自邸建築までの道 2.土地探しから契約、プランニングへ
2019年冬に再度探し始め、戸建て賃貸に絞っていくつか物件を見てまわった。
築年数が古い建物が多かったためか、床が傾いている物件、リフォームされて中途半端にきれいになっている物件など何かしら気になることがあるのは、賃貸では付き物だろう。その中で、築古ながらいい雰囲気を醸す改装可能な戸建てに決めた。
山間の自然に囲まれた閑静な住宅街にあり、近隣が気にならなかったことが決め手だ。
庭が広く、延べ床面積も150平米程度と夫婦二人住まいにしては広過ぎたが、なんだかとてもワクワクした。
早速採寸して図面を起こし、改装内容を検討した。住むだけでなく、店舗などの二次利用も検討していた。
それなりの費用を掛けてリノベーションしようと思い、ある程度計画も固まっていた最中ではあったが、引続き物件購入のためのリサーチは欠かさず行っていた。
中古から新築用の土地にシフトして探していたところ、賃貸で住む場所と同じ町内の土地が出てきたので、すぐに不動産屋に問い合わせをし、土地を見に行った。
更地にする前で既存の建物があったため敷地の全体像が見えなかったが、建物の中に入れたので周辺環境の見え方はある程度想像できた。土地の形状が台形で山に面している難易度の高い土地だが、土地面積は50坪程度とちょうどよく価格もこのエリアとしては安かった。
自分達の希望に合う条件の土地を探すのは非常に難儀なので、このタイミングで出てくるのかと驚く。そこまで眺望が望めるわけではないが、山に囲まれた感じが心地いい。周囲は10世帯もないエリアの行き止まりなので、静かで人通りもなく、穏やかに暮らせそうなイメージが出来た。
「土砂災害警戒区域」というのがネックだが、自然豊かな場所と危険は隣り合わせであり、安いにはそれなりの理由があるということか。
他にもいくつか近い金額帯の土地を案内してもらったが、分譲地や整形地には全く惹かれなかった。
悪条件にワクワクしてしまうのは、設計者あるあるだろう。
画して賃貸物件のリノベをするつもりで計画していたが、すぐに新築の図面作成に変わり、プランニングを進めた。ある程度建物のヴォリュームが入ることは確認出来たので、申込みを入れた。工務店で概算見積りを出してもらい、銀行の事前ローン審査も行い、契約へとトントン拍子に進み、なんと賃貸物件に引っ越す前に土地購入を済ましてしまったのだった。
その後は賃貸物件へ引越しの準備をしつつ、新築住宅のプランを描き続けた。
2019年春に程なくして引越を済まし、鎌倉暮らしが始まった。家の前の桜が咲き、この街に歓迎されているように思えて、嬉しかったのを憶えている。
それからは色々なところに行った。鎌倉の熱い夏が訪れ、海の家、山歩き、花火大会、盆踊りと夏を満喫した。
この間もずっと自邸のプランを考え続けたが、なかなか納得のいくプランが出来なかった。箱型やL字型など様々な家の形を考え、建物をどのように配置するか悩んだ。「土砂災害警戒区域」であることも足枷となった。
大事なことはこの自然豊かな周辺環境をどう活かせるかだ。それはどれだけ敷地のポテンシャルを引き出せるかということ。
敷地に何度も通っては、悩み続けた。
プランの数は30を超え、諦め掛けた頃、いつも通りプランを描き、ペンを走らせ、そして閃いた。
建物の形状を敷地の形なりに這わせるように外形を三角形に描き、法規や敷地条件、周辺環境、視線の抜け等に合わせて角を削り落とし、六角形の外形に中庭が三角形になる現在の形の原型が生まれた。
「これだっ!」と思える形がやっと出来た。
熱い思いを妻にプレゼンし、熱量で納得をもらう。(今思えば、尖った形が故に具体的にイメージするのは難しかったかもしれないが、そこはもう勢いで。。。あとは察してほしい)
そこから内部を検討しブラッシュアップを繰り返した。途中、突発的に二世帯住宅の話が出て来て一応検討したが、とても窮屈で何の為に家を建てるのかわからないため、丁重にお断りした。
プランが固まり、模型まで出来たのが2019年秋口だった。