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三年目の燕の七月以降

 六月末に国立駅に来てから、しばらく時間が空いてしまった。安倍元首相は奈良県内にて暗殺され、直後の参院選で自民党は圧勝し、七月下旬となった。七月二十三日の時点で、燕の巣にも、その周囲にも、生物の気配は全く無かった。第二世代の育雛も、この夏は殆ど観察出来ないまま、終わってしまったようであった。



 さすがに不完全燃焼感があったため、三十一日にも、国立駅を訪れた。四度目であった。この日の関東地方は、生命の危機を感じるほどの猛暑だった。巣の周辺を彷徨する、若鳥と思われる燕の姿を、数羽見かけた。スマホで拡大して見ると、体毛、体色が全体的に薄く、瘦身で何だか頼りない感じがする。


 駅近くの蕎麦屋で昼食を済ませて帰ってくると、駅構内の燕の数は更に増えている。その姿を撮影し、記憶に留めた。君達に逢えて良かった。来て良かった。


 八月になってからも、二回この場所に来たが、流石に彼らの姿は全く見なかった。二〇二二年の燕の季節が終わったことを、最終的に確認した。コロナの感染者数はピークを迎えていた。

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青条
詩的散文・物語性の無い散文を創作・公開しています。何か心に残るものがありましたら、サポート頂けると嬉しいです。