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箱庭ドールメーカーはなぜ構造的に優れているのか?

ハジメマシテ。しがないゲーマーの者です。
第16回ウディコン優勝作品「箱庭ドールメーカー」について、ゲーム的に優れている点が多いと感じたため言語化と備忘録を兼ねて考察です。
(最後の方でちょっと不満点についても考察があるお)

前提条件として本作の知識が必要だが、
以前の記事でも書いた通り箱庭ドールメーカーはパワプロライクなRPGなことを押さえておけば半分くらいは分かると思われる。
(方向性の定まったキャラクターを育成するという意味ではウマ娘の方が近い)


初めに提示したいのは、本作の育成パートは「プレイヤーが積極的に雑魚戦をしたくなる」という優れたゲーム構造になっているということだ。
これは育成パートがRPGにおけるレベル上げに相当するためだと考えられる。

育成におけるプレイヤーの目的は、基本的には「強いドールを作ること」である。
「強いドール」とはステータスが高い、有利なスキル・アビリティを多く覚えている状態を指し、要するにレベルの高いキャラクターということだ。
レベルを上げるためにはもちろん戦闘が必要。
加えて育成にはターン制限(超過するとペナルティ)があり、無駄なターンを減らしたいと考えるのがプレイヤー心である。
かくしてプレイヤーはサイコロを振るときに雑魚敵とのエンカウントを積極的に期待するようになる。
育成パートにおける雑魚戦とは面倒な懲罰ではなく、報酬を期待してプレイヤーから進んで行う挑戦なのだ。

もちろんこれには「戦闘が楽しい」という前提が必要だが、ここにも一考の余地がある。
戦闘ではHPというリソース管理の要素があり、加えてデッキ構築制・AP制という実質的な行動制限がある。
これにより考えなしに最強技を連打することはできず、それなりの思考・時間・犠牲を必要とすることが多い。なんならしばしば負けることも…
言ってみれば毎回ちょっとした中ボス戦をこなしている気分。
だからこそ戦闘後にすぐにステータスアップという報酬がもらえ、漫然としたレベル上げよりもダレにくいのがGood。
つまるところ本作の戦闘はボスラッシュに寄せた構造なのである、デッキ構築の大御所Slay the Spireと同じやね。

ところでAP制というシステムは戦術性が高く、デッキ構築制との相性も良いので多少考察。
このシステムの優れている(かつ斬新な)ところは、必ずしも毎ターン行動しなくても良いところと、APが溜まったらまとめて行動に移せるところ。
ブレイブリーデフォルトのBPに似ているが、消費APや溜まる速度が各々異なることから一層戦術的な思考が重要になってくる。
加えて敵の次の行動が見えている点も重要で、相手の技に対応する楽しさも生まれる優れたシステムだと思う。


余談だが本作において育成のターン制限を取っ払っうと普通のRPGに近くなる。
ドラクエで町の周りをぐるぐる回ってレベル上げしているのに近い状況だ。
これはこれで性能(レベル)が安定しやすいというメリットはあるが、いかんせんレベル上げの途中でダルさを覚える場合も多い。
有限ターンの中で最高を目指すという緊張感はパワプロ・ウマ娘式システムの良い点の一つだろう。

パワプロ・ウマ娘の話が出たので対比を行ってみる。
雑魚敵とのエンカウントは「練習」に相当し、戦闘における被ダメージのリスクは「ケガ率」と相関していると考察される。
道中の宝箱は「イベント」に相当するだろうか。マスに止まれるかに運が絡むのがちょっと似ている。

一方で明確に異なる部分が存在し、その1つは元ネタにはある定期的な「試練」が存在しないということだ。
(ここでいう「試練」とは試合や目標レースのことであり、パスできなければ育成終了レベルの障害を指す)
これは中ボスラッシュや強敵シンボルがすでに試練の役割を果たしているためにあえて設けなかったと思われる。
(やろうと思えばクリア前にボス戦を挟んだりはできたハズだ)

また報酬が後から提示されるのも異なる点である(しかもどの能力が上がるかはある程度ランダム)。
要するにハッキリとしたリターンが提示されないままリスクに挑む必要があるのだが、意外とこの点は問題にならない。
これは戦闘をした結果レベルアップするというRPG的な都合に納得しやすいのもあるが、報酬が十分なことが保証されていれば前もった提示がなくてもプレイヤーにモチベーションを提供できるということを示唆している。


ここまで育成パートの優れた点を考察してきたが、一方で攻略パートは構造的にやや問題があるように見受けられる。

攻略パートの主な目的は育成したドールでPTを組んで最奥のボスを倒すことだ(稼ぎプレイが目的のときもある)。
既に育成は済んでいるのだから、消耗する雑魚戦はできるだけ避けたいと思う心情が働く。
これを解決するために作者が取った方法が、育成済みドールのステータスを上限としたLv1からの育成し直しである。

そう、もう一度育成し直しなのである。
(なんとか雑魚戦に意義をもたせようと試行錯誤したのが伺えるが…)

ここはややムリヤリ感のある解決方法で、緊張感は維持できる一方で「仕方がなく」雑魚の相手をするという心情が出てきてしまう。
個人的にはダンジョンは戦闘でお金が稼ぎやすいというメリットをもっと前面に出し、任意戦闘の機会を増やすのが良かったかなと思う。
(ボス攻略者はアイテムを取ったら直行してね、稼ぎたい人は稼いでいってね、というスタンス)


最後に

なぜこんな考察をしたかと言うと、最近コマンド式RPGにおいて雑魚戦に意義を感じられなくなってきたという個人的事情があったからです。
そのため雑魚戦がしたくなるゲームの考察をすることで解決方法を模索しました。
優れたゲームには他ジャンルにおいても流用可能な技術・考え方があるのではないかと思います。
まぁ言語化と備忘録が主目的なので、意見の食い違いは適当に流しておいてください。
かしこ。

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