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「乗りかけた船には 躊躇わず乗ってしまえ」ってことだよ

余裕がない。電車で隣に座ってきた人がこちら側に大幅に詰めて座ってきた時、「最悪だ」と思う。トイレットペーパーを使い切ったまま替えていかない人を、私は所ジョージのようにありがたく思えない。諦観こそが心の安寧なのかと悩む。ハロウィンが終わり、世間はもうすっかりクリスマスモードだ。百均の季節物コーナーからジャック・オー・ランタンが消えて、サンタクロースの帽子と靴下が並んでいる。どこのスーパーにも「クリスマスケーキ予約開始」の文字がある。バイト先の後輩に、「クリスマスも働くんですか!?」と驚かれて虚無。散々苦労して身につけた常識が、ひとを嫌厭する理由になってしまった。ひと回り年上の人に報連相をするよう注意している時、実はこちらの方がしんどい。世間様に「まったくZ世代ってやつは」と言われる度、お願いだから一括りにしないでと叫びたくなる。どうでもいい人から向けられる悪意ほど心にくる。まあ、一旦落ち込んで、「いや絶対さっきの私悪くなかったわ」と考え直して復活。退勤後は大抵、腹が立つこと嫌なことが多くて世の中腐ってるな〜と思いながら駅の階段を下る。この前もそんなふうに下っていたら、右斜め前を歩いているサラリーマンが家族写真を大事に大事に握りしめているのを目撃した。ああ、みんな大事な人、大事なもののために頑張っているんだ。私も大事な私のために課金すべく、働く。就活のために何となく登録したみん就からの通知が溜まっている。私のメールボックスはというと、2件に1件、といった具合でみん就からのお便りだ。【新3年生の皆様へ】という件名のメールが届いた時は、心の底から嫌な気持ちになった(自分のせい)。講義の前の教室で、「就活どうするよ」という会話が少しずつ聞こえ始めて、将来の夢というのが現実味を帯びてきたのだと思い知らされる。民間?公務員?「決めてなーい」意外とそんなもん。とか思っていたら、去年世話になった4年の先輩が内定式を終えたらしいと人づてに聞いて、時の経つ早さに怯える。自分でも嫌になるほど、私は人間くさい。SNSに穏やかな風景や出来事を多く載せている人って、どういう生き方しているんだろう。あ、課題の通知。面倒臭いな。1日が終わるまでは長いのに、1週間が終わるのは早すぎる。私は週に3回、大学に行く。そのうち2日間はパン屋さんで焼きたてパンを買う。もうそれが唯一の楽しみ。この前はなんと、お気に入りのパンを2つも買えた!嬉しくてツイートまでした。ささやかな幸せを摂取し続けて生き延びている感はあるけど、これはこれでいいか。後期が始まってから2キロ増えたことには目を瞑る。朝ランしようね、私。
この前少しフォロワーが増えたのと同時に、マシュマロがちらほら送られてくるようになった。みんな悩んでいる。びっくりするくらい、悩みが多い。真剣に読んでいる。恋愛相談も増えた。私、恋愛経験敗戦記録しかないのに大丈夫かな?と思いつつも、私なりに頑張って答える。「あなたの文章に救われました」とか、「あなたの言葉選びが大好きです」とか、「あなたに出会えてよかった、ご自愛ください」とか。いやいやこちらこそ救われてますよ。ありがとう。私を見つけてくれて、ありがとう。最速で読んでいるけれど、マシュマロbotになるのも違うなあと少しずつ返している。余裕ないけど、そういう余裕のなさは嬉しい。星野源のFamily Songがあまりに良くて、ちょっと泣いた。みんなに教えてもらった歌も聴いている。世の中には良い音楽が沢山あって、私はこの時代に生まれてよかったと思う。高校の時メモに残していた、ツルゲーネフの「乗りかけた船には 躊躇わず乗ってしまえ」という言葉にまたもや背中を押され、馬鹿みたいに緊張しながら採用説明会に参加した。すべてが始まる。

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