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ゆらがない気持ち

新しい光。
遠く遠くから、やってくる光。紫の色から、少しずつ引き寄せていく。美しいなだらかな丘の上にカカシが立っている。
「どこにいくの?あなたは、この村の外れの中のあたりにいるものね。ここから先は、とても厳しい冬が待っています。あなたは春の訪れを村にもたらそうと言うのでしょう。良い心ですね。あなたはあなた自身と村の人たちの幸せを笑顔を何よりも願っている」私はにこやかに空を見上げる。このカカシはなんだか好きだ、と思った。赤い鼻はニンジンに似ている。「君は親切な見守り人だね。きっと、君にはいいことがあるよ。だって、君はいい人だよ。いいカカシだ。似ているよ。僕の家族に。もういないんだ。病気で死んでしまった」私の言葉を真剣な表情で聞いていたカカシ。手をあげれないけれども、あげたそうに声を上げる。「うん。知ってるよ。私はあなたのことをよく知っている。だから、どうか無事に歩いて行って、無事に帰ってきてね。私はそれだけ願っている。この畑が鳥たちに荒らされても、私は待っている。この畑が、畑じゃなくなっても、私は待ってる。あなたの帰りを」
「ありがとうカカシさん。僕は無事に帰ってくる。約束するよ」そうして、私はモリビトに別れを告げて、丘の下から手を振った。カカシはずっとずっと姿が見えなくなるまで僕を見送ってくれた。

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