を整備した。
また、空き家対策を「まちづくりのための手段」として捉えたこともポイント。その一環として制度化した「空家等活用促進区域」は、空き家活用を促進する地域を市町村(特別区含む)が指定し、都道府県と連携して規制緩和などで支援するというもの。「空き家の店舗への改修を支援することで、商業集積と新たなにぎわいを生むなど、その自治体が目指すまちづくりを実現するために、空き家という“資源”の活用を促します」と語るのは、国土交通省の担当官として、改正空き家特措法の中身を検討してきた前・国土交通省住宅局住宅総合整備課企画専門官の深田大寛氏(現・奈良県県土マネジメント部リニア・地域交通課課長)。
(中略)
◆緊急性ある空き家を絞り込み
値が付かない空き家も流通へ
2005年、旧八日市市など5市町が合併(翌年に2町が追加)して誕生した滋賀県東近江市。これまで所有者が希望する空き家の空き家バンクへの掲載など、各種の空き家対策を講じてきたが、「あまり効果的な対策を打てず、空き家バンクの成約も伸び悩むなど、手探り状態が続いていました」(東近江市都市整備部住宅課空家対策推進係長・西井憲之氏)。
そこで同市は21年、同市の空き家対策に関する諮問機関である空家対策推進協議会の構成員を中心に、空き家対策に関する各事業を実行するための組織(一社)東近江住まい創生センター(代表理事:大橋恭介氏)を設立した。(公社)滋賀県宅地建物取引業協会の会員企業や、弁護士・司法書士・税理士など、同市で展開する士業が会員として参加している。
設立を提言した大橋代表理事(滋賀宅協常務理事)は、「諮問機関としてだけではなく、民間事業者も汗をかいて空き家対策を進めなくてはならない。宅建協会以外にも弁護士会や司法書士会などの専門士業団体や、商工会議所と商工会という地域の経済団体とが一致団結して取り組むべきだと考えました」と振り返る。
21年度時点で、同市内には1700戸の空き家が存在しており、全住戸数に対する空き家率は20%弱。これは、市内の自治会からの通報を基にしたデータで、実際はこれよりも多くの空き家があると推測している。「ただし、これ以外の空き家があったとしても、近隣に不利益を与えているものではないと考えられます。急ぎ対応しなければならないのは、この1700戸。これらについて市が調査し、空き家の状態を問わず流通を促すことで、近隣住民も安心できるようになると考えました」(西井氏)。
◆市内宅建協会会員の
約半数が協力
通報を受けた物件については、市の職員がまず現地を調査し、建物の劣化の確認や周辺住民からの聞き取りを行なう。さらに所有者の意向を確認した上で、売却や賃貸を望んだ場合には空き家バンクに登録する。この際、空き家の状態は問わない。登録した時点で、物件の属性や立地などを見極め最も適任と思われる協力不動産会社に依頼する。
登録に関する所有者の意思確認、諸条件の確認・調整については市の職員とセンターに所属する士業のメンバーが行ない、不動産流通の実務については宅建協会に所属する地域の不動産会社が担う。「センター立ち上げ当初に宅建協会の会員に説明会を行なったところ、市内に所在する宅建協会会員のうち、半数弱の20社が協力を申し出てくれました」(大橋氏)。
◆空き家保有に特化した
団体づくりも模索
地方圏の空き家には、未接道などの理由で再建築が難しい物件や、老朽化などの理由で値が付かないような物件も多い。「空き家の再生や流通は社会的な意義のある仕事ですが、利益を出せなければ事業として取り組むことができません。極端に安値のものや値段が付かない物件でも、最低限の仲介手数料を確保し、ビジネスとして成立するよう、センター側で意思確認や条件調整を行なっています」(大橋氏)。
同センターが設立されて以降、空き家バンクの成約件数が急増。買い手の多くは移住希望者で、設立以前はほとんどなかった成約が21年度には11件、22年度は15件と2桁に達した。23年度はさらに増えて23件が成約するなど、成果は上がってきている。
24年2月には、同市が同センターを空家等管理活用支援法人に指定。西井氏は「まずは所有者の意識改革が重要。そうした意味では、4月にスタートした相続登記の義務化や、管理不全空家の定義はその追い風になると考えています。市としては、値が付かないような老朽化した空き家でも流通しやすい仕組みをつくることで、あらゆる空き家が流通できる環境をつくっていきたい。そのためにも、同センターが持つ民間の知恵に期待しています」と語る。
また、同センターも空き家対策を自治体に積極的に提言していく方針だ。空き家の所有者も高齢化しており、相続が発生した後は相続人との再度の意思確認や条件調整などの手間が掛かる。「そうした事態を防ぐためにも、センターの関連団体として『空き家等を保有する団体』を作ったらどうかと考えています。一度所有権をその団体に移すことで、管理や流通促進にプラスへと働くはず」(大橋氏)。
このほか、
和歌山県橋本市×(一社)ミチル空間プロジェクト
新潟県三条市×(一社)燕三条空き家活用プロジェクト
東京都調布市×NPO空家・空地管理センター
の取り組みも紹介します。
試し読み②(全文掲載)
流通フラッシュ
「新たな価値創造へ。まちの『新陳代謝』が加速」
時代と共に都市・まちづくりも変化。
アイディアにより独自の魅力創出を
ビジネスを展開しやすいまち、豊かなコミュニティが育まれるまち、災害に強いまち…。時代の変化に伴い加速しているのが、都市やまちの多様な“新陳代謝”だ。
JR「大阪」駅前では、梅田貨物駅跡地の再開発である「うめきたプロジェクト」が佳境を迎えている。約24haの計画地域にオフィス、ホテル、MICE施設、中核機能施設、住宅、広大な都市公園等を整備する大規模再開発で、9月には第2期開発区域の「グラングリーン大阪」が先行まちびらきを迎える。すでにまちびらきしている「グランフロント大阪」により、人流を含めたさまざまな変化が地域に生じているという。
新線の開業により生まれ変わるまちもある。 2005年のつくばエクスプレス開通に伴い沿線での再開発が進められ、千葉県流山市では、「流山おおたか
の森」駅前の整備等により、暮らしやすいまちが創出された。同市が子育て世帯を中心とする人口流入に向けて取り組みを進めたこともあり、6年連続で市として人口増加率全国1位を獲得。10年間で約5万人も人口が増加し、首都圏屈指の人気住宅地へと生まれ変わった。
24年地価公示では、半導体メーカー工場の進出が決まった地域やインバウンドに人気のある観光地に加え、こうした再開発やまちづくりによりポテンシャルが向上したエリアでも、地価が大きく伸長した。
社会構造の変化は今後も進み、それに応じてまちには新陳代謝が求められる。再開発と共に地域独自のアイディアと実行性が加われば、まちは時代や社会の要請に応える変化を遂げることができるだろう。
その他さまざまなコーナーが有ります
「月刊不動産流通2024年6月号」には、この他にも不動産実務に関わるさまざまなコーナーを掲載しています。
・宅建業者が知っておくべき『重説』に必要な基礎知識Q&A 〜建築編
「用途地域の調査ポイント」
・関連法規Q&A
「『改正障害者差別解消法』について教えてください。」
・一問一答!建築のキホン
「高齢者用の住宅は、すべてバリアフリーにすべきですか?」
・不動産登記の現場から
「証明書の注記について」
・適正な不動産取引に向けて―事例研究
「予定された借地契約を締結しなかった借主に対し、
契約締結上の過失があるとして、貸主に対する損害金の支払いが認容された事例」
などなど…
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