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なぜホルモン注射は保険適用外なのか?戸籍変更したら保険適用になるってホント??

ここではFTMの方向けに、保険適用とはそもそもどういうことなのか、について記載していきます。

まず、一番気になるホルモン注射の保険適用については、
・性別が女性の間は保険適用外で自費になり、
・性別が男性に変わると病院によっては保険適用で3割負担になります!

なぜ、性別変更の有無で保険適用が変わってしまうのか、そもそも保険適用ってどうやって決まるのかについて説明していきます。

①そもそも保険適用ってどうやって決まるの?

これについては、僕は普段仕事で医療用医薬品を扱う仕事をしているのでよく知っているのですが、
保険適用か適用外かは、そのお薬の『添付文書』で決まります。

添付文書とは、医薬品や医療機器に添付されている、使用上の注意や用法・用量、服用した際の効能、副作用などを記載した書面のことです。

保険適用か否かは、この添付文書の『効能効果』にその病名が書かれているか。によります!(一部例外あり)

保険診療における医薬品の取扱いについては、厚生労働大臣が承認した効能又は効果、用法及び用量による。
(厚生労働省資料より)

例えば、『フォシーガ』という糖尿病のお薬がありますが、添付文書をみると、
効能効果→2型糖尿病、1型糖尿病
用法用量→5mgを1日1回
となっています。
なので、このお薬を例えば、高血圧の治療薬として使用したり、1日2回に分けて処方したりすると、保険適用外使用となり、患者あるいは病院側が全額負担する形になってしまうのです。

医薬品というのは、添付文書に記載された、効能効果・用法用量に則った使い方をしないと保険が効かない。ということですね!(一部例外あり)

②エナルモンデポー(あるいはテスチノンデポー)の添付文書はどうなってる?

では、男性ホルモン注射のエナルモンデポー(あるいはテスチノンデポー)の添付文書はどうなっているでしょうか?
※ちなみに、たまに誤解されている方がいますが、エナルモンデポーとテスチノンデポーは同じものです。商品名が違うだけで、成分は全く同じものになります。

エナルモンデポー筋注125mg/250mg
【効能効果】
 男子性腺機能不全
 造精機能傷害による男子不妊症
 再生不良性貧血
 骨髄繊維症
 腎性貧血

となっています。
用法用量も病名によってバラバラですね。

添付文書をみてわかるように、効能効果の中に、『性同一性障害』というのは入ってないんですね。なので、承認されていない使い方なので、保険適用外となってしまうのです。

じゃぁ、なんで性同一性障害は入ってないのか。国が悪い!!と言われがちですが、私はそれは少し違うと思います。

医薬品の臨床試験というのは、非常に厳密に行われています。まず動物実験で試して、次に極少人数の人間で試して安全性を確認して、そして最終的に1000人以上など統計的に最低限の患者数を集めて1年〜2年データをとって結果が出てようやく承認申請を出せる。
2万回試してようやく1回成功する。といわれている程です。

効能効果に『性同一性障害(男から女)』を加えるには、FTMを対象に臨床試験を行う必要があります。
単純に考えて、FTMというニッチな集団をそこまで集めるのは難しいと思いますし、かと言って臨床試験もしないまま添付文書の効能効果に追加する事も難しいと思います。

ですが、もちろん例外はあります。
例えば国内では未承認だが海外では認められている場合や、薬理作用から推測してすでに広く使用されている事例を収集することで例外的に認められる場合もあるようなので、そのような例外措置がとられる事に期待するしかなさそうです。。

こういった事情から、性同一性障害へのホルモン注射は保険適用外使用となり、保険が効かないんですね。

なので、昨今、保険適用化された性転換手術も、ホルモン注射をすでに行っていると、『自費診療+保険診療』となり『混合診療』という扱いになり、結局すべて自費になってしまうわけですね。

ホルモン注射未治療で胸オペをする場合には保険適用になるけど、子宮卵巣摘出をする為には、結局、ホルモン注射を打たなければいけないので自費診療になってしまう。という事ですね。。

③性別を変更したらホルモン注射も保険適用になるの?

性別を変更したらホルモン注射が保険適用になる!という事例がチラホラ聞かされますが、これは本当なのでしょうか?

結論からいうと、これについては病院の医師の裁量で保険適用になるか、ならないかは決められています。つまり、保険適用にしてくれる病院と、できない病院がある。と言う事です。

僕は昨年の冬に性別変更をしましたが、現在は保険適用内でホルモン注射を打っています。3割負担で済むので、負担はかなり軽減されました。

どうして保険適用にできる病院とできない病院があるのでしょうか?

それは前半でご紹介した、添付文書の効能効果が関連しています。

エナルモンデポー筋注の効能効果を思い出してみましょう。

エナルモンデポー筋注125mg/250mg
【効能効果】
 男子性腺機能不全
 造精機能傷害による男子不妊症
 再生不良性貧血
 骨髄繊維症
 腎性貧血

と書かれていました。

保険適用でホルモン注射が打てる病院は、
担当医師の判断で、病名を上記のどれかに変更して申告してくれている。ということです。

『性同一性障害』では、保険適用外になってしまうので、病院の先生の判断で『男子性腺機能不全』や『造精機能傷害による男子不妊症』という病名に変えて、保険適用になるようにしてくれている。という事ですね。

※ちなみに、男性更年期障害にもエナルモンデポーが使用されるケースがありますが、これも基本的には保険適用外になり自費になります。東京や北海道など一部の地域では保険適用でされている場合もあるようです。

ですので、なぜ、病院によって保険適用でできる病院とそうでない病院があるのか、というと、
本来の性同一性障害なら保険適用外だけども、医師の判断で別の病名に変えて保険適用になるようにしてくれているから。なんですね。

非常にグレーの中で対応してくれている、ということです。

なので、例えば、『男子性腺機能不全症』と病名を変更する場合には、精神科よりも産婦人科や泌尿器科の方が病名を変更しやすいため、精神科よりも産婦人科や泌尿器科の方が保険適用で対応してくれやすい。という事もあるようです。(もちろん、精神科でも保険適用で対応してくれている病院はあると思いますが)

もし、今、性別変更をしているけど、自費診療でホルモン注射を打たれている方がいれば、近隣の産婦人科や泌尿器科を当たればもしかしたら保険適用で対応してもらえるかもしれないので、一度問い合わせてみてください◎

※ちなみに、ホルモン注射の中でも『ネビド』については、国内未承認のお薬になるので、性別変更をしたとしても自費診療になります。

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