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水彩画研究ノート 【コチニール色素(カイガラムシ)で絵を描いてみた】補足

こんにちは。暑い日が続いていますね。皆様、お元気でしょうか。
本日も水彩画研究ノートのお時間ですよ。

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前回、コチニール色素で絵を描いてみた という実験をしまして、今回はその補足記事です。


コチニールで描いたバラ

1.色が沈んでいく動画

コチニール水をそのまま水彩紙に塗ると、色が沈んでいくという動画をXに投稿しました。


2.書籍 完璧な赤

たかが虫、されど虫。コチニールに関する面白そうな本を見つけましたので早速読んでみました。

「完璧な赤」 著者 エイミー・B グリーンフィールド 

要旨「BOOK」データベースより

1519年、新大陸の地に降り立ったスペインの征服者たちは、市場を埋め尽くす鮮やかな赤に目を奪われた。光り輝く色彩はまさに生命の炎であり、魂を揺さぶる情熱の色。
これこそヨーロッパの人々が、そして彼らの王が権威の象徴として求めた完璧な赤だった。この色をヨーロッパに持ちこめば巨額の利益を生む―

スペイン人たちは製法から原料・産地にいたるまでを国家機密とし、完全なる秘密主義を貫いた。そのため18世紀まで原料の正体すら明らかにならず、イギリス、オランダ、フランスなど各国は躍起になってスペインの輸送船団を襲撃させ、新大陸にスパイを放った。
市民のなかには正体をめぐって全財産を賭けた大博打に出る者まで現われた。はたしてその正体は、植物の根?種?花?それとも動物の糞か、虫か?国家も民衆も翻弄し、ヨーロッパ全土を競争へと駆り立てたその染料の名はグラナ。

現在ではコチニールとして知られ、身近な食品や自然派化粧品などに使われている。大航海時代から現代まで脈々と受け継がれてきた新大陸の秘宝をめぐる息もつかせぬ歴史ロマン・ノンフィクション。


厚い。コチニールだけの内容なのに約400ページ。

ブックカバーのデザインやしおり紐の色にもドキドキする


3.読んだ感想

1回読んだくらいではこの本の素晴らしさを伝えることができませんが、
めえええーーーーーーーーーーーーーーっちゃおもしろい!!!!

私はコチニールカイガラムシに、こんな壮大な歴史があるなんて何一つ知りませんでした。本当につい最近まで、かまぼこの成分表をみて「あ、コチニール色素だ」くらいにしか思わなかったのですが…とんでもない虫でした。深堀りしてみるものですね。
コチニールで絵を描いてみた、自身の突発的な行動を称賛したいです笑。きっと、スペインから芸術の風Vientoが吹いてきたからに違いありませんね。

本の内容を簡単に言いますと、ヨーロッパにコチニールがやってくる以前にも茜、紅花、ポーランドコチニール、ケルメス、ラックといった、赤系の染料は存在していました。
しかし、それらから赤褐色や赤橙を作ることは簡単でも、真紅となると難しかったのです。(しかも色褪せるのが早かった)
ところが16世紀初頭、スペインのアステカ侵略により、ウチワサボテンから取れるコチニールという、色鮮やかな染料が発見されます。

昔から存在する赤は、黄みがかった赤で、コチニールは青みがかった赤というのが個人的なイメージ。(さらにコチニールは酸性、アルカリ性で色調を変えることもできる)

色鮮やかなうえに、強くて耐光性もあるコチニールは、まさに「完璧な赤」。そして当時、資金不足に気を揉んでいたスペイン王室にとって、貿易で「大金」を生む虫だったのです!!
コチニール発見後、この虫を巡って多くの国々、染色職人、海賊、画家、科学者、学者達などが翻弄されまくります。当時はグラナという名で、虫だと知らずに使っていたそう。

また、当時の画家の多くは、コチニールを自分で顔料化(レーキ化)させたものを絵の具として使っており、その技術に差があったとのこと。
巨匠レンブラントのように、300年以上経過しても美しい色を作り出せた画家もいれば、そうじゃない画家もいたそうです。
そして高価なコチニールをふんだんに使って絵を描くことは、まさに権力と富の証でもあったのです。

興味のある方、詳しくはぜひ本を読んで頂きたい。著者の祖父と曽祖父が染色職人ということもあり、昔のヨーロッパ染色業界についても詳しく書かれています。この本は最近読んだ本の中で一番おもしろかったです。映画にしてほしいくらいの内容でした。

それにしても古代メキシコで生まれ世界を揺るがした虫が、今現在、ここ日本でも私たちの生活に関わっているってすごいですよね!

以上、水彩画研究ノートでした✨

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