『アウネに関する記事』
アウネに記載されたアト語は、アンゲリア文字を用いながらも、文法、その他規則性が不明な為、今日まで解読は進んでいない。本自体の傷みも激しく、解釈の足掛かりとなる挿絵も所々抜けてしまっている。キトヤーユ教、アトミヨ教の対立原因は、経典が解読不能な事に加えて、個々の口伝や伝承にその解釈を依存している点にある。両教徒に存在している過激派達が信じる口伝並びに伝承の中には真偽不明のものもあり、早急な解読が求められる。
――明始元年八月二十四日 歴史文化部門研究報告書より
ええ、不思議な本でしたよ。研究の一環で見せて貰ったのですが、見た事のない獣が描かれておりましてね。それが二本足で立っているのです。外つ国の学者から話を聞けば、その獣はどうやらアトミヨらしいのです。それはもう驚きましたよ。我々が知る一般的なエムンニス神話には人の姿として記述されているのですから。どうやら経典と人々の間で流れている神話には壁があるようです。いえいえ、違うのですよクワダテ様。それがですね、踊らされているのは我々和国だけではないのです。外つ国の民衆達も恐らく知らないことでしょう。驚くべきはキトヤーユの……
――十賢聖対談録・二 歴史文化部門 瑞垣氏 明始二十年六月二十日
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