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自閉症fuco:両親のパートナーシップ変遷


障害のある子供を育てる時、同志である夫婦の関係性はとても重要。だから、今回はそのことについて書いてみようと思います。

ウチの夫は「イクメンで、家事ができて、家庭的」から程遠く、大恋愛もしてません(笑)。それでも結局は最善の人生になっていたんだなぁと最近は思うのです。



始まりは10代、偶然でしかない隣人愛から始まった


ヤツ(いつも通りこう呼びます)は大学の吹奏楽部同級生。私たち全国大会常連校だったので、学生生活は部活一色。毎日毎日練習で、ヤツとは学部も楽器も違ったのですが、アパートが近くてよく一緒に帰っていました。

ちなみにヤツはチューバ、私はフルート


やんちゃな先輩たちが、よく夜中に襲撃してくるんですよ、私のアパートに。「お前の部屋で今からスイカ割りする」「今から部屋で流し素麺するぞ」って(笑)…。

するとヤツに電話して「すぐ来て」と呼び出す。飲み会や練習で私が潰れる、ヤツが呼び出されて背負って帰る、そんな関係でした。家が近くなかったらお世話にならなかったはずで…(笑)。

とにかくぽやーっとしていて、とびきりバカだった。財布落とすわ、歩いてて溝に落ちるわ、人生のスイッチが入ってなくて、長所が全然なかった。試験前もずっと寝てて、当日の朝もの凄い勢いで暗記して間に合ったりして、妙に頭は良かった。ただ、フィーリングがあって、金銭感覚など価値観も近くて、一緒にいて楽しかった。

ヤツから見た私「学生時代」

ヤツは部活の学年リーダーみたいなことしてたのだけど、いつも少し冷めたところがあって、その時もあまり流されない人だったと思う。試験前は勉強せずにどの授業を落としても進級できるかの計算ばかりしていて、せこかった。一人暮らしの部屋が汚部屋だった…

私から見たヤツ「学生時代」


卒業後は遠距離でしたが、毎日のように電話して、月一くらい新幹線に飛び乗って行き来。そんな時、私にアメリカ支社(音楽関係の映像制作会社)をつくるのでいかないかという、恐ろしい打診があり、泣きついて寿退社したのが出会ってから7年目です(笑)。

アメリカに行くか、ヤツと結婚するか、二択で人生決まったんですね。結局アメリカは未だ行ったことがありません(笑)。

うちの親に挨拶にきたら
とんでもない料亭によびだされたとこ(笑)



セカンドステージは人類愛多めでスタート


探したらなんとか(笑)
誓いのキスが無理で握手した結婚式


結婚した頃、ヤツは何ヶ月単位の海外出張が多くて、私も実家に帰ったり、派遣社員したり、資格取得のスクールに通ったり気ままに過ごしてました。妊娠した時、実はまだヤツのことを名字で呼んでいて(笑)。子供ができて、二人はもう他人ではないんだと衝撃でしたね。

結婚した時、披露パーティでも先輩たちに「頑張れよ」って励まされたり、向こうの親に「返品不可」と言われ、不良債権つかまされた感はあったが、「バカでもいい、逞しく育ってほしい」と思っていた。

ヤツから見た私「結婚」

新婚旅行の時顔が似ていると言われ、いたく気を害したのを覚えている。7年一緒にいて結婚したので、熟年夫婦のようでトキメキ感はゼロ。夫に娘が気に入られるよう実父が高いワインを毎月送ってきていて、週末はよく映画観ながらワイン飲んで昼寝していた。呑気だったのは否定できない…

私から見たヤツ「結婚」




母になって人生スイッチが入った私と、変わらないヤツ


里帰り出産は一度もしなかったので、第一子fuco:を連れて退院する時、まず紙おむつの使い方がわからないし(産院は布おむつだった)、ナースコールできないと心底ビビりました。崖っぷちでやるしかないと思ったんでしょうね。私よ、おめでとう(笑)。

一方ヤツは父という役にシフトすることもなく、自分らしさを第一に(笑)その後も過ごされます。3人子供が生まれても貸漫画屋でおばさんに「兄ちゃん、クリスマスはバイトね?」て言われてたらしいですから。

fuco:が生まれて最初の誕生日
「粉から作る中華料理」という
料理本をヤツからもらいました…


また早々「自分の時間がないと無理」と訴えてきたので、いつも個室を確保し、帰宅後は一人テレビ観たり漫画みて就寝されています(こっちは夜泣きと喘息発作の子供達で発狂しそうでした)。一言でいうとヤツは家庭内で学生時代と変わりません。



ヤツの家事&育児スペックはこんな感じ


掃除はしなくても死なないと思ってて、料理は自分が食べたいもの限定でレパートリー数品。作るくらいなら断然買いに行くし、ジャンクフード大好き。

現在ヤツが担当しているのは、夜洗濯終わったのを(回すのは他の人)干す、(私がまとめた)玄関にあるゴミを出す、夜米を洗ってセットする、以上!

ちなみに息子の入院が多かったため、小学生低学年から次女にしっかり料理を教えてあり(何年も朝のご飯と味噌汁担当)、fuco:も洗濯干しやたたみ、お風呂掃除毎日するので、娘たちが圧勝です。

ある日の次女飯、冷蔵庫みて作れる人!偉大!


療育も通院も基本的に私一人で、3人を抱いておぶって手を引いて行って家事も全部していました。とはいえ、元々むいていないこともよくわかっているので、ヤツなりには家族生活頑張ってきたと思います。




家庭でのそんなヤツに我慢できない時、どうしたか


不満は不満ですよ、勿論!でも、いちいち腹をたてるエネルギーもないし(常に問題勃発なので)、彼自身を教育しようという余裕も全くないです。

息子がヤツになんで結婚したか聞くと
ヤツ「好きだから」と答え『正気か!!!」と言われてた…


よく私のことを頼り上手だと言っていただきますが、夫がそんな感じだと、友達や地域の人に全面的に頼らないとどうにもならないわけなんです。一言でいうと、自分の中で折り合いがつくくらいいい感じに諦めました。期待しすぎず、求めすぎない。

ただ感情はヤツに全て吐き出す。ヤツにだけはどんだけ毒も悪も吐き出してもいい。そういう重要任務を暗黒の子育て時代、彼は担っておりました(笑)。



お互いに不満はあるに決まっている!


とはいえ勿論彼にも不満がいっぱいあります。仕事の愚痴は早々聞かないと宣言したし、会社で働いて家族を養ってくれていることへの感謝も薄めですから。

私は私で子育てに奮闘しながら転勤についてまわり、ヤツもヤツなりに仕事を頑張ってきたと思うのです。結局お互いに必死で自分が自分がになりがち

意外にもヤツは家では
とても喋ります、私よりはしゃぎます(笑)


今初めて同じ土地に10年以上住み、子供たちが大きくなっていき、fuco:のことも相談するようになって、やっとここが相手に対して足りてなかったなぁ(まだ反省にまではいたってません…)と思ってきたような気がします。夫婦はお互い自分の鏡ですからね!




お互いの「こんなところがあって良かった」を考えてみた

fuco:が生まれて人生スイッチが入った私と、マイペースに自分を保ってきたヤツ。それぞれ不満を抱えつつ、何とか付き合い始めて33年、結婚26年経ち、一緒にいることは当たり前ではないと思う年齢になってきました。

とにかく前向きで馬力がある。死別で一人暮らしになった人たちを訪ねて気遣ったり、人情に厚い。そして、自分には全然ない社交性が凄い。これで色んな人に助けられてきた。ただ、出会った頃がとにかくぼーっとしていたので、三年寝太郎が起きたみたいに、まだまだ頑張れるだろうと思うし、どうしても最初の印象のダメなやつと思ってしまう(笑)。それはもう、すごい成長した!!!

ヤツから見た私「親になってから」

なんだかんだ言っても結局人として信用できる。ニュートラルなものの見方をしてくれるので、障害を残念がったりしないのも良かった。価値観は自分たちで実際に経験していきながらつくっていくものだと思う。マイペースさにイライラもするけれど、彼自身に無理がないので、家族全体にそんな雰囲気ができていいチームになった。あと色の勉強をして仕事にしたい時も全面協力して応援してくれた!

私から見たヤツ「親になってから」
学生時代、ソーセージしか焼けなかった
私も色々できるようになりました(笑)




もしお互いと結婚してなかったら、どんな人生だったか⁈


結局は「この子供達に出会えたからこれで良かった」以上に、私の人生はこれが最善だっただろうと思い至るので書き記しておきます。

まず人生の2択、ヤツとの結婚してなかったら、アメリカで(英語もできないのに)感動と刺激に満ちた、大好きな音楽関係の仕事を続けていて、波乱万丈だったと思う。その業界の方って自由奔放なんで、多分国籍も父も違う子供たちを産んでいたはず(笑)。ずっと変わらないヤツと、10代から変わらない関係性だったので、どこでどんなことがあってもぶれない人生を送らせていただいた(そう思うと平穏はこれが最上級!笑)。

私からみた「ヤツと結婚してなかったら」

多分相手が違っても結婚はしていて、子供もいた。その時にfuco:みたいな子供が生まれる可能性もあるはずだけど、その相手が今のように前向きに明るく子育てをしてくれたか、家族皆んなで笑い合って暮らせていたかなぁと思うと多分そうじゃなくて、苦しかったり辛かったんじゃないかと思う。そう考えると今はとても楽しい毎日。

ヤツから見た「アイツと結婚してなかったら」
fuco:だけでなく、
妹も学校生活合わなかったし、
弟超病弱でもれなく均等に手がかかりました!
今は皆んな心身健やか、
過剰に自己肯定めちゃ高く育ってます(笑)




これからのパートナーシップはどう向かっていくのか


私たちは重度の障害があるfuco:の親ですが、その前に夫婦でもあり、個人でもあります。子供達のために全てを優先せず、普通に夫婦としてもいい形でありたいし、まずはお互いが自分であることに真剣でいたいと思います。

元々ヤツは「自分の時間」を大事にする人、私は「誰かとの時間」に幸せを感じる人。それはどっちもアリ!今回noteを書くにあたって、何かができる「can」でなく、お互いがある「be」に価値をおき、ずっと一緒にいるのが、我が家の夫婦観で家族観だなと思いました。

それでも、今日も明日も大人気なく、家事分担や感謝の足りなさに飽きもせず喧嘩するでしょう(笑)。でもお互いにわかっているのです、きっとこれが心底ラッキーな人生だと。

おめでとう、20代の娘が椅子がわりに
膝に座ってくれるなんてなかなかないよ(笑)


今回も長文にお付き合いありがとうございました。最近のニュースと共に、次回は11/15fuco:誕生日にお会いいたしましょう!


佐賀県肥前精神医療センターに
原画寄贈させていただきました
お友達の全障スポのレースの応援に!


#自閉症 #知的障害 #アート

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