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極私的おすすめのモノクロ映画(洋画)

はい、みなさんこんばんは。
吠えと申します。

なんと今夜、X(旧Twitter)のTLに『十二人の怒れる男』の文字を少なくとも3回見ました。

 1954年の映画ですよ!
 そんなことは一生に何回もないだろう、ということで、個人的に好きなモノクロ映画について書いてみたいと思います。
 かなりの部分を記憶に頼っているのでもしかしたら間違いとか多々あるかもしれませんが、膨大な映画やドラマが配信でみられる昨今、あえてモノクロの映画に触れる機会も少ないと思いますので、何かの参考になれば幸いです。

歴史に残る名作

カサブランカ(1942年)

 この映画は見たことなくても、「君の瞳に乾杯」の名セリフを知っている方は多いのではないでしょうか。
 「世紀の二枚目、ボギー」こと、ハンフリー・ボガートの代表作です。が、個人的には初めて見たとき、イングリッド・バーグマン演じるヒロイン・イルザがとにかくきれいで圧倒されたことのほうが印象深いです。
 最近また見直したんですが、よーく考えるとややつじつまが合わないというか、「なんでそうなるの?」という部分もあるにはあるのですが、娯楽大作であることを考えればそれもご愛嬌。哀愁をそそる名曲「時の過ぎゆくままに」のメロディーとともに、大人の恋愛ドラマに浸ってみるのはいかがでしょうか。
 ちなみに、この映画は第二次大戦下のモロッコが舞台なのですが、制作された年の状況をほぼそのまま反映しているので、歴史的な映画としても見ごたえがあります。

第三の男(1949年)

 本作のテーマ曲が流れた瞬間、お酒好きの方はエビスビールを開けたくなるかもしれません。そう、あのCMの曲、元ネタはこの映画なんです。
 第二次大戦後のウィーン、アメリカからやってきた通俗小説の作家ホリー(ジョセフ・コットン)は早速、仕事をくれるはずの友人ハリー(なんか似ててややこしい!)のもとを訪ねます。ところがなんとその数時間前にハリーは事故死してしまったと聞かされ、そのまま葬儀に参列することに。しかしそこには、さまざまな思惑からハリーの死の真相を探ろうとする人々がいて…。
 ミステリー調の作品ですが、アントン・カラスの奏でるツィターの旋律がなんとも哀愁をさそう、しみじみと「いい…」と言いたくなるような映画です。そして映画史に残る有名なラストシーンについては……ぜひいろんな方の感想を聞いてみたいです。

市民ケーン(1941年)

 すみません!3作目にして早くもアマゾンプライムだけの契約だと見れない(たぶん)やつの紹介です。でもこの順番じゃないといけないんです!
 なんでかというと、『第三の男』でハリーを演じたオーソン・ウェルズが監督・主演を務めた大傑作だからです。
 実在の新聞王、ハーストをモデルに、財界をのし上がった一人の男の人生を、そしてアメリカを描き切った一大ドラマで、「ハリウッドの映画関係者が選ぶ100選」的なやつで1位を獲得したこともあったはずです。たぶん。
 ひょんなことから莫大な財産を手に入れた一人の男・ケーンの、欲望、愛、友情、孤独…昔から伝記とかが大好きな自分にはたまらないテーマでした。
 ちなみにこの映画の脚本が作られるまでを描いた映画「マンク」がネトフリオリジナルで配信中ですので興味ある方はぜひ。なんとこの映画も全編モノクロです。

個人的に好きな名作

バルカン超特急(1938年)

 サスペンスの帝王、ヒッチコック監督がハリウッドに進出する以前、初期の傑作。
 「閉鎖空間で一緒にいたはずの人が突然いなくなり、しかも周りの乗客はだれもそのことを覚えていない」系の元祖(『フライトプラン』とかが後継にあたる)。
 のちのヒッチコック作品にあるような、ジトッとした恐怖・不安をあおるような演出はまだなく、とにかく謎解きありアクションありの痛快活劇でした。クスっと笑えるようなシーンもあって全然飽きないです。

現金に体を張れ(1956年)

 Amazonになかったです…なんでや…。
 『2001年宇宙の旅』『シャイニング』でおなじみキューブリック監督のハリウッドデビュー作。
 完璧かと思われた、競馬場の掛け金強盗計画。しかし小さなほころびから、犯行グループの中に不和が広がり始め…という物語。
 とにかく各シーンの画面がどれをとっても鮮烈で、やっぱり巨匠って最初からすごかったんだな…と感嘆するほかないです。お話もとにかく分かりやすいサスペンスものなので見てて退屈しないです。
 ちなみに現金は「げんなま」と読みます。ここテストに出ます。

M(1931年)

 『メトロポリス』などで知られる名監督フリッツ・ラングの怪作。
 ベルリンで少女ばかりを狙った連続殺人事件が発生。警察は昼夜を徹して捜査を行いますが手がかりなし。街の警備だけがいたずらに厳しくなる現状に、困ったのはスリやコソ泥などの軽犯罪で身を立てている者たち。なんと彼らは無能な警察よりも先に、自分たちで連続殺人犯を捕まえようと行動を開始する…!
 ありそうでなかったストーリーで、ところどころ少しおかしなシーンもありますが、全体的にはいたってシリアス。警察と犯罪者たち、いったいどちらが先に犯人にたどりつくのか? そしてその正体は? 
 中盤の捜査会議のシーンはいつ見ても「よくできてるな…」と感心させられます。

ビジュアルが鮮烈だった名作

ローマの休日(1953年)

オードリー・ヘップバーンが最高なため。カラー時代ですが、『ティファニーで朝食を』もぜひ。

カリガリ博士(1919年)

 とうとう無声映画の登場です。
 とにかく背景美術が不気味! 百年以上前にこんなに攻めたビジュアルの映画が作られていたなんて…驚きました。
 とにかく全体的になんかじわじわと怖かった記憶があります。そもそも、細部がよく見えない、映っていないというモノクロフィルムの映像が、現代のリアルな映像に慣れた目にはよけいに怪しく思えて、見ている間じゅうずっとえもいわれぬ不安に駆られていました。

イントレランス(1916年)

 えー、配信されてないみたいです。
 ただ、このジャケットにあるバビロンの門のシーンはスケールがデカすぎてめちゃくちゃビビったのでなんらかの方法で見てみてください。
 CGでも合成でもなく、単純に馬鹿でかいセットとおびただしい数のエキストラで撮影されたこのシーン、当時スクリーンで見た人はどれほど驚いたんだろう…と映画の黄金時代に思いをはせてみてはいかがでしょうか。
 ちなみに内容は題名のとおり、4つの「不寛容」にまつわるお話のオムニバスになっていて、結構面白かったです。

西部劇

駅馬車(1939年)

多分人生で初めて見たモノクロ映画です。

 「西部劇」と聞いて、何を思い浮かべますか?
 息詰まる決闘、手に汗握るガンアクション、燃えるような愛、広大な西部の景色…。
 この映画には、すべてがあります。
 亡くなった祖父の隣で見た少年時代から、幾度となく見返してきた個人的な永遠の名作です。
※ちなみにこの作品は典型的な「白人至上主義」、つまり”インディアン”=悪、白人=善という現代では到底許されない価値観で作られてますのでそこはご留意ください。

荒野の決闘(1946年)

 『十二人の怒れる男』の主演、ヘンリー・フォンダの若き日の代表作です。
 「OK牧場の決闘」(いちおう実際にあった事件です)を描いた西部劇の中でも抜群の知名度を誇る本作。
 あまりにも有名な「いとしのクレメンタイン」のテーマとともに、『駅馬車』とは逆に、決して派手ではありませんが、重厚な男の戦いが描かれる「静」の西部劇の傑作です。
 愚直で不器用、でも人一倍正義感の強いワイアット・アープと、モテるイケメンだけど、破滅的な生活をつづけるならず者(でも大事なところで筋は通す男)、ドク・ホリデイの強烈な対比がとても見事です。

真昼の決闘(1952年)

 「サンダー・ジャンクション」でもそのままカード化されましたね。それだけ重要な作品でもあります。
 結婚して今日で退職する予定の保安官・ウィル。しかし、彼がかつて逮捕した犯罪者、フランク・ミラーが刑期を終え、仲間とともに町に戻ってくるという知らせが届く。到着予定は正午。町の人々に協力を求める彼だったが、皆ミラー一味を恐れて手を貸そうとしない。町から逃げることを勧める友人や新妻の言葉を振り切り、ウィルは悲壮な決意とともに正午を待つ…。
 誰からも応援されるヒーロー、ではなく、誰からも見捨てられ孤独な闘いを強いられる一人の男、を描いたことで西部劇の転換点とも言われる作品。
 そのクライマックス、結末はぜひその目で見届けてください。

おわりに

 長々と語ってしまいましたが、とかく敬遠されがちなモノクロ映画、一人でも一作品でも触れる機会になれば、と筆を執った次第です。今よりずっとたくさんの映画が作られていた時代、その中で競争に勝ち、そして年月の淘汰にも抗って残り続けている作品には一見の価値があると思っています。
 駄文失礼いたしました。

それでは皆さん、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。

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