琅燦と牙門観工匠
Twitterにちょっと呟こうと思ったのですが、簡単にまとめれなかったのでここに吐露します。またまた今更な意見だと思うのですが、新刊の『白銀の墟 玄の月』の琅燦の言動で個人的に結構ひっかかっているというか意外だった点が、牙門観にいた工匠達も討たれたというところ・・・。
主に敦厚の言葉からになりますが、敦厚は琅燦に関してこう述べています。
琅燦殿は何より知識、技術の散逸を忌む。冬官の粛清は否が応でも散逸を招く。だから粛清はさせない、という強い意志がいまも窺えるからな。琅燦殿の思惑に従って冬官は保護されている。
『白銀の墟 玄の月』三巻256項
また、阿選統治下の中で琅燦が実質上司空を掌握していたというのは、黄医の文遠や敦厚からも明らかなよう。
「大司空を退いて太師におなりですが、実質上は冬官を指揮しておられます」
二巻53項 文遠
「琅燦殿は大司空の役割こそは退いておられるが、いまも実質上、司空を掌握しておられる」
三巻255項 敦厚
そんな中、牙門観に冬官府の工匠が少なからずいた。
「あからさまに叛意を示さない限り、身は安全だし、資金と見本となる冬器、指導する冬匠だけは、望めば望んだだけいくらでも下りて来る」
三巻255項 敦厚
「冬官府の工匠なら雇いたい放題さ。こういう職能を持った工匠が欲しいと敦厚に言えば、敦厚が技術指導のためという名目で寄越してくれるからね」
三巻256項 葆葉
琅燦だったら、冬官が抱える工匠だけでなく、そのネットワークも熟知していただろうし、敦厚が望めば望んだだけ司空に関する人材・資材が下りてきたというからには、それを容認していて牙門観にそれなりの工匠がいたという事も知っていたはず。
意図的にそれを容認していたのか、知りながら黙認していたのかは不明。けれど、実質上司空を掌握していたのならば、どちらかといえば敢えてそれを容認していたという方が強い気がする・・・。
そんな中で、もしも敦厚が言う様に琅燦が「知識、技術の散逸を忌む」のであれば、牙門観にいた工匠達をむざむざと州師に掃討されるようなことをするだろうか・・・と。琅燦はかなり自由に阿選の一番近くにいることができた存在でもあったから、阿選が指示している軍の動きも知っていただろうから、事前に工匠だけ撤退させるということもできたはずでは・・・と自分の中では思っており・・・。
文遠や敦厚の琅燦への描写から、琅燦の中で司空の工匠などはまだ比較的興味や重要な対象で保護しているものかと思っていたけれど、結果見殺しなようになっていたので、やはり戴国自体にそこまで関心がなかったのかな・・・と思いました。
なので、多くの人がすでに推測していますが、耶利を寄越した耶利の主公が琅燦ではないというのが、この点からでもありえないと思います。戴国国民の行く末に結局は頓着していなかったんだな・・・と。
ただ、そうすると司空を掌握していた理由が何だったのかと・・・。特殊な冬器や呪術などを自分の管理下において、自由に利用・使用するためだったのか・・・。また冬官は黄朱との繋がりも深そうなので、その意味で把握しておきたかったのか・・・。
やっぱりこの辺を考えると司空も琅燦個人の情があって保護していたい・・・というよりは、”means to an end” で自分の目的の手段でしかなかったのかな・・・と思ってしまう・・・。
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