法律実務基礎科目(刑事)
第一、設問1
1、問(1)
V方内の一階居間のテーブルにAの指紋が付着していたという事実は、Aが、そのテーブルに触れたという事実の直接証拠となり、同時に、これはAがV方一階居間に入ったことの直接証拠となる。
そして、VがV方の一階居間で、何者かに胸を刺されて死亡したことから、何者かがV方の一階居間に入ったといえる。
このことと、Aの上記指紋により、Aが Vを一階居間に物理的に入った事実が認められるため、Aが殺害した可能性があることが、認められる。
しかし、AはかつてVの従業員であり、Vの死亡前にも、V方を訪れたことがあり、指紋はその際に付いたとも考えられる。
Vが死亡していた居間に入ったことからAがVを殺害したとの推定は弱い。また、A以外にも、V方に殺人のため侵入した者がいることは否定できない。
2、問(2)
証拠⑦は、Aが友人であるCに人を殺害したことを述べたことを内容とするCの供述である。この供述は、Vが殺害された夜になされている。また、この時のAの凶器の破棄場所に関する発言内容と同じ場所に、凶器と思われるナイフが発見されたことが証拠⑨から分かっている。
さらに、かかるナイフに付着した血について、VのものとDNA型が一致したことが証拠⑩から分かっている。
また、このナイフは、その形状からVの死因を形成したものであることが、⑪から分かる。
このことと⑩から、このナイフは、Vの殺害の凶器として用いられたものだといえる。
さらに、殺害した犯人でなければ、V死亡当日の夜に、凶器の破棄場所を知らないのが通常であり、これに関する発言をしたAは、Vをナイフで刺したことが推定される。
さらに、Cの話によると、Aは、一般に自己の本音を任意で言う相手と言える友人に、自ら人を殺したと言っており、実際に凶器が発見されている。(ⅰ)また、Aから Cに対する着信が、V死亡時の夜にあったことが証拠⑧から分かっている(ⅱ)その上、証拠⑪により、かなり深く刺さなければVの傷が無かったことが判明している。これら(ⅰ)から(ⅲ)までのことから、Aには殺意があったといえる。
以上より、Vの殺害について、Aの犯人性が推定される。
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