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今日もじじいの顔が良すぎて尊い・其の参

三日月宗近なんて全然欲しくないもんねー! 

 其の弐で語った通り、煌びやかな刀剣男士に惹かれて刀剣乱舞を始めたわけではないので、好みかそうでないかに関わらず早々に本丸に顕現して、慣れない審神者の私を助けてくれた刀剣男士達にある程度入れ込むのは、だいたい人の理として当然だろうと思われる。 
 ちなみに初期刀は歌仙だった。実は初期刀に全く好みのタイプがおらず、消去法で決めたが、それなりには可愛がっていた。のちに加州くんが来て育てていくうちに、あ、初期刀加州くんでよかったじゃん、と結構後悔した。 

 先入観で苦手と思っていたが育ててみたら可愛くなった、とか、あまり興味がないなあと思った男士は育ててもやっぱり愛着が湧かないこともあった。良い審神者ならきっと皆を等しく愛せるのかもしれないが、私はめっぽうダメ審神者なので、あからさまに贔屓をしてしまう。我が本丸に来ればわかると思う。レベルの低い刀剣男士が、必ずしも後から来た子たちとは限らない、というのが肝だ。

 しかし審神者としては誰でも、三日月宗近には多かれ少なかれ特別な思いがあろう。まず、彼が刀剣乱舞のアイコンである、ということ。SSSSRの天下五剣が一振りであるということ。持っているだけで誉れというのは、戦国武将と同じかもしれない。うちの本丸には三日月宗近がいる、と誇示されたら、もうそれだけで演練に負けたような気がしてしまう。

 彼に対する私の思いはかなり複雑だった。というか、今思うと若干拗らせていた。
外見もそこまで好みではないので、特に欲しくはない。来たとしても、育てないかもしれない。貰えるなら欲しい。周回までして欲しくもない。でも欲しいか欲しくないかで言ったら、欲しい。
(どっちやねん)

 先に挙げた、三日月宗近の素晴らしさ。 
 誤解を恐れずに云うと、その全てをむしろ私は苦手としていた。

 まずあの雅な感じがダメだ。おっとりしたじじむさい喋り方もダメだ。「わたくし」とか言いそうな王子、あるいは「麿は~でおじゃる」とか言い出しそうな平安お貴族様キャラかと思っていたので、余計に「違う!」となった。しかしだからといって予想通り「麿は」と喋っていたら、多分見なかったことにしていたと思われる。
 顔は確かにいいが、あまりに美しすぎて生活感がない。感情移入ができなさそうだと思った。
 和装キャラにもハマったことがない。そもそも時代物にハマったことがない。何もかもが、自分の今までの推しの好みと全く逆だったのだ。

 そして何より、長年のオタ女子としての取るに足らぬどうでも良い矜持が邪魔をした。つまり、三日月宗近とは刀剣乱舞のアイコンキャラ、看板男士なのだ。お客さん、とびきり可愛い子いるよ!とおびき寄せるための罠だ。ユーザーホイホイだ。
 オタ女たるもの、公式が穴掘って水張って待ち構えているまさにど真ん中にふらふらと歩いて行き、見るもわかりやすいその沼へむざむざ落ちるなんざオタクとしての誉れを失うようなもの! お家(どこの)の恥!!
 
 大抵のオタク女子は、イケメンを鼻先にぶら下げられても、ただのイケメンでは見向きもしない。そのイケメンに、何か背負ったものやら苦悩やら悲しみやら、とにかく顔以外の好みの部分がないと食指は絶対に動かない。
「ほらほらこんなの好きだろ?」とこれ見よがしに如何にもなものを出して来られると「ふーん、別にそういうのは好きじゃない。こっちがいい」とか言いたくなる。

………ディスるような真似は謝る。
だが思っていたことは本当だ。

オタクとはことほどさように面倒な生き物である。

 私だけか。
 さらに私の場合、一推しの刀剣男士が、自分が名物でも業物でもないことが実はコンプレックスで強さを誇示するためにがむしゃらに戦おうとする、愛い奴だった。
 あるじとしては言ってやりたい。そうだそうだ刀は強いのが良いのだ。綺麗なだけの鈍刀など、別に資材を投入してまでうちの本丸には要らぬわ!!

 とかなんとか思いつつも、やっぱり時々、思い出したように攻略サイトを参考に、優良配合なるものは試したりしていた(なんだ欲しかったのかよ)。だってさ、SSSSRだぜ。貰えるもんなら欲しいだろう。信長様だって将軍様にお強請りしていたという逸話がある(が、史実ではないかもしれない)くらいなのだ。

 それでも来ないものは仕方ない。
 しかしそのうち、私は本丸を訪れなくなった。二、三日放置しては時々訪れ、でもやり込めないのでイベントにもついていけなくなり、そして次第に放置の期間が長くなっていく………という、よくあるパターンである。ゲームどころではない状況や、刀剣男士が本命の推しではないということもあり、放置はそれから半年以上にも及んだ。
 スマホを見ると時々目の合うじじいアイコンに、何故本丸に来ないのかと言われているような気がして気まずい思いをしたものだ。それでも何故だかアイコンは消せずにいた。

 ある日そこへ「映画刀剣乱舞」制作決定のニュースが飛び込んできたのである。
 その時の自分のつぶやきを見返してみると
「女審神者は地雷、男審神者でも要らねえオリジナル要素も不要。ゲーム内の刀剣男士だけできゃっきゃうふふしてて欲しい」的なことを書いていた。
(まあ薄々御察しの通り、普段の私の属性は腐である。しかしこのnoteではそうした話は一切しない)

 ま、公開されたら観に行こう、としか思っていなかったし、刀剣映画関連どころか刀剣乱舞自体の公式アカウントを一つもフォローしていなかったため、その後何がどうなったのか全く情報がないまま、公開日の1月18日を迎えたのだった。今思えば、びっくりするくらい何の前情報もなく観に行った。映画のポスターも中吊りも、劇場に着くまで一度も目にしていない。正直、よくぞ観に行ったなお主、と自分で自分に誉をやりたいくらいである。

「映画刀剣乱舞」公開初日は金曜日。
 土日は仕事に追われて忙しく、月曜が休みだったのでその日は出かけて、何か映画でも観ようと前々から考えていた。最初は「アリー/スター誕生」の評判が良さそうだったので、ほぼそれに決めていたのだが、急遽予定を変更したのだ。とうらぶ映画の方がオタ仲間への話のネタにもなるだろうと、若干邪心もあった。

月曜の午後、人はまばら。人気コンテンツの映画化とはいえ、様々なアニオタゲーオタの心に無残な爪痕を遺しトラウマを植え付けてきた「実写化」だし、そんなもんだろうと思った。
流石にポップコーンを買うほど浮かれてはいなかったが、飲み物を購入し、その時を待った。

長い長い予告編が終わり、映画泥棒のコラボepisode1が流れた時には、初めて目にする2.5次元の不動くんと鶯丸、長谷部に苦笑した。ああこんな感じなのか、と。
しかしまさかこれが「一度目」と、回数を付けられるような鑑賞の「一度目」になるとはゆめゆめ思ってもみなかった。

重ねて言うが今回の映画について、詳細な予備知識はなかった。「刀剣乱舞ONLINE」の実写化である、ということ。脚本が、特撮マニアの方には絶大な信頼を置かれている小林靖子氏であるということ。出演する刀剣男士の中に、推し刀の一人である薬研藤四郎がいる、ということ。
また出演している刀剣男士俳優は紅白に出演した刀ミュの俳優ではなく、刀ステの俳優陣である、ということ。これは刀剣女子仲間からの情報で知った。しかし、どちらが出ていても私には見分けがつかなかったであろう。
それくらい、最近の2.5次元事情には疎かったのである。


長くなったが、今回はここまで。次回はいよいよ「映画刀剣乱舞」の三日月宗近について書く。本当に書きたいのはここからなのだ。 


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