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中国で食材と戯る。(25) 無花果

( 私が中国という国、土地で扱ってきた食材たち )
  ある時は店の為、ある時は自分の食事・好奇心の為。
ある時は、海外からの輸入物、日本からの輸入物、もちろん現地の魚、肉、野菜。
ある時は ”試行と錯誤”、ある時は ”創意と工夫”、そんなこんなで続けてきた、自身の調理と撮影。
仕事であり、趣味であり、日常であった 私のライフワークアーカイブです。

寄稿にあたっての自身のコメント 



” 無花果 (イチジク)               2021.9

アラビア半島から世界に広がったという果物。
无花果 wu hua guo ウーファグオ "(无は”無”の簡体字)、中国で使われたこの呼び名の三文字に、日本で” イチジク "と熟字訓をつけたらしい。

字の如く、花を付けないように見えるが、本当は花が空洞上の実の中に無数に咲いているのだという。珍しい生態を持つ植物、食べた時のフワッとした柔らかい食感はその花達に起因するらしい。

9月 まさに旬のもの

  2021年それは秋が近づくある日、コロナ禍で私がカウンター予約だけの営業をしていた頃。
時折訪れた、常州の病院に勤める女性の看護師さん。SNSを見ると日頃美味しいものを求めて良さげなレストランを食べ歩いていらっしゃる美食家さんのようだ。
そんな彼女が” 風天 ”のカウンターで食事をし、会話する中で教えてくれた。

『 你知道 无花果吗? 无花果的 "天妇罗" 很好吃的 !
『 ニージダォ ウーホァグオマ ?   ウーホァグオダ " ティエンフールオ " ヘンハオチーダ ! 』
=『 無花果ってしてる? 無花果の天ぷらはすごく美味しいよ!』とのこと。なんとなく面白いな、と想像しながら会話を終えた。

” 無花果の天ぷら "

 次の日だったか、その次の日だったかの午前中。
自宅のご飯材料を調達に市場に行くと、早速 果物屋にならぶ
" 無花果 "を見かける。それまで気にかけていなかっただけか、或いはこの年流行的に売り場に並んだかはわからない。長年中国にいて見かけ覚えがなかったので驚いて買って帰った。

 ちょとした会話からだったが、聞いて 興味は持っていたので試すことにする。

よく見ると確かに多くの花が身の中に。


 果物だから当然汁気があり、糖分もある。一口に切って揚げるとまぁまぁ。

 果汁の流出を防ぐために、塊で揚げてみた。

見た目にインパクトがある。

割ってみる。

ええ感じや。


 見た目がどうこうというよりも、味的、料理としての価値として、
丸揚げを割るのが圧倒的に上である。

 カリッとした衣と、柔らかでクリーミーにすら感じる食感。そのコントラストがたまらない。優しい芳香と、適度な甘みと酸味、” 確かに 美味しい! "。
私自身が大ハマり、大絶賛である。暫くない驚きをもった感動があった。

塩も天つゆも要らない。

米の友( おかず )にもならず、酒のアテ( つまみ )にもならない、そしてデザートにもなれない " 無花果の天ぷら "。
敢えてポジションを与えるならば、” 箸休め "。料理の合間を司るべきだ。
揚げ物で ハシヤスメ?
他の料理、素材に影響せず口の中を整えてくれそうな気がした。直感の話。


果物。デザートや箸休めなんてカッコつけなくていいか、
良い " おやつ " として是非試してみてもらいたい一品。本当に美味しいから。


                               以上


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